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ベータのくすり屋  作者: 碧海


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多数派ベータの日常

オメガバースの世界観で、大多数のベータは何を思ってどんな生活しているのか。

主人公は外からオメガバースの世界を垣間見ている感じです。

多少のBL要素は入ってきますが、転生もエロもありません。


更新は不定期ですが、予定では火曜、金曜を更新日にしたい。。。あくまでも予定で。

誤字脱字はご容赦。ちょいちょい見直しては修正しています。

 王城を中心に栄えてる城塞都市シェーングレン。

周りを強固な外壁と結界魔法に守られ、広大な敷地に市街地と農地・牧場があり自給自足で市民は平穏な生活を送っている。

 シェーングレンでは風の精霊アイオロスの信仰が中心で、中央教会には翼を持ったアイオロス像を祀り人々は精霊信仰とともに様々な精霊に力を借りている。


 外壁を一歩出ればそこは大小の魔物が生息している平原や森があり、戦闘魔法が使える者たちは魔物を倒して素材を手に入れるために出ていくが、一般人はそんな強力な魔法は使えないので、まずひとりで出ようと思わない。

 昔は魔物暴走(スタンピード)がしょっちゅうあって、そのたびに王立騎士団と傭兵が戦い相当な被害が出たらしい。それでこの大規模な城壁を何年もかけて作りようやく平穏になったって話。


 そんな外壁の中央門の近く、中央街からは馬車でも半日はかかる場所に私の店がある。ここに店を構えて3年、経営はまあ食べていけるくらい。


 平凡多数派ベータの私は、王都中央に店を構える大きな商家の娘として生まれた。商会を営む両親と10歳年上の兄ルードガーに割と(かなり)愛されて育ったと思う。

 父の金茶の髪と、母の青い目を受け継いだ私はブラウと名付けられた。


 うちの家族はみなベータで日常の簡単な魔法が使える程度。

子供は7歳になると必ず教会で第2の性別、アルファ、ベータ、オメガの選定と登録をする。

 ほとんどはベータだけど、アルファとオメガは超希少なので判明すると国が保護するって噂。噂なので本当かどうかはわからない。だって会ったことないんだもの。


 基本アルファは王族・貴族に生まれやすく、オメガに至ってはどういう基準で生まれるのかわからない。

 アルファもオメガも魔力量が多いって話で、さらにお互いのフェロモンがわかるんだって。

 大多数のベータは魔力量もそこそこで特殊能力もないし、精霊様に力を借りているけど見えるほどの力もない。

 ベータもフェロモンがあるらしいけどそもそも感知能力がないので日常生活には差し支えないし、ましてやアルファやオメガとすれ違っても全くわかりません。

 王都の中央教会にはオメガの聖女様がいるって噂だけど、ご近所にはいないね~っていうのは常連さん情報。


 私の店はこじんまりした薬屋だ。庭付きの小さな一軒家を改装している。

 1階の正面にはカウンターがあり、横に待合用のイスとテーブルが置いてある。カウンターの背には調合した薬が並ぶ。


 実家が薬問屋をやっているので、それを手伝っているうちに独立したくなり、家族があれこれ手をまわしてくれて、ここに小さな店を構えることができた。

 実家の薬を仕入れることもあるが、基本は自分で調合・調剤しオリジナルの薬を売っている。

 使えるのが日常魔法程度なので、作れるのは解熱剤や湿布など医者に行かない程度の対処薬。

 近所に医者はいるけれど重傷者は中央の王立病院へ行って魔法治療が必要になる。

 うちも重症の治療薬は扱ってないので、来るお客さんはほぼ元気な人達。

 なので、必ずと言っていいくらい世間話をしつつ自家製のお茶を飲んで帰る。


「ブラウ~湿布薬くれ~」

「あれ、ジョアンさんどうしたの?」

「店の棚を直そうとして手を伸ばしたら腰やっちゃって・・・」


 ご夫婦で食堂&宿屋をやってるジョアンさんが腰をおさえてよろよろと入ってきた。ぎっくり腰かしら?

 とろりとした薄黄緑の湿布薬の瓶を手渡しながら、


「布に塗って、それを痛いところに貼って包帯巻いておさえてね。

強く巻きすぎないで、1日ごとに貼り変えて。できれば力仕事は控えてほしいんだけど、今アンナおばさん1人?」

「いや、今娘婿に来てもらってるよ。冒険者は今暇なんだと」

「それはよかったね。痛み止めも出すから今そこで飲んでいって。」


 私はポットに水と痛み止めの薬草を入れて、魔法で湯を沸かしながら混ぜてカップに注いだ。


「これ飲んで痛みが治まってきたらなるべく歩くようにね。」

「え~、手伝いが来たからずっと寝てようと思ったのに・・・」

「ずっと寝てたらそれこそそのまま寝たきりになるよわよ。」


 ジョアンさんは痛み止めを飲み干して代金を払っておしおと帰っていった。

 すでに夕方、もう来客はないだろうと思い、ドアに鍵をかけ結界魔方陣に魔力を流す。


 ジョアンさんのカップを持って後ろの扉を開け隣の部屋へ。

 そこはキッチンがある広い部屋で、窓は小さめ、壁面は薬草関係の本と薬草や材料を入れた棚が占めている。

 真正面のドアは薬草を育てている裏の庭に出る。中央には大きなテーブルとイスがあり調剤用の器具が置いてある。

 調合もするけどここでご飯も食べるのでいろんなものが同居してる。

 きれい好きで几帳面なほうだと思うけど、誰にも注意されないことをいいことに、調剤関係以外はあまり気にしないで気楽に生活している。


 キッチン横には2階に上がる階段と、その横はバスルームに続く洗面所のドア。

 そして上は広めのひと部屋で私の寝室だ。

 高い位置に明り取りの窓があり、その下にベッドを置いて寝ながら空を眺めるのが最高。

 部屋にはベッド以外にチェストと机と椅子程度。


「年頃の娘が化粧台も姿見もないなんて・・・」

 と母は嘆くが、基本店から出ないから身だしなみはお客様に失礼がない程度で。

 うかうかしてると家族が家具やドレスやら送りつけてきそうなので、狭いからと丁寧にお断りしている。

 特に兄は、隣国に買い付けに行くたびに、アクセサリーやドレス生地をくれようとするんだが、着飾る場所へ行かないので、どうぞどうぞ兄嫁にとお持ち帰りいただいてる。


 兄のように一般人が隣国へ買い付けに行くには、冒険者や傭兵を護衛に雇わないと行かれない。

 魔物もいるし、山や川も越えて野宿しながらの旅なので野営の知識もいる。

 何より送りオオカミになられたら大変なので、護衛は信用ができる人でないとね。

 兄の場合街のギルドに登録されてる保証付きの人に頼んでる。その分報酬は高額。

 いつも頼んでるのが冒険者で傭兵のユーリスだ。


 うちの店は中央門近くにあるので、城壁外へ出入りする冒険者や傭兵たちが軽めのポーションや常備薬を買っていくことがある。兄たちも買い付けに行くときには必ずうちへ寄って買っていく。


「自分の店にもあるでしょう。」って言うと

「売り上げに貢献してるんだよ」だって。


 めったに帰らない妹を心配してくれてるんだと思う。なにしろ馬車でも半日かかるからね。気軽には帰れない。でもどんだけ過保護よ。


 ユーリスは兄と同じくらいの年齢かなと思うけど、一回り背もガタイも大きい。

明るい金髪を後ろで束ねていて透き通る碧目が美しく、黙って立っていたら傭兵とは思えないかも。

うちの常連さんたちもみなファンで、ユーリスが立ち寄ると一気に店の温度が上がる気がする。

あくまでも黙っていたらね。


「ブラウは相変わらず小さいな~。ちゃんと飯食ってるのか?」

 偉そうに上から見下ろしながら絡んでくる。

「ユーリスと比べたらだれでも小さいからね。もう成人してるんだからこれ以上大きくならないよ。」

「成人ね~。初めて会った時から変わんないんじゃないか?」

 ユーリスは笑いながら私を小突いてくる。


「失礼な!初めて会った時は10歳だよ。ちゃんと育ってますよ! そっちこそいつまでもフラフラしてないで、家族を持って落ち着けば?」


「助けてルード、お前の妹は相変わらず俺に当たりがきついよ~」

「君たちは昔から同じような会話してるね」

 兄があきれたように笑う。


「もう、商売の邪魔だから、薬持ってさっさと出発しなさいよ。早くしないと明るいうちに野営地に着かないわよ」

 私も相変わらず売り言葉に買い言葉。でも早く出発してほしいのは本音。

野営地は比較的魔物が出にくい場所なので、できるだけ安全に旅をしてほしい。


「はいはい、仰せの通りに」

 ユーリスが大げさに礼をとっておどけて見せる。


「じゃ、行ってくるよ。戸締りちゃんとするんだよ。」

「もう、ルー兄さんこそ気を付けて。戦闘魔法使えないんだから、いざとなったらユーリス置いて逃げるのよ。」

「ブラウ、ひでえな~。俺はいいのかよ。」

「ユーリスは強いから大丈夫でしょ。さ、行った行った」


 私は二人を追い出しながら、店の前で見送った。

ちゃんと心の中で祈ってるよ。2人とも無事に帰ってきますようにって。

連載始めました。長編にはならない予想・・・・

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