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ギャルズメロディー2期   作者: キスよりルミナス
二章  トーナメント
14/15

14話 願い続けた夢 (鈴音)

14話  願い続けた夢 (鈴音)



 ①  結果発表


 

 人への過度の思いは醜いものであり、あのようにも私を変えてしまった。普段は完璧なお嬢様を演じていたのに、この大会で私は本性を曝け出してしまっていた。

 そのせいで楓からも心配される始末で、今考えると相当恥ずかしいことだ。

 

 私は、ママに振り向いてもらいたかった。言い換えればママからの愛情を欲していた、ということだろう。


 パパによると大会の日にママは日本に帰ってきてくれる、という話だった。もしかしたら、飛行機の中で私のことを観てくれるかもしれない。


 だから、今日がある意味ラストチャンスだったのだ。だから、ライブを終えるまでの私は、今日でママに評価してもらえなければお終いだと思っていた。



 ※  ※  ※ ※ ※ ※



 さっきまで、私達はそれぞれがステージ上で盛り上がっていたが、それを終えると一変。壁越しに聞こえてくるアンコールを聞きながら、2人きりで静かに歩いている。

 妙な気持ちになってしまい、楓を見ることすら緊張してしまうくらいだ。

 「桜咲学園が優勝できたら、みんなのそれぞれの夢が叶うんだね……」

 楓は心の声をそのまま漏らしたかのように、しみじみと呟いた。修学旅行の夜に皆で星を眺める時のような、しんみりとした空気が私達の間に流れる。暗いステージ裏が余計にそうさせているのかもしれない。

 「鈴音はありのままで、気持ちを伝えられたと思う?」

 楓は前を向いたまま私に問う。楓には私の答えが分かっているから、敢えて私の表情から察することもしないのだろう。

 「伝えられたわ。だけど、楓が居なかったら無理だったかもしれないね」

 私がそう告げると、楓は無邪気な笑顔で「それならよかった!」と喜んでくれる。アイドル部に入って、誰よりも楓と関わってきたから、その楓に喜んでもらえるならこちらとしても嬉しい。

 「2人とも、おかえりー」

 「あ、ありがとうございます」

 暗いステージ裏を出ると、そこには松崎先輩と香織、田崎先生が待っていてくれた。松崎先輩と香織はもう制服姿に着替えていた。私もライブ用の衣装から制服に着替えたいけれど、このまま結果発表に出ないといけないため着替えることができない。

 「桜咲のみんなー!」

 元気な声をあげて向こうからとある御一行様が来る。私も視力が特別にいいわけでは無いのでハッキリと見えないが、声に聞き覚えがあるから誰か分かる。

 「里見のアイドル部……」

 あの人達に勝つことができたなら私たちは優勝校になり、私達それぞれの夢も叶ってくれるはず。ただ、ここまで負けてしまったら私達の夢は……。

 と、悩んでいると、楓が私の肩に温かい手をポンとのせた。


 「大丈夫だよ、きっと。私達の思いは負けないから」



  ※  ※  ※ ※ ※ ※



 結果発表を静かに見守る会場中の視線が私達に集まっている。経験したことのない緊張で体が震えてしまいそう。


 「全国中学生スクールアイドル・トーナメント結果発表です!まずは、ペア部門優勝校はー……!」


 アナウンスのおじさんは読み上げて会場を盛り上げるだけだから、呑気なもので羨ましいわ。じゃなくて、香織と松崎先輩に優勝をお願いします!

 第三者の目から見ても、香織達はユアユイの先輩方と互角の勝負だったと言えるであろうから、どちらが勝ってもおかしくない。

 しかし、香織達が優勝で……!私は目を瞑り手を合わせて願う。


 「優勝は里見学園!」


 無慈悲にもそう告げられてしまう。会場も里見サイドも盛り上がるが、私達は沈黙することしかできない。香織が先輩に抱きついて「ごめんなさい……」と、呟いて肩を震わせていた。

 香織はずっと松崎先輩とのライブのことを気にしていたから、尚更かわいそうである。本人は、私ではなく桜田先輩だったならばと、後悔をしているかも知れないが、香織であっても桜田先輩であっても同じ結果だっただろう。


 「続いてソロ部門!……優勝は桜咲学園!」


 おじさんが大した間髪もいれずに告げたので、一瞬どこの学校か分からなかったけれど、桜咲って言ったよね……?

 「鈴音!やったよ!私達、ソロ優勝だよ!優勝!」

 会場がわっと盛り上がるのと同時に、楓から勢いよく抱きつかれた。それにより、ようやく私達が優勝したことを確信できた。

 「楓ちゃん、鈴音ちゃんおめでとう!」

 「かえで、す、ずね……!おめでとう……!」

 沈んでいた松崎先輩や香織もぱっと明るくなって喜んでくれる。が、まだ真の優勝校が言われたわけでは無い。

 私は深呼吸してさっと心を落ち着ける。楓達も喜ぶのをやめて再び元の状態に戻る。

 

 「そして、総合優勝校は……!」


 楓やみんなと練習してきた日々、私のアイドル活動してきた日々。そして、叶えきれなかった長年の夢を追いかけ続けた日々。

 

 きっとそれらは、私達を優勝へ導いてくれるはず。


 今までのことを信じて、私はゆっくりと目を閉じて結果を待った。


 

 ②   願い続けた夢



 結果発表後の取材に多くの時間を取られてしまい、会場を出てきた頃にはおやつの時間になっていた。ライブで体が疲れたというのに、余計に疲れてしまった。

 「優勝できてよかったね!」

 「これでみんなの夢が叶うわね」

 会場の後片付けの様子を横に見ながら楓と並んで話す。楓は私とは違い疲れている様子は全く見せない。むしろ、まだまだ余力が有り余っていそうな程である。

 

 「それにしても、優勝旗ってあんなにかっこよかったんだね。貰うの賞状や盾だけかと思っていたから想定外に驚いたよ」

 「そうね、まさかあんなに貰うとは思ってもなかったわ」

 ソロ部門と総合での優勝により、多くの校名の刻まれた古い優勝旗2つと、輝く金の優勝カップを2つ受け取った。4人でそれぞれを持っていたら、普通の荷物を持つのも一苦労といったところであろう。

 他の学校が団体様で来ているのに対して、うちの学校はなんと部員4人と顧問1人の計5人。他校のようにアイドル部の人数が多ければ良いのだが、桜咲学園は多くの部活や同好会のあるせいで人数が分散されて集まりにくいのだ。

 とまあ、持ち帰るのは無理そうということで、大会の委員会が後日に学校へ送ってくれるらしい。

 「ホテルに帰ったらゆっくりしよーか、テレビでも見ながら」

 楓はそう言うと大きくハァっとため息をついた。疲れた時のため息と言うよりは、達成感に浸ったようなため息だった。

 アイドル部の中では、楓が誰よりも優勝への意志が強かったから、悲願の優勝は嬉しい限りであろう。

 「そうね、ゆっくり休みしょう……」


 楓と目を合わせると、楓の笑顔がいつもより美しく見えて思わず見惚れてしまった。胸が一瞬だけキュンとなった気がして気まずくなった私は急いで前を向く。


 何なの……?今の気持ち……。


 返ってくるわけないが自分自身に問いかける。今までで味わったことない気持ちにフワフワしたような心地になってしまう。


 まさか……、これは……?



 「ねぇ……そこのあなた……!」


 何かを確信し始めた時、突然前から来た女の人に声をかけられた。誰なんだ、こんな時に?と思いつつ、その女の人の顔を見上げる。


 「………えっ?うそ……!」


 私の記憶の中からこの人との記憶が一気に蘇ってくる。私が最後に見た時と何も変わっていない、この女性は紛れもなく……。


 「ママ……⁉︎」


 「鈴音……!あなた、大宮鈴音よね?」


 私のママが目の前にいる。夢ではないのかと自分の頬をつねるが現実らしい。隣にいる楓は「え、あの……」と突然のことに驚いて言葉を出せていなかった。

 後ろから来た先輩、先生、香織も楓と同じように突然のことに楓と同じ様子だと分かる。

 

 「ママ……、私のママ!ママだよね?」

 

 「そうよ、鈴音!あなたの母親よ!」


 そう言うとママは、こちらへとゆっくりと近づいてくる。それを見た田崎先生が、「荷物持ってあげるから、いってらっしゃい。」と私の背中をポンと押してくれた。

 「ありがとうございます。」

 私は荷物を田崎先生に預けて、近づいてくるママに駆け寄った。距離が縮まってママと対面する形になった。


 「ママ……。」


 「ごめんなさい、鈴音。」


 3年が経ち背が追いついた私を優しく抱いてくれる。その温もりが、切なさで私の心をキュンと締め付けてくる。

 

 「ごめんなさい、あなたにもっと構ってあげられなくて。海外に出てからずっと後悔していた……。あなたにも接してあげれていたら良かったのにと……。」

 

 あぁ、ダメよ。私はみんなの前で泣くような性格じゃないのに。私のお嬢様キャラが崩れちゃう……!

 でも、私の瞼の裏が熱くなって涙が込み上げてくる。目を濡らして頬にツーと涙が流れ始める。

 

 「あなたのことはパパからずっと聞いていた。今日だって、あなたのライブを中継で観ていたわ。本当に成長したわね……!」


 感情を抑えようとしても、溢れ出てしまい抑えることができない。大粒の涙が次々に溢れていってしまう。


 「……ママ。私、やっとママに振り向いてもらえるようなお姉ちゃんになれたかな……?立派に、成長することができたかな……?」


 周りの視線なんかどうでもよくなるほど、今はママのことしか考えきれていない。この瞬間を迎えるための、私の努力の日々が頭の中に思い浮かんでくる。

 何度、その努力を諦めてこようとしたか。でも、その度に誰かしらが私のことを支えてくれていた。そのおかげで、私はここまで来ることができたんだ。


 「これからは弟や妹と同じようにあなたにも愛情をたっぷり注ぐわ……。ごめんなさい、今まで……!」


 「ありがとう……。これからも私のことをよろしくね!」


 そうだ、これでよかったんだ。優勝が、いや、多分優勝は無くてもこのような結果になっていたかもしれない。


 けれど、ここまでの道のりにはアイドル部のみんなが居てくれたから以外の理由は無いと思う。


 だから、今も温かく見守ってくれているみんな、保真麗や桜田先輩には、改めて感謝の気持ちを伝えようと思った。


来週で最終話です。本当だったら4月からは新小説書きたかったんですが、書き終わらずに延長となりました。

ギャルズメロディー2期を次回までよろしくお願いします。

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