「ルー」の回想
俺の親父は、俺が11の時にシャトランスの教師になった。
元々地元で教師をしていたが、転勤の為俺たち家族とは離れて暮らす事になった。
「ガストン、体には気をつけて。2人をよろしく頼むよ」
「親父、わかってるよ。心配すんな、親父がいなくてもへっちゃらだって」
そのあとから、中々親父は帰ってくる事が出来ず仕事なのはわかっていたが何だか寂しかった。
友達が父親と一緒に遊んでいるのを見ると親父が恋しくなった。
それで決意したのだ。親父と同じシャトランスに通う事を。
同じように霊感をもっていたし、入学条件は満たしていた。
だが、身内が教師という事もあり親父の授業を受ける事もなかった。
それでもよかった。少しでも親父と過ごせる時間が出来るのなら。
教師の息子として生徒の見本となる事は大切な事だ。
俺は自慢の生徒となるべく大会にも積極的に参加したし、勉学にも勤しんだ。
だが、周りは認めてくれても親父は認めてくれなかった。
それどころか、訓練所で夜遅くまで鍛錬していると途中で止められる事も多々あった。
「ガストン、手足がボロボロじゃないか。そんなにやって体を壊したらどうするんだ」
と珍しく怒りながらもテーピングをしてくれる。
「いいだろ、別に。後は自分でやるからよ、すぐ寮に戻るから心配すんな」
「いや、一緒に戻るよ。こんな所で倒れられても困るからね」
俺の事を気遣ってくれているのかわからないが、俺の邪魔をしないで欲しい。
時間は有限だ。俺は勝ち続けなければいけないんだ。
誰よりも努力しなければいけないのだ。
だが親父の他にも俺を邪魔する奴がいた。
2年生の時だ、訓練所に行くと誰かが泣いている姿が見えた。
「シクシク」泣きながらとシュミレーションルームの端に蹲っている。
「おい、お前何やってんだ?1年か?」
赤い髪と瞳を持つ女子生徒が顔を上げた。
おい、こいつ誰だと思う?
俺の次に守護者になるヴェジェシェニ・ヴァンダだぜ?
「…はい」
「なんでここにいんだよ。2学期に大会に参加すんのか?」
「いえ、最初の試練で一度も武器が使えなくて補習になってしまったんです」
(…は?武器が使えない?おいこいつ大丈夫かよ)
「お前、何でシャトランスに来たんだよ。やめた方がいいぞ。霊感があったって武器が使えなきゃここにいる意味ないだろ。転校しろ」
「いや、それは困ります。何でこんな事に…」
そいつの傍らにはグリフォンがおり守護霊を見れば強力そうだ。
「おい、顕現させてみろ。使える武器かどうか俺が確かめてやる」
「グリフォン、顕現してくれ」
手元にはロケットランチャーが現れる。
ヨロヨロとしながらも何とか持っている。
「軽量させろ、音が怖いなら耳栓でもフードでも被れ。以上だ。俺の邪魔すんなよ」
「…ありがとうございます」
そのあとからヴァンダはフードを被るようになった。
武器もまともに使えるようになり、いいライバルが増えたと喜んでいた。
俺だけが大会に参加しても面白くない。
ヴァンダの奴みたいに武器に恵まれてる奴がいたら積極的に大会に参加するよう声をかけた。キョウもその1人だ。
だが、それを良く思っていない奴がいた俺の親父だ。
優勝しようが無反応で無茶はするなと何度も言ってくる。
誰の為に優勝してると思ってんだよ。
自分の為じゃない。親父の為だ。
そんな事も理解してもらえずパーフェクトを取れば満足してくれるかと思ったらそうでもない。
今更だがやっとわかった。
全部俺の1人よがりで誰の為にもなってなかったって。
もう、何も信じられなかった。
そんな状態で卒業した俺だったが不思議な手紙が俺の元に届いた。
いや、俺だけじゃない。ジュリオも同じ物を受け取っていた。
嫌な予感がし、プロム後も寮に残っていた。
まだ、全校生徒が残ってる生徒会長として最後までその役割を全うしなくちゃならねぇ。
メイやキョウとも合流した後の事だ。
親父が俺たちを匿うと言い出した。
鉱山の方に逃げろと言ってきたのだ。
だが、俺はその指示に従わず前線で戦う事を決めた。
これは俺なりの抵抗だった。俺が一番に戦わないでどうする?
自分だけ逃げて仲間が捕まったら元も子もない。
俺が信じる物は親父じゃない。仲間だけだ。
キョウに援護してもらいながら抵抗を続けていたが相手の武器性能と連携が優秀すぎる。
同じ守護者でも俺たちは単なる寄せ集めに過ぎないという事か。
元々メイとキョウは一悶着あって仲悪いし、ジュリオは普段からいねぇ。絶望的だ。
1人で抵抗しても意味がなく前線は崩壊。
拘束され、戦車の中にいれられた後気絶させられた。
その時誰かの叫び声が聞こえた気がするが気のせいだろうか…
そのあとの事は良く覚えていない。
次の年にはヴァンダが捕らえられた。
ショックを隠せなかった。1人で戦ったヴァンダが捕まった時にはボロボロの状態だった。
初めて会った時と一緒だ。
俺なんかよりずっと努力して守護者になったはずなのに栄光を掴んだそのあとにこれかよ。
これじゃあ、なんの為に守護者になったのか分かりゃしねぇ。
そのあとも最悪だった。理由もなく俺は左腕を奪われた。
足が使えればいい?頭沸いてんのかよアイツ。
日に日に不満を募らせていた。
絶対に許さねぇあの医者も、俺達を捕まえた4人も。
そんな中、新たな守護者の女と戦う事になった。
ヴァンダと同じようにボコボコにしてやろうかと思ったがヤンの奴のせいで1人1人と対戦する羽目になった。
面倒くせぇというか大人数でやった方が特だろ?
ヴァンダとは以前から話をつけていた。
俺たち2人であの女を捕らえる約束だ。
しかし状況が思ったより悪かった。
他の奴らが帰ってくる事はなく、ドンドン消えていった。
こんな事初めてだ。あの女どんな手段をつかった?
全員帰って来られなく成る程の傷をあの剣で負わせる事は不可能だ。調べてみたら仲間がいた。
(あの女、自分の手を使わず仲間に殺させてんのかよ。絶対許さねぇ)
「おい、ヴァンダ行くぞ」
「ガストンさん、落ち着いてくれ。援護はする。だが、彼女は殺しても死人は帰ってこないぞ」
「この世にいたってなんの価値もないだろ。仲間への弔いだ。お前だってわかってんだろ」
「…」
その会話のあと、満月が浮ぶ夜の中を歩いて行った。
「ルー」の回想を読んでいただきありがとうございました。
ガストンというよりヴァンダ成分の方が多かったですね。
ヴァンダって1や5期生とどういう関係にしようかなと考えてはいたんですが今は大人っぽくて落ち着いた子が昔は泣き虫だったらいいなと考えていたので後輩の世話をガストンに任せました。
次はNo32「ありがとう」をお送りします。




