第19話
大変遅くなりました…
理由など詳しくは活動報告に上げたいと思います。
ニクスと一緒に様々な屋台を見て回る
結構混み合ってるが、周囲がスペースを作ってくれる為とても歩きやすい。
妙に見られるから珍獣になった気分だが…気にしないでおくべきか?
助かるのは事実だしな…
ただ夜だから、普通のお店が閉まっているのが残念だ。
情報収集の為に本屋とか、あるなら図書館を探してみたかったし
小麦粉や野菜類を買いたかったんだが…
また朝方にでも歩いてみるか。
そんなことを思いながら歩いていたら、道の脇にあった酒場から人が出てきた
フラフラした足取りで明らかな酔っ払いが3人。
酔っ払い達は俺に気付いたようで、顔をガン見したあと全身を舐めるように見てきた
気持ち悪いな…
「へへへ、えらい綺麗なねーちゃんがいるなぁ」
「俺達と楽しいことしようぜー」
「怖くないからさぁ」
…なんだこいつら
俺がそう思うのと、フラニスたちが目の前に来たのは同時だった。
今までずっとあちこち飛び回って遊んでいたのに、いつの間に…
「あぁん?なんだこの光」
「邪魔くせぇな」
「虫かー?」
守ろうとしてくれてる…のか?
肩でニクスもぶぅぶぅ鳴いて威嚇してるし…
でもまぁ…進行方向じゃないから無視でいいよな?
と思って歩きだすと、騒ぎながら前に入ってくる酔っ払い共。
「ツレねーなぁ」
「シカトはやめようぜーねーちゃん」
「傷つくだろぉー?」
相変わらずの舐め回すような視線が鬱陶しい
また前に出ていたフラニスたちを腕の中に回収。
…邪魔されてるし、遠慮しなくていいよな。
苛立ちや不快感をすべて視線に乗せて3人組を見やる、と
揃って恐怖や怯えに顔を歪ませ、腰が抜けたのかそのままへたりこんでいた。
ピロンッ
[スキル《威圧》を取得しました]
スキルか…あとで確認しよう。
3人組は未だに震えたままだが、さすがに酔いは覚めたようで
周りの人からの冷めた視線にもやっと気付いたようだ。
…若干俺にも恐怖が混じった視線が来てる気がしないでもない。
そうして3人組を見ていたら、門番と同じ格好の人たちが来たようだ。
視線を逸らさずにいるせいで足元しか見えないが…衛兵か?
「一体なんの騒ぎで…シェイド?」
ん?
呼ばれた方を見てみると、そこには驚いた顔のエルドが居た。
相変わらず肩に土の精霊が乗ってるが…なんでここに?
あー…そういや隊長とか言ってたか。
「あぁ、エルドか」
「何があったんだ?」
「酔っ払い共が絡んできたから、ちょっと殺気をぶつけただけだ」
それを聞いて3人組を見てから、俺に視線を向けるエルド。
「ちょっとってレベルじゃ無さそうなんだが?」
「耐性が無いんだろう」
しれっと言ってやると、仕方無さそうに溜息を吐かれた。
…まぁ少しやりすぎたとは思ってるが。
そうしてる間にも他の衛兵が周りから情報収集していたようで、エルドに耳打ちで報告している。
それを聞いてる内に呆れた顔になっていくエルドと、よく分かってない衛兵たち。
その顔のまま、俺に視線を向けてきた。
「…女に間違えられて絡まれた事で殺気をぶつけたらこうなった、と」
「…まぁそうなる」
俺とエルドの会話を聞いてた他の衛兵も驚いた顔で見てくる。
「…そんなに女顔か?」
「どちらにも見える顔立ちだが…髪も長いし、余計にじゃないか?」
うーん…伸ばしたの失敗したか?
前に流していた髪を手にとって見てみる。
「切るか…?」
ポツリと呟いたら即座に反応があった
《だめ!》
《だめなの~》
《だめー!》
《だめ…》
「きゅっ」
腕を抜け出して目の前に来て全身で訴えてくるフラニスたちに
肩で抗議の声を上げるニクス。
何故か周囲は悲痛な面持ちをしているし…
「わかったよ、切らないから落ち着け」
と言うと、フラニスたちは満足そうな顔で髪にじゃれ始めた。
ニクスも安心したようで首元に頭を擦りつけてくる
さすがにくすぐったい…
周囲の人々と衛兵たちが微笑ましげに見てる…
とりあえず3人組の処遇を聞いておくか。
「とりあえずその3人はどうするんだ?」
「ふむ…酒は抜けてるみたいだしな…」
エルドと揃って視線を向けると、ビクッとした後に土下座をしてくる3人。
「「「申し訳ございませんでした!」」」
揃っての謝罪に呆気に取られたが…念の為に釘を差しとくか。
「今後は人に迷惑をかけない範囲で飲むこと」
「「「はい!」」」
うん、表情を見た感じ今後は大丈夫だろう。
エルドに頷くと、エルドも頷いた。
「では行くと良い、次はないぞ?」
「「「はい!ありがとうございます!」」」
エルドは3人組が走り去ったのを見てから、周りの衛兵たちに指示を出し始めた。
「本日の業務が終わった者は各自解散、交代要員は持ち場に付いてくれ」
「「「「「はっ!」」」」」
すぐに衛兵の半分がキビキビと門の方へ向かい、残りが軽い足取りで住宅街へ向かった。
エルドはまだここにいるが…
「エルドは行かなくて良いのか?」
「今日の仕事は終わったからな、何か探してるなら教えてやるぞ?」
「それは助かる、こっちに来たばかりで何があるか分からなくてな」
「そういえば異邦人だったな。それなら任せろ!」
そう言うとエルドは人好きのする笑みを浮かべた。
異邦人…確かプレイヤーのことだったか?
道のど真ん中で喋ってるのも邪魔だろうと、そのまま近くの居酒屋の個室を借りた。
エルドはビールとおつまみを数種類、俺はジュースと深めの小皿と水を頼んだ。
ジュースなのは未成年だから、水はニクス用だ。
「それで、何を探してるんだ?」
「そうだな…情報収集と知識が入手出来る場所…だな」
「ふむ…それは魔物の情報か?」
「それもある、後は生産を行う上での情報がないかと思ってな」
というと驚いた顔をされたが…なんだ?
「お前さん立ち姿からして戦えるだろう?」
「まぁそれなりに出来るが…物作りの方に興味あってな」
「そうか…まぁお前さんなら素材を自分で取りに行きそうだしな」
「…否定はしない」
苦笑するとやっぱりなと笑われながら言われる。
その間に注文してた品々が届いた。
熱々の湯気が出てる唐揚げに、フライドポテトなどのおつまみ。
そして冷えたビールに、ランジジュース。色的にオレンジだろうか?
ニクスが膝から降りないので、口元に水を入れた小皿をだすと飲み始めた。
自由に食えと言われたのでポテトを一つ。程よい塩気だ。
「まぁ魔物の情報なら冒険者ギルドの資料室だな」
「資料室なんてあったのか…」
「大半のやつは行かないからな、知られてないんだろう」
うん?何で行かないんだ?
俺が不思議そうな顔してるのに気付いたらしく補足された。
「大体が情報よりも実践を好むからだな」
…血気盛んな奴が多いんだろうか。
「ついでに言うと冒険者ギルドでは訓練場もあってな、様々な武器を体験出来るぞ」
ほう…それは興味あるな。
体術は昔教わったが、武器はないしな…行ってみるべきだろう。
「そして生産は本屋で知識を得るか、直接店のやつに弟子入りするかだが…」
やっぱり本屋はあるんだな…楽しみだ。
それにしても弟子入りか…拘束時間が長そうだが、先人の知恵は本に無いものもある。
問題は異邦人の弟子を取るかどうか…
「弟子入りに抵抗はあるか?」
「特に無いな。専門家に師事する事で普通では得られない物もあるだろうし」
と言うとしきりに頷いていた。
戦闘もそうなんだろうか…今度聞いてみよう。
とりあえず…
「それよりも問題があるんだが…」
「おう?何かあったか?」
「専門家ってことはプライドも高いだろう?」
「まぁ…頑固な人もいるな」
やっぱり居るか…
良くわからないって顔してるし、ちゃんと伝えるか。
「俺は手広くやるつもりだから、師事させてもらえない可能性が高い」
「ふむ…鍛冶だけでなく、細工とかもってことか?」
「あぁ、裁縫や調薬にも手を出すつもりだ」
「確かに手広いな…」
納得してもらえたようだ。
だがエルドが何かを考え始めたようだ、邪魔をしないようにするか…
さっきのスキルでも確認するか。
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《威圧》
対象を威圧し恐れさせる。
格下相手で絶大な効果を発揮する。
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ふむ…格上には効果が薄いんだろうな。
レベルは無さそうだし…まぁ便利そうだ。
まだ考え込んでるようだし、食事を楽しもう。
ジュースを一口飲むと、濃いオレンジの味が口に広がる。うまいな…
唐揚げも味付けは濃い目だがジューシーでうまい。
濃い味付けは酒飲み向けだからだろうか。
ニクスがこちらを見てきたので一つを冷ましてからあげると、嬉しそうに食べ始めた。
だがやっぱり濃かったらしく、すぐに水を飲み始めた。
フルーツがあればよかったんだが…下戸の人用にジュースは用意してあるそうだ。
手持ちのを出していいか聞けば良かったな…
フラニスたちはずっとニクスにくっついて遊んでる。
何故かエルドに引っ付いてた土の精霊も居るが…
楽しそうだからいいか。
エルドは考えがまとまったのか、真剣な顔でこちらを見てきた。
しっかりと目を合わせると
「一人、心当たりがある。ただ認められるかどうかはおまえさん次第だ」
そう告げてきた。
精霊は基本飲み食いはしません。
野良精霊は空気中の魔力を、契約精霊は契約主の魔力で活動します。
ただし食べられない訳じゃないので、そのうち食べさせようかと思ってます。
兎に与えては行けない食べ物も多いので、作中のように与えないようにしてください。
これはあくまでも物語であり、ファンタジーなので。




