第二話 新しい家族
明るく彼女達を紹介する父の目に、本当の私の姿は写っているのだろうか。
私が今、どんな顔をしているのか、判っているのだろうか。
聞き間違いかと思った。これは、何かの間違いなんだと。否定せずにはいられなかった。
だって、それはつまり
「再婚……するってこと?お父さん」
私に、何の相談もなしで?
しかし、次に父が放った言葉で、頭が真っ白になった。
「再婚するっていうか、もうしてる、の方が正しいかな」
『もうしてる』?
私には何も言わず、私が知らない女の人と話してて、私が知らない女の子に、娘として接してたってこと?
私だけが、何も知らなかった?
「っ……!」
現実をひとつひとつ直視していくうちに、涙が溢れた。視界が滲み、冷たいものが頬伝った。
耐えられなくなり、私は部屋に駆け込んだ。内鍵を閉めて、誰も入ってこられないようにして、閉じ籠った。
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夜が明け、時刻は朝5時。
私は部屋から出て、シャワーを浴び、髪を乾かした。そして、リュックに何冊か本を入れ、財布と携帯を持って家を出る。
あの家にいたくない。それが本音だった。
適当な近隣をふらふらと歩く。そして、一つの看板に目が止まった。パン屋だった。
そういえば、昨日から何も食べていない。そう自覚すると、余計お腹が空いた。
大好きなメロンパンを買い、辺りを見回す。すると近くに公園があるのが見えた。
「……あそこで食べるか」
公園に入り、ベンチに座る。パンの包装を破き、黙々と食べる。まだ、心の整理はついていない。大好きなメロンパンも、味を感じなかった。
動揺の収まらない心を掻き消すように、スマホの電源を切る。リュックから本を取り出し、おもむろに開いた。
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本を何冊か読み終わったころ。何故か、視線を感じ、思わず顔を上げた。
そこには、見知らぬ男の子が立っていた。少し背が低いし、同年代か年下だろうか。
「___お前、美音把だな。雛村美音把」
知らない人間に声をかけられただけならいざ知らず、まさか名前を呼ばれるとは。
怪訝に思いながらも、「そうですけど」と返す。
だが、返事をしてから気付く。これはもしかして、昨日の女性の知り合いなのでは?それともただの不審者?
_______どちらにせよ、逃げなければ。
思い立ってからの行動は、早かった。ベンチから慌てて立ち上がり、リュックに本を詰め込み、それを背負う。……ここまでは良かった。




