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最後の恋  作者: レオ
4/4

近づく距離

陰口を聞いてしまい、校舎裏で一人座り込み

涙を堪える彩煌。


そこに現れた、一人の少年。獅虎。


獅虎は、自分が曲を作っていることを教えると

彩煌に聴かせた。


彩煌はその歌に涙した。


そして、二人はまた会えることを願った。


彩煌と出会ってから、獅虎は変わった。

外に出る時、フードをするのは変わらないが

あの頃のように、少しだけ人と話せるようになった。


路地裏を歩くことも少なくなった。


そんな彼は、特に用事はないが

彼女の様子を見に行っている。


ここ最近、ずっとそうしているらしい。


不審に思わるのも承知の上で

ただ、彼女がちゃんと笑えているか

見に行っているだけ。


あの時、彼女と話した校舎裏。

フェンスに手をかけながら、教室のほうを見る。

キョロキョロと彼女を探す。


「どこだろう…」


そう思った時、廊下で友達と楽しそうに話す

彼女を見つけた。


「ちゃんと笑えてる。よかった」


そう言って微笑むと、彼女と目が合った。


「ハッ」と驚き、目を逸らし

もう一度彼女を見ると

彼女はニッコリと微笑んだ。

そして、チャイムが鳴り教室へ戻る前に

獅虎に手を振った。


獅虎も、誰にも気づかれないように

微笑みながら手を振り返した。


――また会えた。


そう微笑みながら教室へ戻る。



土曜日――


午前11時25分


「休みか。どっか行こうかな」


抱きしめていたクマのぬいぐるみを置いて

出かける支度をする。


「今日はどこ行こうかなぁ」


行く場所を考えながら着替える。


黒い、長袖で制服のような服装。

これは、彩煌のお気に入りの服。


「よし!」


玄関へ向かう。



その頃、獅虎は人通りが多い場所にいた。


どこからか聴こえてくるメロディ。


獅虎の目線の先に、アコースティックギターを持った

一人の少年がいた。


どうやら路上ライブをしているらしい。


獅虎はそんな少年の歌に、聞き入っている。


少年の歌声は、優しくて、誰が聴いても

心が落ち着くような声だ。


――俺も、こんな風に歌えたら…。


人と会話するのが苦手。

人前に出ることさえも苦手な彼。


そう思った時、ふと彼女を思い出す。

彩煌の笑顔。


――あの子の為に歌いたい。


さっきまで自信がなかったが

彼女を思い出した途端、勇気が出た。


すると、後ろから声をかけられる。


「あの、もしかして」


聞き覚えのある声。

振り向くと、あの子がいた。


「あ、君は…」


「やっぱり!あの人だ!」


嬉しそうに、かわいらしい笑顔で笑う彼女。


獅虎は、鼓動がはやくなってるのを

自分でも感じた。

呼吸も少し荒い。


「あの、大丈夫ですか?」


彼女はそれに気づき、心配そうに声をかける。


獅虎は慌てて応える。


「大丈夫です!!」


「ほんとに?」


上目遣いで、顔を覗き込む。


「ほんとに!大丈夫だから!」


「ならいいんです」


そう言って彼女は微笑む。


「でも、どうして俺だってわかったんですか?」


確かに、獅虎はフードを被っている。

後ろからじゃわからないはず。


「だって、フード被ってるし。

それに、このクマのワッペン。

此間見たから、へへっ」


「あー、そうだったんですね…」


すごい暗記力と思いながら、微笑む。


「ここで何してるんですか?」


「あ、あの人の歌を…聴いてたんです…」


と言って、少年を指差す。


指を差すほうを見て


「きれいな歌声…」


と、彼女も少年の歌声に感心した。

だが、すぐ獅虎を見て


「でも、私あなたの歌のほうが好き!」


またかわいらしい笑顔を見せる。


「俺の歌は…あの人よりは…」


ぼそぼそと話す。


「私はいいと思いますよ?」


――俺の歌を聴いて泣いていた…。やっぱりこの子は…。


「ありがとう」


と、微笑みながらお礼を言う。


――その目に嘘は見えない。


「あの、この後予定ありますか?

よければ話したいなって…」


少し照れながら問いかける彼女。

その顔に見惚れながら、応える。


「あ、ないです。

実は俺も、話したいって思ってました」


「ほんとに!?」


嬉しそうに目を輝かせる。


――同じ気持ち。


と、微笑む。


「オススメの喫茶店があるんです。

どうですか?」


「行きます!」


人が多い通り。

獅虎は、はぐれないように彼女の手を掴む。


――ちょっと待って…!これはずるい!


彩煌は、恥ずかしがりながら彼について行く。


自分の鼓動が、彼に聞こえていないか心配しながらも

そっと手を握り返す。


この時、獅虎もドキドキしていた。



喫茶店につくと、コーヒーのいい香りがする。

獅虎は鼻で息を吸って、香りを嗅いだ。


「いらっしゃいませ。お客様は二名様でよろしいですか?」


店員さんが、微笑みながら確認をする。


「はい」


と、獅虎が返事をする。


「かしこまりました。こちらへどうぞ」


すると、獅虎は彩煌の手を引いて

案内された席へ向かう。


二人は、向かい合わせに座る。


「メニューはこちらになります」


メニューを渡し、一礼すると

店員は自分の職務へ戻る。


店の中は、家族連れや、恋人同士

また、友達同士で来ているお客さんが多い。


色んな話が聞こえてくる。


二人は緊張しながらも、メニューを見る。


「君って、どんなの好きなの?」


少し、緊張で震えた声になる。


「私、コーヒー苦手なんです…」


苦笑いのように彩煌は応える。


「え!?そうなの!?」


――マジか…。俺はなんてことを…。


何も知らずに連れて来てしまったことに後悔したのか

顔が曇る。


「あ!でも。

ココアなら飲めます!」


フォローするように、応える。


「あ、そうなんだ…。

よかった…」


微笑むけど、まだ少し顔が曇っている。


店員さんを呼び、二人はそれぞれの注文をした。


「ホットココアで」


「あ、俺はホットカフェラテで」


「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ」


店員が去った後、しばらく無言の間が続く。


――何か話さなきゃ…。

――何か話さないと…。


二人は同時に口を開く。


「あの!」


「あ、先にどうぞ」


「あ、いや…。

君からでいいよ…」


「あ、じゃあ…。

その、私たちまだお互いの名前聞いてなかったですよね…?」


おどおどと喋る。


「実は、俺もそれを聞こうと思って…」


――また同じこと…!


彩煌は、同じことを考えたりしてることが

すごく嬉しかった。


「私、一ノ瀬 彩煌です!」


「えっと…黒鉄 獅虎です…」


「かっこいい名前!」


感心した表情で褒める。


「君も、かわいい名前だね…」


緊張しながら微笑む。


「かわいいだなんて、そんな」


照れていることを隠すように笑う。


「お待たせしました。ホットココアとホットカフェラテです」


「ありがとうございます!」


再び店員が去った後、彩煌はホットココアを一口飲む。

だが、一口も飲まない獅虎に対して問いかけた。


「なんで飲まないんですか?」


「猫舌…なので…」


おどおどと喋る。


「かわいい…」


思わず気持ちが口に出てしまった。


「え…?」


すると、彩煌は疑問に思ったことを問いかける。


「あの、獅虎さんはどうしていつも

フードを被って、目を隠してるんですか?

切らないの?」


「それは…」


そう言って、黙り込む。


「あ、なんかまずいこと聞いちゃいました…?」


「いえ、大丈夫です…」


声のトーンが落ちる。


「でも、どんな理由でも

私は獅虎さんのことすごく好きですよ!」


優しい声で、そう言いながら微笑んだ。


「好き…?」


その言葉にドキッとし、赤面になる。

鼓動がまたはやくなるのを感じた。


「私、獅虎さんの作る歌も、声も

さっきからフードを触る仕草も。

全部大好きです!へへっ」


「あ、あの…その大…すす…好きって…どういう…?」


余計に緊張して、声が震える。


「それは…」


自分の言った言葉が恥ずかしくなってきて

彩煌も赤面になる。


「お、俺も…最近君のことが…頭から離れなくて…。

フェンス越しから君を探して、見つけた時

君が笑ってるのを見て、ホッとしたり…。

この前も、君と目が合って

そしたら君が笑うから…ドキドキしたり…」


「獅虎さん…」


――この人も、私と同じ気持ちだったんだ。


また同じ気持ちを見つけて、嬉しくなった。


「不審に思われるってわかってるけど…。

君の笑顔を見てないと、心配で…」


「どうしてそこまで、私を思ってくれるんですか?」


「きっと、君も同じなんじゃないかって…」


「同じ?」


「寂しいんじゃないかって…」


「…っ」


「今まで、他人なんてどうでもよかった。

だけど、君と出会って、もう一度誰かの力になりたいって

思ったんだ」


「そうなんですね…」


「俺は、君の笑顔を守りたい。

君を守りたい」


獅虎は真剣な表情で言う。


「すごく嬉しいです。

でも…信じていいのか…もうわかんないんです…。

裏切られるのが怖くて…」


「裏切られるなら、初めから繋がらなければいい」


「……」


獅虎を見る。


「だけど、それでも誰かに気づいてほしくて…。

独りになりたくなくて…」


「すごくわかります…。

自分の気持ちさえ、わからない…。

だけど、獅虎さんに出会って

思いました」


「え…?」


「私…あなたとなら…平気かもって。

あなたなら、きっと私を裏切らないって」


「彩煌さん…」


「これからも、もっとあなたと話したいです!

一緒にどこかにでかけたり、遊んだり」


微笑みながらそう言うと、獅虎が手を掴む。


「獅虎さん?」


「俺も!もっと話したい!

もっと会いたい!

君の笑顔、もっと見たい」


「…っ。

あなたの歌、もっと聴きたい」


「これから、君のことは俺が守るから」


「…はい。

よろしくお願いします!」


かわいらしい笑顔を見せる。

その笑顔を見て、獅虎も微笑む。


「あ、そうだ!

タメで話しませんか?」


「うん。じゃあ彩煌さんもタメでいいよ」


「うん!

あ、さんはいらない」


「彩煌、俺も獅虎でいいよ」


「んー、じゃあレオって呼ぶね!」


「初めて呼ばれた、そんな風に…」


「そうなの?

なんか嬉しい!

私だけが呼ぶあだ名!へへっ」


「ふふっ。

彩煌のその笑う顔、めっちゃ好き」


と言いながら微笑んだ。


「レオのその微笑む顔も、好きだよ?」


二人はもう、周りから見たら

カップルと言っていいほど

ラブラブで、楽しそうだった。


この後、LINEを交換し

夜は通話するようになった。


昼間も、LINEを送ったりしていた。



2月28日


獅虎はお気に入りの丘で、彩煌に告白した。

もちろん、返事はOKだった。



幸せを夢見ていた。


きっとこの人ならと。



二人の歯車は動き出したが

少しづつ、壊れ始めていく。

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