「そして雷は昇る」後編
ジャンクスター災害の跡地。ソニクランという国も、いよいよ小さくではあるが国として動けるようにはなってきた。街が自立して稼働し、ライザーのサポートによって更に復興が進んでいく。テリッテ、マスカット、ヒーター、クロム、ロックエルは満足げだった。100パーセント元通りにはならないが、こんなにも沢山の人達の助けになることが出来た。そろそろ別の国の再生に移っても良さそうだと。そんな時だった、そこにイシュレがやってきたのは。
「大変、エッグモンスターが10体出た」
「・・・・・はあ?」
きょとんとするみんな。アーサーでさえフリーズした。
「でも、弱点が分かったの」
「おおまじか。どんなだよ」
「お酒。頭にかけたらエッグモンスターはフラフラして動けなくなる」
「そんなわけ・・・ま、まじか?」
「でも、エッグモンスター、進化したの。1体だけ。もっと強くてお酒も効かない」
「おおまじかよ、分かった。ここはオレらで行くから、マスカット達は新しい国の再生やっといてくれ」
「え、いいのかな?大変じゃない?」
「エッグモンスター、街に散らばって、街の人達大変で、でもみんなで何とか戦ってる」
「アーサー、みんなで行こう」
「あーそうだな。分かった」
テンベカにて。エッグモンスターをぶつけられた進化エッグモンスターは、墜落することもなく空中で頭と脚を出し、そして口から砲身を覗かせた。
「(来るよ)」
「あんなもん、どうってこと・・・」
吐き出されたのは、レーザービームだった。ビルから地面、そして2人へとレーザービームが押し寄せてくる。トルムはとっさに後ろにジャンプして、ヘルはクウカクでガードした。
「(こんなこと出来るのか)」
ビルと地面。まるで街に一直線の白いペンキでも塗ったかのよう。それからまた頭と脚をしまい込んで、胴体だけになって隕石みたいに突撃してきた。受け止めるトルム。
「おらあっ」
思い切り投げ飛ばされても、進化エッグモンスターはへっちゃらで頭と脚を出して、連続的に真っ白い光球を吐き出してくる。ヘルはまたガードに徹する中、トルムは手にスカーレットを溜めた。
「風砲十層!」
風を起こして空中に打ち上げてから、スカーレットの一直線を撃ち放った。どんなものでも貫きそうな、眩いスカーレット。進化エッグモンスターに真っ直ぐ突き刺さったものの、結局頭が千切れて飛んでいっただけ。ヘルは必死に考える。
「(そうだ・・・今回は、明確に邪魔なんだ)」
「え?」
「(前だったら、エッグモンスターはピンチになると逃げてた。でも今回は明らかに敵意がある。だったら魔法で捕まえて動けなくしておくしかない)」
「出来るのか?」
「(分かんない。でも作ってみる。時間稼いでもらっていい?)」
一方、グラバードの下にイシュレは戻ってきた。援軍を頼んだのはグラバードだったから。
「お、全員で来たのか。そっちはいいのか?」
「だってすごくピンチなんでしょ?」
「まぁな。やってほしいことを端的に言うと、手分けしてお酒で動きを止めてくれ。あとはテンベカ軍が徹甲弾で殻を割る」
「んなこと出来るのかよ」
「もう実証済みだ。魔法は効かないんだろ?だったら人間の兵器を使えばいい。実際、もう2体ほど仕留めてる」
「まじか。そんな簡単に倒せたのかよ。だったら、オレは進化した方を叩く。マスカット達、酒は頼んだぞ」
「うん分かった」
ヘルは先ずシュナカラクと合体した。そして翼も解放した。とにかく鎖の魔法をベースに、拘束魔法をイメージする。そんな間にも進化エッグモンスターは胴体だけで、猛スピードでタックルを仕掛けてくる。狙われてるのはトルム。でもトルムはパンチやキックで進化エッグモンスターを弾き返し、それから進化エッグモンスターは素早く脚を2本だけ出して、薙ぎ払うような攻撃をしてくる。でもそうかと思えば距離を取り、頭を出して真っ白い光球を吐き出してくる。進化する前とは違って、戦術が豊富だった。
「(よし出来た)」
「ヘル!」
「(テリッテ、アーサー)」
すでにテリッテとアーサーは合体していて、2人は共に進化エッグモンスターを見上げた。
「(確かに変わってるな。ていうか、トルム、一緒に戦ってるのか?)」
「(うん。アルカナが、エッグモンスターを排除してって言ってたって)」
「トルム、私達とも一緒に戦おう?」
「・・・今だけだ」
「(ケッ)」
「うん」
そしてテリッテはミアとも合体して、翼を解放した。膨れ上がった気迫と存在感に、パッと進化エッグモンスターがテリッテに頭を向ける。
走っていく装甲車。やがて運転手は大きく手を振る街の人を捕捉する。
「そこだ!」
街の人のガイドによって停車すると、屋根上の軍人はすぐさまライフルのスコープを覗く。何度かの銃声の後、そのエッグモンスターの殻が割れると、軍人も街の人も安堵した。しかしその時だった、別のエッグモンスターが装甲車に向かって真っ白い光球を吐き出したのは。それは装甲車の屋根を丸ごと覆いつくすような真っ白い爆発を引き起こした。
「く・・・そ・・・」
屋根とライフルごと固まった軍人。それを見て街の人は全力で逃げていく。白く固まった軍人は全く動けず、ただエッグモンスターと睨み合う。このまま食われるのか、そんな軍人の恐怖とは裏腹に、エッグモンスターはゆっくりと去っていった。運転席のドアも開かず、虚しくクラクションが響く。
「大丈夫!?すぐ助けるよ!」
するとそこにやってきたのはクロムだった。
「分離」
分離の魔法がかけられれば、白い塊は人間の力でも何とか砕けるようになった。まるで重たく積もった雪でも払うように、パラパラと白い塊が落ちていく。
「助かった。死ぬかと思った。ありがとう」
「うん」
「おーい、こっちにいるよ~」
空からヌークがそう言えば、クロムは走っていき、シャークも追いかけていく。すると向こうの方から悲鳴が聞こえた。やがて交差点を右に曲がると、そこにはエッグモンスターと数人の街の人がいた。
「みんな逃げて!ここはオレ達に任せて」
「うわああ」
逃げていく街の人達。エッグモンスターは別に人間を食べる習性はないから、人間が逃げていっても追いかけることはしなかった。そこでシャークが近づいていき、エッグモンスターの顔にワインをかけた。
「ふう、何とかなったね。じゃあさっきの軍人さんにお願いしよう」
テンベカ上空。
「そうよ。これよ!」
インディゴとシアン、2色が混ざり合った電気が美しく周囲に迸る。2色の電気はエメリスとレグリムに纏い、2体の巨鳥は正に一対の存在としての力強さを見せつける。
「これが、私達の、新しい力よ!」
カンディアウスは小さく頷いた。2人から迸る電気は、まるでお互いを支え合うように繋がって、近づくものすべてに歯向かうような意思を感じるから。――ようやく、骨のある戦いが出来そうだ。
「いくよ!」
「おう!」
「双千雷鎧!」
それから2人は同時にカンディアウスに向かっていった。常に2色の電気を纏い、しかも2人の体は迸る電気によって繋がれている。カンディアウスはとにかく2人からのキックを受け流し続ける。しかしそこで気が付いた、2人に挟まれていると、2人を繋ぐ無数の電気の繋がりも牙を向いてくるということに。落雷音と共に、2色の電気がカンディアウスを襲う。
「なるほどな」
挟み撃ちにしながらも、2人は着かず離れず絶妙な距離を保っている。その2人の間にいるカンディアウスは、まるで落雷の嵐の中にでもいるかのように、バチバチと2色の電気に襲われる。
「やはりお主らは、一対なのだな」
それでもカンディアウスは涼しい顔をしていた。カンディアウスだって自分の嵐を纏い、全方位的なダークグリーンの鉄壁を作り出している。生半可な攻撃ではカンディアウスには届かない。
「双千雷!」
2人から同時に放たれる、2色の電気の大放電。その間に立つカンディアウスは思わず守りを固めた。光の速さで押し寄せてくる2色の電気。しかもその力は、先程のものとはまるで違った。このままでは押し潰される。そうカンディアウスは全身からダークグリーンを溢れさせ、全方位ガードを固めた。
「このまま力比べか、面白い。うおおおおっ」
「くっ」
カンディアウスから溢れる、猛烈なダークグリーン。それは光の速さで押し寄せるものですら押し退ける、分厚くて、重くて、鋭利な光だった。久々に全力を出した。そうカンディアウスは笑った。ふと気が付けば、エメリスとレグリムは大きく距離を取って憔悴していた。
「ふう、まだあんな力を隠していたなんて」
「けど・・・面白いよな」
そういってエメリスとレグリムは見つめ合い、微笑む。
「そうね。戦ってるって感じ」
しかしその直後だった、エメリスがそいつらを見たのは。
「えっ」
気が付けば囲まれていた。巨大な卵のような不気味な何か。その直後に、1体のエッグモンスターがビュンッと頭を伸ばしてエメリスに噛みついた。
「何なの!こいつ!」
レグリムが、エメリスに噛みつく頭を引き離そうとしたとき、レグリムも別のエッグモンスターの頭に噛みつかれた。
「なっくそっ放せっ」
「何こいつら、まさか、力を、吸い取ってる?」
そこに、ダークグリーンの拳が突き抜けた。凄まじい突風のような衝撃に、エッグモンスターたちが2人から離れていく。
「気をつけろ。そやつらは、我らの力を好む」
カンディアウスもエッグモンスターに囲まれていた。でもダークグリーンではなくクウカクのバリアを作ってしっかりとガードしていた。エメリスとレグリムが戸惑っている間にも、エッグモンスターたちは再び2人を狙って噛みついてくる。でもレグリムはすかさずエッグモンスターの頭をキックする。
「好むって・・・こいつらはなんだ!」
「それは我にも分からぬ。しかし無暗に力を使えば食われる」
「そんなこと言ったって」
エメリスもエッグモンスターの頭にキックするが、思うように力が出ず、すぐにまた噛みつかれてしまう。
「やめろっ雷刃!」
レグレムが足に作った雷刃でエッグモンスターの頭を切り落とすが、別のエッグモンスターに翼を噛みつかれてしまう。
「千雷!」
エメリスから放たれる放電。それはエッグモンスターたちの頭や脚をバラバラにして胴体も押し退けた。
「ふんっ食われようが、こうするしかないじゃない」
吹き飛んでいったものの、キュッと空中で止まって、すぐに頭と脚を再生させる姿にエメリスとレグリムは揃って呆れる。
街にて。
「(みんな!ここだよ!ここに誘き寄せて!)」
振り返るテリッテとトルム。ヘルの足元には特に何もないが、とりあえずトルムは回り込んだ。進化エッグモンスターの脚による猛攻がとにかくすごい。全然隙が無い。でもやっぱり頭を殴ればそれなりに怯む。だから先ずテリッテは距離を詰め、尾状器官の拳で思い切りその頭をぶん殴った。
「風砲」
そこにトルムがスカーレットを放ち、進化エッグモンスターを地面に叩き落とした。
「(よし!鎖!)」
エッグモンスターの胴体に魔法をぶつけても効かないからと、ヘルはトラップを仕掛けることにした。しかも普通の魔法じゃ効かないから、クウカクを織り交ぜた。イメージは木。地面から伸びた鎖が、目標を捉えると瞬時にクウカクの枝を無数に伸ばして絡みつく。例え相手に10本の脚があってもすべてに絡みつく。そんな魔法は見事に進化エッグモンスターを捕らえた。
「(やった!捕まえた!)」
暴れる進化エッグモンスター。しかしきつく絡みつくクウカクの鎖はちぎれず、それから進化エッグモンスターは手あたり次第に真っ白い光線を吐き出し始めた。周囲がどんどん白く固まっていく。そこにテリッテは矢を放った。それは頭を吹き飛ばしたが、頭はすぐに生えてくる。
「(ったく、どうしたらいいんだよ)」
「(一先ずボクは分離の魔法で街を掃除しておくよ)」
そんな時だった、光の速さでヒカリンがやって来て、キュキュッと止まったのは。
<見失っちゃった>
「(そっか。一先ず分離で街の掃除しよう)」
しかしその直後だった。頭と脚をしまった進化エッグモンスターは、とげとげの胴体で高速回転し始めた。ふとヘルは思った。そういえば異次元に逃げられたら意味ない。でも進化エッグモンスターは空間に穴を開けることはなく、パワーでクウカクの鎖を引きちぎった。
「(そんな)」
そのままの勢いで進化エッグモンスターは脚を鞭みたいに振り回してきて、すかさずヘルはクウカクでガードする。
街の別の一画で、ふとヒーターは空間に穴が開くのを見た。するとそこからまた何体かのエッグモンスターがポンポンと出てきた。でもヒーターに焦りはなかった。やることは分かってる。そう静かに気を引き締めた。
カンディアウスとエメリスとレグリムを囲むエッグモンスターは5体。その内の2体が、何やら様子を変えた。胴体だけになったと思ったらとげとげしくなった。そんな間にも別のエッグモンスターがカンディアウス達を襲う。背後からタックルされるカンディアウス。振り返ったと思ったら別の方向から頭が伸びてきて、噛みつかれた。ダークグリーンの嵐で簡単に払いのけられるが、勝機は見えない。カンディアウスは冷静に戸惑っていた。
「おい、カンディアウス」
レグリムに声をかけられたので振り返るカンディアウス。
「あの2体、なんか変わったぞ」
眉間を寄せるカンディアウス。確かに変化を遂げていた。胴体がとげとげしくなり、脚は10本。鞭のような筋肉の部分も太くなり灰色がかった。それから進化エッグモンスターはエメリスとレグリム、カンディアウスを襲ってきた。2色の電気の刃、ダークグリーンの嵐、それで頭や脚は簡単にちぎれる。でも無限に生えてきてキリがない。そんな不安と焦りが、カンディアウス達に差し込んでいた。
天空の城にて。自分の部屋のバルコニーから街やカンディアウス達のことを視ていたアルカナは、イライラしていた。
「ゼファングたち!」
振り返るゼファングたち。
「お前達も、あの奇妙な敵を始末し、街を守れ」
そう告げると、ゼファングたちはキビキビと動き出し、3体は街へ、2体はカンディアウス達の方へと飛んでいった。それからまたアルカナは地下礼拝堂へ。静寂な場所で、女神像を見上げた。
「これ以上邪魔をするなら、お前の頼みは聞かない」
見つめ合うアルカナと女神像。
「ふんっ」
アルカナはさっさと地下礼拝堂を後にした。また静寂に戻った空間。何の雑音もない。それから、女神像にゆっくりとヒビが入った。
飛んでいくゼファングたち。その内の1体は、ヒーターの目の前に着地した。急に飛んできたゼファングにヒーターは戸惑い、固まる。まさかここで戦うのかな?と。気を引き締めようとしたその時、エッグモンスターがやって来て、ゼファングはエッグモンスターと戦い始めた。
「え・・・もしかして、一緒に街を守ってくれるの?」
振り返ったゼファング。すると静かに、でも力強く頷いた。
読んで頂きありがとうございました。
横やりが入ってカオスになるのはこの物語のあるあるですね。




