ペシェードへ
ペシェードの街に向かう三人は道中にある事について話していた。
この世界ヴァルハラに転生した時に発現した異能と言う要素についてである。
転生してからようやく落ち着いて状況を整理出来る様になったので、忘れていた要素を思い出したと言う方が早いのだが。
「そう言えば、かなりうっかりしていましたがスバルの異能は昨晩に判明して計画の一部になりましたが…僕らも確認しあった方が良かったのでは?」
「………あ。た、確かに」
「あら?まあ、確かに…色々とあったから抜けてましたわね」
三人は苦笑いしながらお互いに視線を送る、スバル達が居ても苦笑いしていたかも知れない。
先ずは自分からと手を挙げたシエンが口を開く。
「僕の異能の魔眼は人の強さをオーラの大きさで表してくれるみたいなんですが…その人のコンディションも関係してくるみたいですね。」
「…良いよね、シエンにぴったり。…指揮してる人を見抜いて遠距離から攻撃出来るし」
「本当ですわね!…私の異能は「清浄」と言うあらゆる状態異常を治せる異能みたいですわ。…正直、パーティ的な要素で言えば外れとしか言えないかと…はぁ」
リイサが言うパーティとして考えた場合、スバル達は状態異常耐性が一〇〇%なのだから、もっと別の異能が欲しかったと暗に吐露しても仕方無い事である。
しかし、パーティでは無い場合に活躍の場面があると予想しての発言でもあるのだ。
この世界ヴァルハラで治せない病や傷もリイサの異能で治せるならば…言わずともその意味は大きいのだから。
「まあ、運ゲー要素に近い…気を落とさないで」
「そうですよ、あくまで異能はオマケくらいに思っておいた方が良いですから」
「まあ、そうですわね………はぁ」
半分納得はしたもののやはり腑に落ちないと言った表情でため息を吐くリイサであった。
「…私の異能は「覇撃」って言う。一日に三回まで放てる遠距離攻撃みたい…近接特化だから嬉しい」
アカリは自身の弱点を補いつつ攻撃の幅が広がる異能を獲得していたのだ。
はっきり言って当たりである、アカリは近接特化型のスキルを身につけてはいるが、遠距離攻撃の手段が無かったのだ…しかし、今では異能でその部分を補う事が出来る。
リイサには悪いがと言う表情を見せつつも顔には笑顔が浮かんでいる。
「あ、そう言えば…これ、ザイカさんに渡すのを忘れていました」
そう言いながら金色に輝く短剣を取り出すシエン。
ルウ達を助けた時に、黄金騎士団の団員と言っていた男が所持していたものだ。
シエンは色々とザイカに聞いておきたかったのだ、何故なら黄金騎士団と荒くれ者、刺客が繋がっているのでは無いかと言う自らの推察があったからだ。
「それは…何か関係あるの?ザイカさんに」
「あらあらまあまあ、恐らく…黄金騎士団と関係がありそうな装飾ですわね?」
「はい、恐らく…としか言えませんが、ルウ達を助けた時に黄金騎士団の団員と言っていた男が所持していたのですが、一緒に行動していた方々が野盗に近い荒くれ者だったので何か情報が得られないかと思って」
シエンの言う情報とは、この世界ヴァルハラの情勢やトレニア王国の情勢に繋がる情報を差している。
帝国に関しての情報を集める為に現在三人はペシェードへ向かい、ペシェードを経由してその先にある国境都市リザで現状を確認したかった。
しかし、情報集めは主では無い…本当の狙いは別にあるのだ。
適任としていたヴェルゴを向かわせなかった理由もそこにある。
「にしても…国境都市リザに着いたら演技をよろしくどうぞ…真精霊王殿、ふふふ」
「あらあらまあまあ、そうでしたわね。私達二人は真精霊王殿のお付きの者でございます故…演技をお願い致しますわ!ふふっ」
「…はぁ。二人共そのからかってる顔ばればれですよ?」
真精霊王と言う名を出しながら会話する三人だが、これも王国の膿を洗い出すために必要な計画の一部である。
そう、これが主の目的になる計画である。
もちろんスバル達も共有している計画であった。
シエンがそう言いながらも、アカリとリイサはクスッと笑っている。
「…僕で良かったんですかね?スバル…はぁ」
言いながら景色を見ていたシエンは眉を顰めながら溜め息を吐いた。
そんな道中にもブルホーンと呼ばれる自身の角を武器として攻撃してくる、正に暴れ牛見たいなモンスターが出現するのだが…三人に勝てるわけも無く素手で吹き飛ばされていくのであった。
-国境都市リザ・最前線-王国視点
「魔族に心を売ったか!?帝国の犬共めっ!!」
「ふんっ!これは戦争だぞ!?口で戦いたいなら死ね!」
キィイイイン!!ザシュ!
あちこちから武器がぶつかり合い金属音と共に鉄の匂いが充満している国境都市リザの最前線である鉄橋。
王国と帝国の兵士や騎士達の争いは激化する一方で、終わりも近づいてきていた。
前線に指示を出していた王国の将軍であるドラン・ザックスに急報が来たのだ。
天幕には現在ドランのみになっている、護衛を前線に回さなければならない程に切迫しているのだ。
「はぁ!はぁ!はぁ!!ド、ドランさまっ!急報をお持ちしましたっ!」
ドランは伝達者の顔から、良い知らせでは無いと判断するも問い掛ける。
「うむ、内容とは如何に?」
「はぁ、はぁ、はっ!…此方に!」
伝達者が出した手紙を受け取り内容を見ていくドラン。
「…ふむ、ふぅ!…全く難儀じゃの、外に目をやらねばならぬと言う時に…内事とは。儂が仕えてきた王国はどうしてこんな腑抜けになってしまったんじゃ」
「ド、ドラン様!?反逆罪を疑われますぞっ!?」
そう伝達者に言われたドランは眼を鋭くして言い放つ。
「どうせ誰も聞いとらんわっ!!聞いとるのはお前さんだけじゃ…国王に言っても構わん。好きにすれば良い、食料の輸送があと二日しかない。いや、内事が原因で王妃が邪魔したらしいんじゃが…どっちもどっちじゃ馬鹿たれ共がぁぁぁぁあ!」
伝達者はドランの叫びに腰が抜けてしまうのであった。
「ふぅ、すまんな。お前さんは関係ないしの?…ペシェードで至急追加の志願兵を募ってくれるか?最早、食料に先を見れぬなら人員を増やしての力押ししかあるまいて」
伝達者はハッとしながらも、ドランの言葉に頷きお辞儀をして天幕を立ち去って行く。
「ふぅ…儂も落ちたものじゃ、志願兵など万人いても使いものにはならん…一人…たった一人でもいいんじゃ!戦局を打開出来る、才ある者がペシェードにいる事を願うしかないとはのう…」
言いながら天幕から出たドランは鉄橋での戦いを見つめながら呟く。
「ルクス王子よ………すまんのう。手を貸してやれんかも知れんのう儂は。帝国に化け物みたいな強さを持つ者達が加勢しておる…」
御歳六二歳になる将軍は孫に話すように呟くのであった。
-国境都市リザ・最前線-帝国視点
「ほいっ!ほいっ!あーらっよ…っと!」
スパッ!ザシュ!…グシャ!!
二刀の短剣を手にした一人の男性が、瞬く間に王国の兵士を倒していく。
「ふぅ、呆気ないっすねー?まあ、今のおいら達には…スバル達でも勝てないっすから、仕方ないか」
そう言いながら、二刀の短剣の血を地面に吐き下ろすリゼル。
以前に見えた陽気な明るさはリゼルには無く、そこにいるリゼルは最早別人だった。
人は変わる、変われるのである。
「…くっ、くくっ!何せおいら達はパーティ全員がセブンシリーズまで習得したっすからね?スバルと戦いたいっすねー、女王の前で良い所見せたいっすねー!…ははっ、くはははははっ!!」
そう…良くも、悪くも人は変わる生き者である。
少しずつ復活していきます。
体調が申し訳ない限りです。




