運命の出会い
聖霊とは人間と神の関係を示す言葉である。 それは天の使徒、即ち”天使”と呼ばれる場合もあるがその呼び方は様々だ
天使は普通、人の前に姿を現す事は無かったが 新世紀になってからは頻繁に人間と交流するようになった。
天空には人間を守護し監視する為の天使が、地上の王都には人間を統括する為の天使がいる
人間は新世紀になってからと言うもの、聖霊によって管理される様になったのである
この人間と神の関係は絶対であるとする条約を”慈愛の聖約” 聖霊によって行われる政治を”絶対聖政”と言う
新暦1707年、4月16日。
聖ヨハネ学院の生徒であるマリアは突如として天井から降ってきた謎の生命体を保健室に連れていきベットに寝かせていた。
「取り敢えずはこれで大丈夫と思うけど...」
マリアが不安げに眺めていると保健室の扉が開き、この学校の教師が入って来た
「シスター・エリー!」
教師は顔を歪める
「マリア、何があったのです? 聖堂から凄まじい音が聞こえましたが、」
「天井が、崩れ落ちたんです。 それと人も」
教師は顔色を変えた
「まあ、大変!けが人は?」
と言いながらそれが寝ている奥のベットへ近づいた。
「大丈夫だと思います、私が先程 治癒聖術を施しました。」
教師は安堵の表情を浮かべる
「そうでしたか、それならば安心です。 私は理事長の所に行ってきますので」
それだけ言うと教師は大急ぎで走り去っていった。
それと立ち替わる様にベットに寝ていた人がゆっくりと目を開ける。
「..! 気が付きましたか?」
それは優しい表情で見つめ
「....誰?」
「ま、マリアです、マリア=ヨハネス」
「マリア...ヨハネス...。」
すると、ハッとしたように
「ヨハネス様...」
「え?」
まるで、以前から知っていたかの様な反応にマリアは首を傾げた
「いや、つい昔の事を」
「あの... 貴方は..」
「私はガブリエル、訳あって天界から逃げてきたの」
天界、と言う言葉を聞きマリアはこの者が何者かを瞬時に理解した。
「と言うことはやっぱり...」
「ええ、天使よ、私は”主天使 聖ガブリエル”」
この世界において天使の存在はそう珍しいものでも無かったが、一個人の前に現れるのは極めて珍しかった。
だがマリアはそんな事よりも主天使ともあろう者がなぜ、地上に降りて来たのか。と言う事の方が気になっていた
そして、耳元で
「詳しくは話せないけど... 私、天界を追われているのよ」
と、囁く様に言った
マリアは耳を疑う
四大天使であるガブリエルが天界を追われるわけがないからだ。
「で、貴方何とも無かったの?」
「いや、別に。 あ、天井の事なら大丈夫ですよ」
聖堂の天井を壊すなんてこと自己破綻するほどの弁償モノだが、実はマリアの父が聖ヨハネ学院の理事長なので父に頼み込めば何とかなるとマリアは思っていた。
だが天使は首を横に振る
「そうじゃなくて、此処に来るとき 天使軍に追われていたから、そろそろ来るんじゃないかって思っ...」
そう言いかけた時だった。
突然、窓ガラスが砕け散り 轟音が鳴り響いた。
そんな突然の出来事に物ともせず、天使は冷静に空を見上げ
「来た...」
そして割れた窓ガラス枠を軽々と乗り越え外に出ると後ろを振り返る
「ありがとね、色々。マリア..だっけ、 私はそろそろ行かないといけないから.. じゃ!」
と、簡単に別れを告げ 再び純白の翼を広げて飛び立った。
マリアはただ立ち尽くすしかなかった。




