表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
最終章「一番星を見つめて」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

271/275

「雷の雨が降る」後編

「それより、この戦いはいつまで続くの?退屈なんだけど」

「そうか。しかし、決闘というのは、観る者の為にある。目を逸らさせないようにな。面白くなってきたところではないか」

エメリスとレグリムはふらっと城を出た。天空島の大地に立ち、テリッテとガンニアー、2体になったアグリオスとの闘いを眺めていく。黄色、そして黄緑色の雷の雨が降っている。まるで花吹雪のように美しい。自分達の力を客観的に眺めたのは初めてだった。確かに悪くない。

(ツェピー)!」

テリッテは光の鎖を放つ。しかし黄色アグリオスは素早く翼をはためかせ、小さな閃光を放ってそれを弾き飛ばした。そんなことも出来るようになったのか。そうテリッテは表情を引き締める。今度は黄色アグリオスからの雷の雨のお返し。しかしそれはもう対策済み。避雷針として作った矢を放てば、雷の雨はテリッテの居る方とは全く違う方へと流れていく。睨み合うテリッテと黄色アグリオス。

一方、ガンニアーは正面突破していた。黄緑アグリオスからの雷の雨を強引に掻いくぐり、そのままストレートパンチをお見舞いする。

「ギャオッ」

すると黄緑アグリオスは閃光に乗るように、最高スピードで空を飛び回り始めた。ガンニアーは必死に気配を追うも、気が付いた時には後ろから蹴り飛ばされていた。

「くっ・・・」

反撃しようにも、再び黄緑アグリオスは閃光の速さで飛び回る。そしてまた死角から蹴りが入る。吹き飛んで体勢を崩されれば、ここぞといったように更に追撃が来た。かなりの衝撃。ガンニアーでもそう何度も受けていられない。だから直後、ガンニアーは燃え上がった。

「うおおおっ」

とにかく全身に青白い炎を纏って、燃え上がって、近づいて来れないようにする。しかし黄緑アグリオスは閃光の速さで飛び回り続ける。牽制し合う両者。その直後、バチンッと閃光が炎の塊を襲った。

「ギャオッ」

その瞬間に青白い炎は爆発し、黄緑アグリオスは失速する。ガンニアーはその時を待っていた。先ずは突撃。それから連続パンチ。反撃する隙も、逃げ出す隙も与えないように。しかしその時だった、黄緑アグリオスの全身から閃光が溢れだしたのは。

<今よ!>

息を合わせるガンニアーとタルトス。あの超絶閃光を対策してない訳はない。超絶閃光が放たれる直前、ガンニアーが作り出したのは濃縮魂子で作り出した光壁だった。とても分厚い半透明の光壁。瞬間的な閃光は、ガンニアーには届かなかった。更にはそのあとに来る衝撃波も何とか凌いだ。ガンニアーは一安心した。

「ギャオ・・・」

全身にパチパチと黄緑の電気をちらつかせるアグリオス。ふとガンニアーが理解したのは、アグリオスの疲労だった。

「なるほどな。あの必殺技は相当なエネルギーを使うのか」

それでもガンニアーが突撃すれば、黄緑アグリオスは蹴りで迎え撃ってくる。

一方、テリッテはとある濃縮魂子を作っていた。それは普段のものよりも一層複雑な魔法。戦いは尾状器官(アーサー)に任せて、テリッテは魔法の生成に集中していた。雷の雨が封じられた今、黄色アグリオスは小規模で収束させた閃光を放って襲い掛かってくる。そしてアーサーは光壁で隠れながら、フレイムジャベリンの乱射。その戦いはまるで銃撃戦。

「・・・出来たっ。行くよ?」

「(おう!)」

テリッテは集中し見定める。黄色アグリオスはアーサーが放ったフレイムジャベリンに気を取られていた。そしてテリッテは手を突き出した。

鎖十層(ツェピー・ディシアーソ)!」

テリッテの手から放たれたのは、10本の光の鎖だった。そんな魔法に気が付いた時には、もうすでに黄色アグリオスは光の鎖に囲まれていた。捕まる前のその一瞬、黄色アグリオスは全身から閃光を放つ。超絶閃光には及ばない、簡易版。しかしそんなものでは光の鎖たちはびくともしなかった。

「ギャオッ」

50メートルの巨鳥の全身に絡みついていく光の鎖。しかもその直後、黄色アグリオスはそれがただの光の鎖ではないことを悟った。光の鎖は枝分かれし、新たな光の鎖を生み出していく。それは別の光の鎖と結合し、強固になっていく。10本だった光の鎖は、瞬く間に”網のように”増えていく。そうして、黄色アグリオスは身動きが取れなくなった。

「ギャオオオオッ」

全身に力を溜めていく黄色アグリオス。バチバチと電気が溢れていく。

「(来るぞ!)」

<大丈夫。対策済みだよ>

テリッテは自信を持っていた。この魔法は、ミアと一緒に考えた仕掛けがある。アグリオスは急速に全身に電気を溜め込んで、それを一気に解き放つ技を使う。それが厄介。それなら――。

「ギャオッ」

黄色アグリオスは戸惑っていた。全身に溜め込もうとした電気が、逃げていく。それでも負けじと更に電気を生み出し、溜め込む。でもその瞬間から、光の鎖は電気を吸収し、外に放出してしまう。

「ギャオオオオッ」

怒り、戸惑い、悔しさ、それはそんな雄叫びだった。

天空の城のバルコニーにて、アルカナはそんな魔法に感心していた。そして観念した。

<次はアーサーの番だよ!特大のエクスカリバーでトドメを>

「エクスカリバーの濃縮魂子も作っておいたよ」

「(おっしゃあ!うおおお!――)」

真っ直ぐ天に手を伸ばす尾状器官(アーサー)

「ライコウ!テンカン!フレイムエクスカリバーぁああ!」

天を突くように燃え上がった、蒼白く輝く炎。その炎の柱は、戦いを見守る人々の眼差しを釘付けにした。輝きは温度はそのままに、炎は一瞬にして剣の形に収まっていく。それはいつもよりも10倍大きな、特大エクスカリバーだった。もがき出す黄色アグリオス。それでも羽ばたくことも出来ず、ただテリッテを睨んでいた。天高くそびえる蒼白く輝く炎の剣。それを握りしめる尾状器官(アーサー)はそして、テリッテ、ミアと気持ちを一つにした。このひと振りで、決める!

「はあああっ!」

フレイムエクスカリバーが振り下ろされたその時だった、黄緑色の収束された閃光がテリッテを襲ったのは。

「(なに!)」

尾状器官(アーサー)はとっさに剣を盾にした。しかもその直後、閃光の速さで黄緑アグリオスはテリッテにタックルした。

「きゃっ」

「(くそっ)」

それからガンニアーもやってきて、黄緑アグリオスに突撃していく。

「今の内に」

「(おう)」

再び集中するテリッテ達。しかしガンニアーに押さえつけられながらも、黄緑アグリオスは強引に閃光に乗り、テリッテにタックルして、テリッテの体を鷲掴みして振り回した。

「(くそっ)」

そしてその直後、黄緑アグリオスは全身から電気を溢れ出させた。

「まずい!」

とっさに光壁を作るガンニアー。でもテリッテは間に合わなかった。超絶閃光。そして、エクスカリバーは海に落ちていった。

「ぶはあっ」

海に落ちて気絶から回復したテリッテ。全身はまだ少し痺れている。それでもとりあえず海から上がり、ガンニアーと黄緑アグリオスとの戦いを見上げる。

「ふう・・・」

「(油断しちまった。まさかもうひとつの方がかばってくるなんて。けど、2体とも縛ればいい。テリッテ、またあれ頼む)」

「そうだね・・・ふう・・・」

<まだ痺れてるね、ちょっと休もう>

ガンニアーと黄緑アグリオスの戦いは拮抗していた。突撃し合って、殴り合い、蹴り合い、お互いに疲労もある。それでもそんな戦いこそ、アルカナには満足する風景だった。

黄緑アグリオスは閃光に乗って、ガンニアーを翻弄する。でもふとガンニアーは拘束されている黄色アグリオスの姿を見て、ピンと来た。動きの速いやつを止めるには。すかさず黄色アグリオスに密着するくらいに近づき、背にして静止する。相変わらずブンブンと飛び回る黄緑アグリオス。しかし勢い余って黄色アグリオスに衝突しないようになのか、ガンニアーを襲ってこなくなった。その隙にガンニアーはとある濃縮魂子を作り始める。しかしその直後だった。高速移動をやめた黄緑アグリオスが雷を飛ばしてきたのは。

「くそっ」

黄緑アグリオスの放つ雷は、黄色アグリオスに当たってもどうやら無傷らしい。だから黄緑アグリオスは、止まってるガンニアーに向けて、雷の花吹雪を浴びせかける。仕方なく逃げていくガンニアー。

「ギャオッ」

黄色アグリオスの声に、黄緑アグリオスが振り返り、首を傾げる。黄色アグリオスは目で訴えていた。光の鎖の”変化”を。距離を取ったガンニアー。一息つきながらも、2羽の様子にふと首を傾げた。

「(何やってんだ?)」

テリッテ達も、ガンニアーも戸惑っていた。黄緑アグリオスが、黄色アグリオスに雷の花吹雪をかけている。バチバチと、黄色アグリオスが無数の雷を浴びている。足で光の鎖を引きちぎろうとするようなことはしない。テリッテもガンニアーも、休憩することを優先させていた。一体何をしようとしているのかは分からない。そんな光景だったが、その”変化”に真っ先に気が付いたのはミアだった。

<見て!光の鎖が>

黄色アグリオスの電気を吸収するように作った光の鎖。それが全体的に電気を帯び始めた。

「電気は吸収するように作ったのに」

<いや、吸収はしてるんだよ。どっちのアグリオスの電気も。でも内側と外側、両方から電気を込められたら、放出する出口がない>

「それって、つまり・・・」

黄色と黄緑、2色の光を強く帯びた光の鎖はすると直後、爆発して砕け散った。

「あっ」

<くぅー。あっちが一枚上手だったかー。でも逆にいいアイデア浮かんだよ>

「ギャオオオオッ」

「私、もう動けるよ」

「(だな。もう痺れてねえ)」

飛び上がりながら、テリッテは矢を放った。それは標的を射抜く為のものでなく、2羽の電気を分散、吸収する10本の”浮き矢”だった。

先制として、避雷針がばら撒かれた大空。アグリオスたちは放つ電気がコントロール出来ない状況をすぐに理解する。そこにガンニアーが黄緑アグリオスに向かっていき、アグリオスは蹴りで応戦。黄色アグリオスが浮き矢を1本破壊する間に、尾状器官(アーサー)がフレイムジャベリンを放つ。ガンニアーとアーサーが戦っている間に、テリッテはまた魔法作り。

一進一退の戦い。アルカナも、グラバードも、観客たちも、それぞれそれなりに満足していた。でもそんな時だった、アルカナが”誰もいない方”へと振り返ったのは。

「・・・だろうな。しかしそれもまた運命だ。あたしはただ描き続けるだけ」

アルカナは独り、感じていた。それは自分の中で蠢くようで、遠いどこかからのざわめきのようで。そんな衝動が、何やら急にうるさくなってきたと。

するとその直後、2体のアグリオスたちの瞳から、漆黒が溢れ出した。

「(くそっこんな時にテムネルかよ)」

やがて全身に漆黒の血脈が走り、凶暴な力を身に纏いはじめる。

分離(ラズデーレ)!」

テリッテの魔法は黄色アグリオスのテムネルをはがしていく。しかしその直後には黄緑アグリオスが閃光に乗って突撃してきて、ガンニアーもろともテリッテは吹き飛ばされる。

「ギャオオオオッ」

それから漆黒の混ざった黄緑の雷の雨が降り出した。雷の雨は9つの避雷針の矢に吸い寄せられていく。しかしそのエネルギーは強大で、すぐに1つが耐え切れなくなって砕け散った。

分離(ラズデーレ)!」

すかさずテリッテが魔法を放ったが直後、それは黄色アグリオスの翼に遮られてしまう。

「あっ」

また1つ、2つ、バリバリと避雷針の矢が砕け散っていく。そんな状況に、ガンニアーは拳を握った。それから真っ直ぐ飛び出していく。標的は、黄緑アグリオス。雷の雨を降らしながらも、黄緑アグリオスはそんな突撃してくる小さな存在をしっかりと睨んでいた。

「おらあっ」

バシッと、黄緑アグリオスはガンニアーのパンチを足で受け止める。その瞬間、ニヤッとしたガンニアー。目を見開いた黄緑アグリオス。自分の体から漆黒が弾けて消えていく。

「ただのパンチだと思ったか?オレだって、分離(ラズデーレ)くらい使える。その魔法を拳に込めたんだ」

漆黒の血脈が剥がれていく。それでも黄緑アグリオスは力を振り絞り、すべての避雷針の矢を破壊した。同時に空気に溶けていくテムネル。

<今だっ>

テリッテの眼差しに真剣さが宿る。

鎖十層(ツェピー・ディシアーソ)!」

ハッとする2体のアグリオス。まるで流星のように、光る鎖が宙を舞う。その小さく、素早い魔法から逃げられるはずもなかった。瞬く間に光る鎖はアグリオスたちを捕らえた。そして同時に瞬く間に鎖は分岐して網状になっていく。

「ギャオオオオッ」

それは苦しみの雄叫びだった。その直後、まるで光の鎖のほのかな輝きに共鳴するように、アグリオスたちの体も何やら光を帯び始めた。そんな様子をアルカナも観察する。

<アーサー、今度こそトドメだよ。あの鎖にはね、仕掛けがあるんだ。あいつらは要はスーヴェと同じ。だから魔力の結合を緩める魔法を仕込んで、体を脆くしたの>

「(とりあえずぶった斬ればいいんだよな!)」

<まぁそうね>

「なら黄緑の方はオレがやる。同時に行くぞ」

「(おう)」

テリッテが作っておいたもの、ガンニアーが作っておいたもの、それぞれの濃縮魂子がパァッと弾けていく。

「(ライコウ!テンカン!フレイムエクスカリバーぁああ!)」

蒼白く輝く巨大な炎の剣が出来上がる一方で、ガンニアーは拳を青白い炎で燃え上がらせる。

「うおおお!・・・ディスペリオン・フィストぉおお!」

突撃するガンニアー。振り下ろされる炎の剣。ガンニアーが拳を振るえば、直後に凄まじい大爆発が起こり、炎の剣が振り下ろされれば、それは彗星のような猛烈な輝きを見せる。

「ギャオオオオッ・・・・・」

それは消えゆく淡い雄叫びだった。大気をも焦がす、美しい炎と大爆発の後には、何も残らなかった。そしてアルカナは小さく落胆した。戦いを見守る街の人々が歓喜する。

「(しゃああ!勝ったぞおお!いやあ、楽しかったぜ)」

歓喜する人々の中で、グラバードは意識を集中した。それはまるで電話をかけるような感覚。その声は魔法に乗っかって、アルカナの居るバルコニーに転移する。

「先ずはオレ達の勝ちだな」

アルカナはふっと笑みを溢す。

「中々退屈を凌ぐ良い戦いだった」

「次は私達の番よ!カンディアウスを出しな!」

「・・・あぁ」

エメリスとレグリムが嬉しそうに半獣となり、羽ばたいて飛び上がる。それから半獣から完全な鳥になると、街の人々は驚いた。今さっき倒したはずの2体の巨鳥が、また出たと。しかし違うのは、その身に纏う雷の色。エメリスはインディゴに、レグリムはシアンに色づいた雷を纏うということ。

ふとジュレイクは、街の人々の声に耳を澄ませた。

「なんだよ。また同じかよ」

「でも、さっきよりは小さいな」

「さっきの方が迫力あって良かったな」

エメリスとレグリムが天空島から飛び出せば、その先にはカンディアウスが仁王立ちしていた。空中に作ったクウカクに立ち、腕を組むカンディアウス。静かに灯るリッショウ。カンディアウスがダークグリーンを纏えば、エメリスとレグリムもリッショウして気迫と存在感を放っていく。

「先ずは軽く遊んであげるわ」

読んで頂きありがとうございました。

いよいよ蘇りし者同士の激戦が始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ