もう一度誰かを…
いつもの日常を過ごしていた。
あの時、あの子と出会って
何かが動き出した。
月曜日――
「おはよう」
「おはよ、あき」
「なにしてるの?」
午前8時15分
暖房の効いた教室。
生温い空気。
「これ超かわいくない?」
友達は、クマのストラップを見せた。
すると彩煌は、目を輝かせながら
近づく。
「かわいい!」
「みんなでおそろする?」
「え、したい!」
「それいいね!しよしよ!」
こうして、平凡な日常が始まる。
だが、その昼休み。
階段で彩煌の友達が、何やらひそひそ話していた。
声をかけようとしたが、嫌な言葉が耳に入る。
「おそろさ、うちらでしない?」
「そうしよ?あき抜きね」
「あいつ、ちょっとかわいいからって
調子乗りすぎ」
彩煌の目から、一粒の涙が流れ落ちた。
その場を去り、校舎裏へと向かった。
彼女はよく、強がる癖がある。
校舎裏へ着くと、その場に座り込み
膝を抱え、グッと涙を堪える。
「結局、裏切られるんだ…」
昼休みの間、彼女はしばらくその場にいた。
すると、フェンスの向こうに
黒い影が横切った。
彼女は何かと驚いて、その方を見た。
そこにいたのは、あの時の少年だった。
「あの時の…」
そっと呟く。
少年は首を傾げ、彼女の目の腫れに気づき
心配そうにこちらを見つめる。
「だい…じょうぶ…?」
声をかける。
彼女は作り笑いで
「大丈夫です!」
と応えた。
すると少年は、本当かどうか確かめるように近づき
フェンスに手をかける。
「な、なんですか…?」
動揺しながら問いかける。
しかし、少年は黙ったまま。
「あ、あの。どうしてここに?」
彼女は、彼が何故ここに居るのか
疑問に思った。
「そこのすぐ近くのCDショップに、用があって…。
それでここを通りかかったら、君がいて…。
悲しそうな顔をしていたから…」
「そ、そうなんですね…。
音楽好きなんですか?」
まるで、自分の気持ちを隠すように
話を逸らす。
「まぁ…。
一応、自分で曲作ったりする時もあります…」
「すごい!
自分で作れるなんて!」
「よかったら、聴きますか?」
「いいんですか!?
やった!」
彼は、フェンス超しにイヤホンを渡し
自分の作った曲を聴かせた。
彼女は、彼の作った曲に聞き入って
目に涙を浮かべる。
どこか、シンパシーを感じた。
――俺の作った曲が、誰かの胸に響いた?
彼は静かに、彼女の涙を拭いた。
「この曲…好きです…。
すごいですね…こんな素敵な曲が作れるなんて…」
彼女は泣きながら笑った。
この時彼は、”この笑顔を守りたい”と思った。
そう思いながら彼女を見つめた。
すると、チャイムが鳴る。
「あ!もう行かなくちゃ!」
そう言って涙を拭き、イヤホンを返す。
「あの、またどこかで会えますか?」
「きっと、会えます」
彼は微笑みながら応えた。
「じゃあ、その時また
あなたの曲聴かせてください!
楽しみにしてます!」
「是非」
微笑みながら、彼女は教室へ戻っていった。
その時彼は、すごく楽しそうだった。
――もう一度、誰かの力になりたい。彼女を守りたい。
久しぶりのこの気持ち、久しぶりの笑顔。
彼女は彼の心を動かした。
そして、彼もまた彼女の心を動かしたのだった。
「私の涙を拭ってくれた。
初めて…。拭ってくれた人…。
きっと彼なら…」
彼といた場所を見つめ、微笑む。
――きっとまた、会えるよね。
そう信じ、陰口などは気にせず
彼女は一日を終えた。
「ちゃんと、笑えてるかな。あの子」
布団に入り、彼女を思いながら
獅虎は眠りについた。




