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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「王の未来」後編

「いいな?絶対だからな!」

そう吐き捨てれば、男はまた変身して飛んでいった。男が見えなくなった空を見上げながら、レッサーはハッとした。

「そうか・・・忘れてた」

「え?」

「チャリティーイベントだからこんなもんって思ってたけど、シルヴェルのモンスターのニュースのイメージがあるんじゃ、そりゃ集客も募金額も弱い訳だ」

「何か、良い案はあるのか?」

シルヴェルがレッサーにそう尋ねると、レッサーはすぐに余裕の伺える笑みを返す。

「任せときな。ピンチの時ほど頭は働くもんだ」

こっそりと、テリッテがシザクの腕を引いてシルヴェル達に話が聞こえない距離まで歩き出す。

「アドバイスしてあげたら?」

「・・・アドバイスとは、助けを求められて応えるものだ。あの男のいきいきとした表情に水を差していいものか。その者自身で乗り越えられるのなら、それでいいと、エイシン様も仰っていた」

「そっか。そうだよね。難しいね。私だったら、すぐに未来を言っちゃってた」

それから草原の広さと海が眺められる事で人気の、ルスタン草丘大広場で3回目のチャリティーイベントが行われた。

「賑やかになってきたね」

テリッテと共にやって来たのはマスカット、ヒーター、ロックエル、クロム、そしてグズィール。マスカットがそう言えばグズィールは相槌を打ちながら、屋台の裏に置いてあるラフーナのストックを1つ手に取って、それを4分割に切り分け、篭に入れ、2段になっている横長な商品棚に並べていく。翼人の世界の食べ物コーナーは結構な人気で、レンタルしている商品棚を2つにするという事でマスカットとヒーターに続いて、ロックエルとクロムとグズィールもやって来たのだった。

一方、大広場にやって来たのは、アナウンサーの女性とテレビ番組のスタッフ達。

「私達は、今話題になっているジュピター・コーポレーション主催のチャリティーイベントに来ています。とってもキレイな草原と緩やかな丘ですね。あ、見えて来ましたね。やはり独立自警団アルテミス、新団長のヘルさんのコーナー、魔法治療には長い列が出来ていますね。そしてそれと同じくらい話題になっている、翼人の世界の食べ物コーナー。では早速頂いてみましょう。こんにちは」

「こんにちは」

「アルテミスに所属している翼人の方ですか?」

「はい。私、テリッテといいます」

「こちらが話題になっているラフーナという食べ物ですね」

「はい」

「1つ頂いてもいいですか?」

「勿論です」

「では頂きます・・・・・うん!わぁ美味しいです。サクサクしてるのにジューシーで、オレンジに似た香りが優しく広がります。こちらは、果物なんですか?お菓子のような食感ですが」

「果物なんですけど、みんなおやつのように食べてます」

「次はこの、アーモンドのような形の物を頂いてもいいですか」

「はい」

夕方になってこの日のチャリティーイベントも終わり、テリッテ達が満足げに片付けている一方、ふとレッサーとオーエンがシルヴェルに歩み寄った。

「アイデアを固めた。聞いてくれ」

「あぁ」

「先ず、必要なのは金だ。何てったってテーマパークの復興となると問題は資金だ。まぁ謝罪は控え目でいい。謝るより実績だ。それでまぁその、それで、あんたに頼みが」

「我に出来る事なら尽力する」

「おう。その、これはそうならなかった可能性も十分にある事なんだが、あんたの力を、売れないかなって」

「売る、とは」

「シーザリアンのシーザリアンフルーツのように、蘇りし者の力で作った物は珍しいし、目新しいし、もし金に換えようとすれば買い手は必ずいる」

「要は、あんたの力ってさ、宝石みたいだろ?その犬もさ。あんたの力を、ダイアモンドのような形にしてみたら売れるんじゃないかって事。1回、やってみてくれないか?」

「ダイアモンドを見た事はないが、宝石を作ればいいのだな」

掌を見つめるシルヴェル。ほんのりとその瞳が青カビ色に光れば、直後に掌の上には青カビ色に鈍く光る石ころが作られた。

「んー。それじゃただの石だな」

「いや。カットはプロを雇った方が良いんじゃないか?」

「あー、確かにな。それ、とりあえず貰っていいか?カットのプロに頼んでみる」

「あぁ」

それから翌日の事だった、ルアのタブレットが着信を受けたのは。それはレッサーとオーエンからで、リビングに居たルアはビデオ通話を繋いだ。

「うおおーい。良いニュースだ!昨日貰ったあの原石、有名な宝石加工会社に持ってったらすげえ驚かれたぜ。そりゃあ世界に1つの原石だからな。そんで加工してくれる事になった。しかも、今の技術で出来る最高にキレイなカットでな。何つったっけ」

「コスモブリリアントな」

「あぁそれ。まぁ出来るまでは1ヶ月半はかかるんだが。もしそれが商品になったら、恐らくは最低でも10億の値がつくだろうってな」

「そ、そんなに」

「たった1つの石でそれだ。ジュエリーってのは、無限のデザインがある。石を何個も使って、有名なデザイナーのデザインでティアラでも作ったら、50億でだって売れる。これなら、テーマパークの復興資金になる」

「そうか、石など我にかかればいくらでも作れる。必要な時はいつでも差し出す」

「あぁ頼んだぜ」

「まぁ、テーマパークの建設に必要な資金は大体2000億らしいから、地道に頑張るしかないな」

「に、2000億・・・」

そんな所で、2人は急にニヤついた。とても高い場所にいるような背景の2人を前に、ルアは何かを期待する。

「そこでだ。ただ今までと同じ事をしても面白くない」

「何か良いアイデアがあるの?」

「本当に、世界に1つの宝石を作る」

「本当にって・・・どういう事?」

「宝石と言えば、カットだ。要は、今までにない新しいカットの宝石を作れたら、そりゃあ高値で売れるはずだ」

「しかも、ただの人間じゃ出来ない力でっていう付加価値が付いたら、どうなるんだろうって思ったらワクワクしないか?」

「その為に必要なのは、シルヴェルがカットの知識を得るって事だが、やってみないか?」

シルヴェルはふとレッサーの言葉を思い出した。楽しい雰囲気を作るのが楽しい。だがそれは、決して楽をしてやっているのではない。チャリティーイベントとやらでその一端を見た。楽しい雰囲気を作る、だからこそその為の努力は怠らないのだと。

「やってやろう。先ずはそのコスモなんとやらを持ってきてくれ」

「コスモブリリアントな。画像でもいいか?」

「いや、実物で頼む。我の力は、我が手で触れた物を精密に再現する」

「ん、おう、さすがだな。分かった。でもポンって買えるもんじゃないからなぁ」

「だったら加工会社から、サンプルとして借りればいいんじゃないか?」

「ああ、だな。じゃあ借りてくるから、待っててくれ」

「あの、私も、提案、良いですか?」

「ん?おう、良いぜ?」

「資材って、鉄とか、木ですよね?それを自分達で用意したら、建設費も節約出来るんじゃないですか?」

「あー・・・。木はシーザーから貰うとして、鉄はどうすんだ?」

「シルヴェルさん作れませんか?」

「問題無い」

「まじか、石だけじゃなくて鉄も出せるのか?」

「言っただろう。精密に再現すると」

「だったらそうだな。資材費は節約出来るな。建設にかかる人件費だけなら、数億でテーマパーク復興が出来るかも知れない」

「シルヴェルさんが、そのままアトラクションとか再現して作ったらいいんじゃないですか?」

「いや、それはどうだろうな。それじゃシルヴェルに反感を買ってる奴らは認めないだろう。それこそ、何でも魔法で解決かってまた言われちまう。シルヴェルはさ、王になりたいんだよな?」

「そうだ」

「王って、民あっての王だよな?何かさ、オレのイメージで言ったら、シルヴェルの人望で集まった奴らが人力でテーマパークを復興する、そういう構図が、王って感じなんだけどな」

「あぁ。レッサーの言う通りだ。我には確かに力がある。だが1人で全てをやってしまったら、民は我を認めない。民を動かしてこそ、いや、民に動いて貰ってこその、我が理想とする王の姿だ」

「だからさルア、まぁ節約は大事だけど、楽すりゃいいってもんじゃない。分かるだろ?」

「そうですね。分かりました」

「さすが親衛隊だ。我の事を分かっている」

「フッ。じゃ、ダイアモンド持っていくからな」

ビデオ通話が切れれば、シルヴェルはルアを抱き寄せた。何故ならルアが大人しいから。

「私もやっぱり麻痺してるのかな」

抱き枕に寄りかかるようにルアがシルヴェルの胸に頭を預ければ、シルヴェルはルアの髪を撫でる。

「魔法は確かに便利だ。だが、我は、民が居なければ王にはなれない。ルアが居なければ王になれない。我はルアと共に人の生を全うしたい」

「(ただいま~)」

庭からヘルのテレパシーが飛んできたので振り返るルア。今日の昼食は焼き肉。といっても肉は、ローズトマトと一緒にふわふわのレタスで包んだり、最近になってスーパーなどで売られている「ジュエルのたれ」をかけたり、禁界から持ってきた野菜を付け合わせたり、とってもヘルシーな焼き肉。普通の牛肉、サーロインアップル、コーンミートを食べ比べても、ヘルにとってはどれも本物の肉だった。

「(うまいねー)」

「キューン」

「パーッ」

ヘルと“光剣獣犬”のサファ、そしてバッパードのテノンが仲良く食事する様子に、ルアとペルーニは微笑み合う。そんな時だった、インターホンが鳴ったのは。でもルアより速く立ち上がったのはヘル。

「(ルーナだ!)」

「えっ」

「誰だ」

「私の妹です」

「そうか」

玄関扉を開けたのはヘルで、ルーナははしゃぐようにヘルに抱きついた。

「(久しぶり)」

「ほんとだよ。魔法使えるのに何で会いに来ないの?電話ばっかりで」

「(ちょっと、何か忙しくて)」

「団長だから?」

「(まぁ、ね)」

ヘルと一緒にルーナがリビングに入れば、すぐにまたルアに抱きついた。

「1人?」

「な訳ないでしょ」

パッと現れたリヒカ。ルアもペルーニもリヒカと笑顔を交わし、それからルーナはジュエルのジュースを一口。

「んー!美味っし!」

「(初めて飲んだの?)」

「ホールズはサクリアの反対側みたいなもんだし。サクリアにはまだまだ全然シーザリアンフルーツは来てないよ。ネットで頼めるけど送料が高いってパパが言ってたし」

「(じゃあ持っていきなよ)」

「うん。その為に来たから」

「会いに来たんでしょ?」

ルアがそう聞けば、ルーナは微笑んだ。そして無言でジュエルのジュースを一口。その最中、ルーナは実際には初めて会う“義理の兄”を見た。蘇りし者だからと聞いた時は、ただ混乱した。年齢は分からない。見た目は30代くらいなのかなぁ、という印象だった。

「そう言えばお姉ちゃんのパパは何て言ってた?結婚したって言ったら」

「ビデオ通話の向こうでコーヒー溢しちゃって。すごく慌ててた」

「へー。そりゃそうだよね」

「でもシルヴェルさんの魔法の遺伝子のサンプルあげたら許してくれた」

「え、それでいいの」

「魔力を感じる。普通の人間ではないのか」

「う、うん、はい。えっと、私の体には、精霊の遺伝子があって」

「ウパーディセーサとは違うのか」

「うん、世の中のウパーディセーサとは別に、お姉ちゃんのパパが作った、特別なウパーディセーサ。この前、リヒカと会いに行ったの。お姉ちゃんのパパに、ちゃんと説明して貰った。よく分からなかったけど。でね、あたし、キアラとセリーアンと一緒に、精霊になろうと思って」

「(え?どういう事?なれるの?)」

「うん。チュクナとジュリは精霊になって今は向こうの世界で暮らしてるから」

「(それって、ルーナも、向こうの世界に?)」

「ううん、あたし達はこの世界で暮らすよ。あ、でもパパとママには内緒ね?」

「(まぁ、いいけど。言っても混乱させるだけだろうしね)」

「精霊になってやりたい事でもあるの?」

少し不安そうなルアの問いに、ルーナは微笑みを返す。

「ずっと考えてたの。あたし達も何か出来ないかなって。その、世の中の役に立つ事。あたし、病院に治癒玉あげてるでしょ?何か、もっと魔法で色んな事出来るようになりたいなって思って」

「そっか。良いんじゃない?」

「魔法の鍛練がしたいなら、いつでも我らを頼るといい」

「うん」

ルーナは思った。シルヴェルって結構優しいおじさんなんだと。

「じゃあね、またジュエルとか貰いに来るねー」

「(うん、またね)」

持ちきれないほどのシーザリアンフルーツでも問題無い。ルーナはリヒカと共にパッと消えていったから。その別れた瞬間のふとした静寂に、ルアは思った。ルーナも、もう1人で考えて動けるようになったんだと。それから昼食の片付けも済んだ頃、レッサーとオーエンがやって来た。いかにも頑丈なケースを静かにテーブルに置いたオーエン。

「どうだ、すごいだろ。本物のコスモブリリアントカットのダイアモンドだ」

「(うおー。吸い込まれそうな輝き)」

「キューン」

「(ね。サファみたいだね)」

「ちなみに全部3カラットで、値段は大体3億だそうだ」

「(形って、こんなにバリエーションあるんだ。涙とかハートとか、黄色とかピンクとか)」

「あぁ、よく見るのは上から見たら丸くて、下は円錐になってるラウンド型だな。でも時代によってトレンドが違うから、色や形によっても値段が変わる」

それぞれのダイアモンドを静かに手に取ったシルヴェル。その渋い眼差しはまるで鑑定士のよう。それからシルヴェルは改めて宝石を生み出した。それは透き通るような青カビ色で、あらゆる角度で大小様々なカットがされたオーバル型だった。入っていく光がランダムに反射していき、不思議と所々が明暗に輝いていた。

「こんなものか」

「うおー、すげー!本物だ、ダイアモンドだ」

「ダイアモンドだが、恐らくただダイアモンドじゃない。違う名前にした方が良い。んー例えばシルヴェニウムみたいな」

後日、意気揚々とレッサーとオーエンが宝石加工会社「ティアランド」に向かった。宝石の鑑定士は応接間にて、絶句した。裸眼で眺めてはルーペで眺めてを繰り返し、そして釘付けになった。

「シルヴェニウム、ですか。これは、まさに、宇宙です。このカビに似た斑点と、絶妙な乱反射が、まるで銀河のよう。実は、コスモブリリアントは、これを作る為のカットなんです。宝石の中で宇宙を作る為のカット、それがコスモブリリアント。ですが、それは、人間の手では到底叶わないようですね。これは素晴らしすぎる。シルヴェニウムは、とてつもない値がつくでしょうね。恐らく10カラットほどの大きさのこれで、100億は下らないでしょう」

「バリエーションとしてはさ、この前渡したターコイズみたいな透き通ってないシルヴェニウムがあってもいいもんなのか?」

「そうですね。良いと思います。が、まあ、このシルヴェニウム・ダイアモンドは、一線を画すでしょうね。正に新しい時代を作る王の未来の希望そのものですよ」

読んで頂きありがとうございました。

一瞬でルアが大金持ちになりますね。これも主人公だからなんですかね。そんな事より、シザクの生き甲斐は、どんなものになっていくんでしょうか。

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