仮両親、夫婦?!
「仮親?夫婦?聞いてないんですけど?!」
「夫婦じゃねえし、仮親だし。」
「まあまあ、仮だから。保護者ってことで。」
キリーはまだ半笑いしながら説明を続けてくれた。
「ブラウが今ヴィオの面倒を見ているから、その点教会は認めていてヴィオの養育には適しているだろうと。成人してるし本来であれば保護者になれるんだけど、ヴィオの場合特殊だからより魔法を制御できる保護者も必要だろう。なので、魔法が教えられるユーリスが一緒なら仮親として認めてくれるって話だ。」
「まあ、確かに私ひとりじゃ力不足っていうことはわかるわ。」
教会側の言い分は納得できた。
「でも仮の両親ねぇ・・・。」
「なんだよ、俺じゃ役不足ってか。」
ユーリスは仏頂面のままだ。
「そういう意味じゃなくて、ヴィオが両親ていう言葉にどう反応するかってこと。」
「ああ・・。」
ユーリスも言いたいことが分かったらしい。
「う~ん。俺はあまり心配ないと思うがな。ヴィオに直接聞いてみな。」
キリーがこともなげに言った。
「え~、繊細な話だと思うんだけどな~。」
「この前の話だと、ヴィオの中では両親の死は一応理解してる感じじゃん。お前たちが仮の親として一緒に住むとなっても、それとこれとは別だと理解すると思うよ。お前たちとヴィオの両親とではほど遠そうだからな。」
キリーが笑いながら言う。確かにそうだ。仮の両親ていう肩書だけど、ユーリスと私ではヴィオの両親とはかけ離れているだろう。逆にその方がヴィオにとってもいいのかもしれない。
「わかった、この話はヴィオに直接聞いてみよう。ユーリスは?納得した?」
「ああ、ヴィオの親のかわりにはなれないけど、成人するまで保護者としてヴィオを守るよ。」
「オーケー、話はまとまったな。」
キリーはずっと笑ってる。まとまってないけどね。
「あとは、中央教会で選定の儀だな。」
「まずはそこだな。今のところはあくまでもΩじゃないかってことだし、確定してから次の対策だな。」
ユーリスとキリーが言った。ヴィオがΩだっていうのは、今のところユーリスの主観だからね。私にはまったく感じ取れないし。
「それで、中央教会へはいつ行くの?選定の儀っていつでも受けられるんだっけ?」
「7歳の誕生日を迎えた子ならいつでも受けられるようになってる。首都へは日帰りって訳にはいかないから、ブラウが店を休める日にしないか?そのままファーレン商会へも行きたいし。」
「私も行くの?」
「そりゃそうだ、仮親でしょ?」
ユーリスがからかうように言った。まあ、心配ではあるのでついていきたいと思ってたけど・・・。
「じゃあ、次の土曜から月曜まで3日お休みにして行く?それなら、前もって皆さんに言っておいて薬が必要な人は多めに調剤することもできるかな。」
「そうしよう。俺たちもそれまでに準備しとくし、移動の馬車もいるだろう。俺たちは馬でも大丈夫だが、ブラウたちはそうもいかないし。」
「ありがとう、そっちの手配はまかせるわ。あとは、ヴィオにもゆっくり説明しておかないと。」
「そっちは任せる。俺もいた方がいいか?」
ユーリスが不安そうに言う。
「いえ、大丈夫。一対一でゆっくり話をするわ。」
ユーリスとキリーは静かにうなづいた。
夜の話し合いの翌日、久しぶりにヴィオと2人だけの夕食を済ませ、ゆったりとお茶を飲みながらヴィオに話をした。
「ヴィオ、大事な話があるの。おいで。」
私は膝にヴィオを乗せた。ヴィオはちょっと緊張して私を見る。
「この前、ユーリスから7歳の選定の儀の話聞いたでしょう?ヴィオも7歳だと思うので、そろそろ大きな教会へ行って選定を受けに行こうと思うの。どう?」
「おおきなきょうかいへいくの?」
ヴィオは教会と言う言葉に反応して目をキラキラしていた。
「ヴィオは教会が好きなの?」
「うん、とてもきれいでいいにおいのかぜがふいてくるの。」
「そっか~、そういえばこの町の教会はまだ行ったことなかったね。帰ってきたらご挨拶に行こうね。」
ヴィオは教会へ行くことが楽しみなようだ。
「それでね、もう一つ大事なお話があるの。」
私はまじめな顔をしてヴィオに切り出した。
「今度の土曜日から大きな教会へ行きます。すぐに帰ってこられないので王都でお泊りします。」
真剣なまなざしでこくこくうなづいてる。かわいいので頬が緩みそうになる。真剣に!
「大きな教会で選定してもった後、教会に入ってくださいって話になると思うの。それで、もう一度聞きます。ヴィオはこの前この町でこのまま暮らしたいって言ってたでしょう?それって変わってない?」
「うん、ここでぶらうといたい。」
私は思わずヴィオを抱きしめた。
「ヴィオ、私も一緒に暮らしたいと思ってる。この先いろいろなことがあるかもしれない。それでもヴィオが大人になるまで一緒にいたい。私もそれは変わってないよ。」
ヴィオが私の腕の中からそっと見上げる。紫の瞳がキラキラしている。
「それでね、大きな教会よりうちで暮らすとなると、ユーリスと私がヴィオの保護者として教会に認めてもらわないといけないんだって。」
「ほごしゃ?」
「うん、お父さんお母さんのかわりにヴィオを守って育てる人のことね。」
「ママの代わり?」
「ヴィオのお母さんは1人だけ。私はかわりにはなれないよ。ただね、お母さんと同じくらいヴィオを好きになって大人になるまで楽しく一緒に暮らしたいと思ってる。」
私は一息ついて、ヴィオを見る。
「私とユーリスをヴィオの保護者にしてもらえるかな?」
この説明でヴィオにわかるだろうかと少し心配になりながらヴィオの反応を待つ。ヴィオは賢い子なので、私の意図を汲んでしまい話を合わせてしまうかもしれないと思ったからだ。
「ぶらうがママになるの?」
「ママのかわりになってもいい?ママの分もブラウを愛していくよ。」
「ママブラウ・・・。」
ヴィオが両手で口を押えて赤くなっている。あらあら。
「ユーリスがパパのかわり。パパユーリスかな。」
「ゆーりすはゆーりす。」
ヴィオがちょっと不機嫌に言った。
「あれ?そうなんだ。」
私は可笑しくなってしまった。ヴィオの中で何かがあるのね。
「呼び方は何でもいいよ。これからも何も変わらないからね。」
私はヴィオと額同士をくっつけて言った。ヴィオがはにかんで微笑んだ。かわいいね~。
それから土曜日までの間、私は大忙しだった。常連の皆さんに事情を話して、月曜までの3日間店を休むこと。常備薬の必要な人には少し多めにお渡しすること。いつもより調剤が多いから店の応対と調剤とで1日中バタバタしている。ヴィオは私の周りで一緒になってわたわたしてたので、キリーが裏に連れて行って相手をしてくれた。ユーリスはヴィオのために色々手配してくれてるらしく、王都と町を行ったり来たりしているらしい。
そういえば仮両親の話をしてから会ってない。気まずい雰囲気にならずに済んでよかった~。




