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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「集う者達」前編

シルヴェルの家にて。リビングで寛ぎながらタブレットを見ていたヘル。そんな時にふと見つけたのはとある動画。それは投稿されてから1時間ほどで100万回再生されていた。そのチャンネルの名は、ディンクルスチャンネル。

「私はディンクルス・イコア。今ここに宣言する!私は戦で世を動かす!力を持て余した、どうしようもない者達よ、その力、その怠惰、私が必ず打ち砕いてみせよう。どんなウパーディセーサ・テロリストでもかかってこい。腕に自信があるならかかってこい。その力、必ず打ち砕く。動かないなら、それは無力の証明だ。どんなにウパーディセーサをいじくろうが、ここに来ないなら、それは敗北だ。私は逃げも隠れもしない」

「(ルアぁー、これ、何か始まったみたい)」

ゼーレ、ディンクルスの居る城にて。

「ちょっと挑発し過ぎじゃないか?お前の台本」

そうブレンが文句をぶつけても、レイハはむしろ満足げだった。動画投稿から約1時間、その公園は襲撃されていた。常に動画を撮っている銅の力の男達が居る中、ディンクルスはあっという間に襲撃してきたコンビのウパーディセーサ・テロリストを成敗した。血塗れで倒れたテロリスト2人を、ブレンは冷ややかな目で眺める。ディンクルス軍全員とチェインしているディンクルスは、無敵だ。力の次元が違う。どんなにウパーディセーサを改造しようと勝てる者は居ないから。そんな時だった、トールが動き出したのは。ふと遠くの空に目を向けるトール。

「ん?何だ」

退屈を感じていたブレンも同じように空を見上げれば、その方からは何人ものウパーディセーサが飛んできていた。

「また来ました!」

銅の力の男、バルヌクがそう声を張れば、ディンクルスもみんなも空を見上げる。やって来たのは10人だった。全員、尾状器官を10本生やしたウパーディセーサ。するとそいつらは空中から衝撃波を連射してきた。

「ディスペリオン!」

ウパーディセーサ達の方へ向けられた1本の剣から、紺碧の電撃が放たれた。それは広範囲に押し寄せていく津波のよう。一瞬の爆発、衝撃波が空を震わし、ちらほらと集まっている恐れ知らずの観客達も顔を背けた。まるで落雷にでも遭った木が葉っぱを散らすように、空のウパーディセーサ達は墜落していく。

「あー」

そんな声を漏らしたのはレイハ。ふとブレンが顔を向ければ、まるでバズーカのようなものに猛獣のような爪が付いた巨大な尾状器官を2本だけ背中に携えた、まるでヒーローキャラのコスプレのようにカラフルなウパーディセーサという姿のレイハは右手に剣のような大きさの、広がった翼のような形をした武器を持っていた。

「私もやりたかった」



第83話「集う者達」



「それ、お前のイメージ?」

「ん?そうだけど」

パラパラと落ちていくウパーディセーサ達。でも地面に墜落する直前、尾状器官が一斉に地面に突き立ち、ウパーディセーサ達は顔を上げた。そしてガサガサと尾状器官が蠢けば、やがて10人のウパーディセーサは公園に侵入した。

「ディンクルス、私も!」

「あぁ」

「フゥーッ」

軽くジャンプしたと思ったら、レイハはボカンッと音を轟かせて尾状器官で滑空した。

「グガグガ」

「お前も行くか?」

「グガグガ」

しかしすでにトールとハンバルスが“迎撃態勢”として侵入者達に向かっていっていて、ジャガーノートは落ち着いていた。

「だよなぁ」

「キュン」

「お前もか」

それからレイハ、トール、ハンバルスがウパーディセーサ達を薙ぎ払っていき、それをバルヌクと、同じ銅の力を持つ男、ヨウクが撮影していく。

「オレらはまだ見物だな」

1人のウパーディセーサが吹き飛んできた。それはトールの銃撃に吹き飛ばされた1人。尾状器官の半分は粉砕され、片足も失くしていた。しかし直後、そのウパーディセーサはゆっくりと起き上がった。まるで痛みも疲労も、恐怖も感じていないそんな様子に、ブレンは小さく首を傾げる。

「おいお前」

ブレンが声をかけるが、そのウパーディセーサは無反応でただ近くに居たブレンに衝撃波を放ってきた。金青の光をぶつけてそれを払い除けながら、ブレンは確信した。そのウパーディセーサからは血が出ていないと。

「こいつら、ロボットか」

素早くウパーディセーサの首筋に剣を突き刺せば、その1体はやがて動かなくなった。

「こんな技術、本当にテロリストか?」

やがて10体のウパーディセーサはバラバラに粉砕された。その後は襲撃はなく、動画を撮っていた2人がパソコンで編集している中、デークスとブレンは、テロリストの拘束とバラバラのウパーディセーサ・ロボットの残骸を集めていく。

「さすがディンクルス様、テロリストの身柄はこちらで引き取ります」

それからゼーレ軍の輸送車がテロリスト達を乗せて去っていき、ロボットの残骸も軍によって回収されていく。

「何だ、もう終わりか」

「ビビってる奴ばっかだな」

「さすがに勝てないと分かってて、襲ってくるバカは居ないんじゃないか?」

そんな観客達の話に耳を傾けながら、ブレンはディンクルスチャンネルに投稿された今回の戦いの映像を再生してみる。

「ディンクルスさん、オレ達も戦いたいです。せっかくチェインして貰ってるのに」

そう口を開いたのは銅の力の男、サーダル。

「この調子じゃ、もう襲撃は無さそうだね。でもこれも想定内、むしろ本番はこっからだよ?」

「レイハ、どういう事だ」

「悪者っていうのは、隠れたがりなの。そりゃ捕まりたくないからね。だから本当に自信のある奴は、挑発にも乗らない。だからこっちから行くの」

ダーラ、ベルセルク自社ビル。カースベルクは大型タブレットで、とある動画を再生した。

「我がディンクルス軍は、これより自ら世界中に赴き、テロリストや反社会的組織を潰しにかかる。しかしこれは正義ではない──」

そう言うとディンクルスは1本の剣を天に掲げた。

「これは戦だ!悪意のままに力を振るう者達は、戦という波に呑まれる弱者か、それに抗うだけの力を持った強者か、それだけだ」

動画の終わりには「テロリストや反社会的組織の情報提供をお願いします」という言葉が添えられていた。そんな動画を見ながら、カースベルクとファティマはカップアイスを頬張る。

「これがディンクルスの生き甲斐なのか」

「勇ましいわね。このアイス美味しい」

「情報提供するのか?」

そう聞いたのは、膝の上でボンに寝られているハクジュソウ。

「んー。まぁ、してやってもいいか。仕事柄、たまにここの技術を狙う奴らもいるし」

それから翌日、ブレンはボーッと朝日を浴びていた。城の周りは公園だから、とても静かで過ごしやすい。緩やかに流れる川を眺められるベンチに座るブレンと、デークス。そこにやって来たのは、ジョギングしているお爺さんだった。

「若いの、孫が応援してるぞ」

「あぁどうも」

ジョギングが日課のお爺さんと、そのベンチに座るのが日課のブレン。やがてブレン達が城に戻れば朝ご飯が用意され、ブレンは生ハムとベーコンエッグ、チーズ、オレンジレタスを、薄切りのライ麦パンで挟んだサンドイッチを頬張った。

「早速情報集まってますよディンクルスさん」

「そうか。なら、私と後2人、行きたい者は居るか?」

真っ先に手を挙げたのはレイハ、そして銅の力を持つ何人か。

「あんた達はくじ引きね」

「何だよ新入りのくせに」

「戦力重視でしょ」

「くっ・・・仕方ない」

「なぁ、お前のウパーディセーサ、どこで手に入れた」

サンドイッチを食べながら、ブレンはレイハに問いかける。

「知らないの?お金貰えれば、ウパーディセーサのデザインを請け負う、ウパーディセーサデザイナー」

「知らねえな。そんな奴居んのかよ」

「闇取引か?」

「どうだろ。高くはなかったから、闇じゃないんじゃない?」

「いくら」

「デザインによるけど、私は5万ちょっと」

「た・・・かくは、ないのか?」

それからレイハと銅の力を持つ男ビュクラ、そしてディンクルスは出発した。パッと消えていった先はゼーレの中では最高峰のテンア山の麓にある街、ブインシア。そこは街自体が標高2000メートルの位置にあって常に気温が低い。

「実はこの街、僕の地元なんです」

「そうなの。だから手を挙げたんだ」

「はい。これから潰すウェッシュエッジって奴は、いわゆる科学系テロリストで、ウパーディセーサの改造の為の施設を作ってるそうで。1回軍が制圧しに行ったんですが、その時放たれたウパーディセーサが狂暴で、泣く泣く撤退したって」

「狂暴なウパーディセーサ?」

「野生の動物をウパーディセーサにしたんです。人道的にも問題のある奴なんですけど、どうにも捕まえられず、という現状です」

「ふーん」

「なら居場所は分かるのか?」

「はい。拠点の場所は分かります。でももしかしたら逃げてるかも」

「あー、じゃあ早く行かないと」

「お!ディンクルス!」

街の人が1人、そう言って歩み寄ってくるとその男性はまるでヒーローでも見るようにディンクルスに微笑んだ。

「あいつをやっつけに来たのか?」

「あぁ」

「おう、頼むわ」

街を歩くディンクルス。その姿はとても目立ち、SNSでもリアルタイムで話題になる。一方、とある男が工場にやって来た。そこは街の外れにある使われなくなって久しい廃工場。

「ヤバイ!ヤバイぞ!本当に来たぞ!」

その男が慌てて小走りする姿を、他の男達は冷静に眺める。やがてその男は1人の男の下にやって来た。その男、ウェッシュエッジはやって来た手下を面倒そうに睨みつける。

「騒ぐな騒ぐな、すぐに準備しろ」

そう告げればウェッシュエッジはパソコンを触っていく。動いていく手下達。皆ウパーディセーサに変身し、臨戦態勢を取っていく。その傍らでウェッシュエッジは静かにイライラした。人間もウパーディセーサはアップデートした。そして“アレ”も完成してる。──現時点では、オレ達は最強だ。

街を歩くディンクルス。その後ろ姿についていくのはチョコバナナを持っているレイハと、フランクフルトを持っているビュクラ、と子供達。

「お前達、そろそろ着くんだから逃げなよ?」

「はーい」

「やだー、ディンクルスの戦い見たい」

「だから危ないってば」

ビュクラは忘れていた。ここ1週間、このジョーチ町では雪花(ゆきはな)祭りが催されてる事を。この通りでは屋台が並んでいて、屋台の人達は歩くディンクルスに陽気に声をかけていく。ジョーチ町を抜ければ、いよいよ山岳地帯に入り、廃工場がある。

「はい、お前達はここまで」

「えー」

「チェッ」

「ディンクルス!絶対勝ってね!」

「やっつけて!」

「あぁ」

子供達が手を振る光景に、ディンクルスは遠慮がちに手を振った。少し戸惑っていた。私はただ戦をする事でしか生きられない。だから正義じゃないと言った。でも、人々が私を見る目は英雄を見るよう。本当に、私にはその器があるのだろうか。

「何か居る」

ふと足を止めて、ディンクルスは剣を1本、その手に握った。レイハもビュクラもウパーディセーサに変身し、戦闘態勢。廃工場を守るように現れたのは、大きな熊のようなウパーディセーサ。尾状器官は2本で、先端はまるでカニのハサミのような形をしていて、尻尾にはもう1つの顔があった。

「ウガアアア」

「来た。私が行くから、ディンクルスとあんたは先行って」

「分かった」

レイハが飛び出し、ディンクルスとビュクラはアイコンタクトを取る。熊ウパーディセーサは4メートルくらいの怪物。先に斬りかかったのはレイハ。尾状器官の推進力をもって、翼のような剣を思い切り振り回せば、ドカンッと熊ウパーディセーサは倒れ込んだ。それでも直後に熊ウパーディセーサの尾状器官が飛びついて噛みつき、レイハはとっさに飛び退いた。

「悪いけど、あんたじゃ私の足止めすら出来ないよ」

「それはどうかな?」

「ん?」

気が付けばレイハは囲まれていた。その数は5。人間のウパーディセーサはオリジナルに改造されていて、胸元は赤く光って蠢いていて、尾状器官はそれぞれ色んな武器になっていた。

「ディンクルス以外はどうせ雑魚だ。さっさと殺してやる」

「えへへ、それ、フラグじゃない?」

レイハに一斉に襲いかかる男達。その瞬間、レイハはその場で剣をぶん回した。剣から銃弾のように飛び出していく“羽刃(はじん)”。ブスンブスンと、男達の体は傷付いていく。

「くっそ!」

「おい!街に行け!子供を人質にしろ」

「あんたらクズじゃないの?」

1人の男が空へ飛び出した。しかし直後に男は空中で急停止する。すでに先回りして、レイハは剣を振りかぶっていた。

一方、廃工場の中に入ったディンクルスとビュクラ。2人は5人のウパーディセーサ達に囲まれていた。

「ウェッシュエッジはどこだ!」

ディンクルスとビュクラは顔を上げた。3階ほどの高さに位置する何かの個室から、堂々とウェッシュエッジは姿を現したから。

「何か用か」

「何かって、指名手配だろ」

「私はディンクルス・イコア。お主の生き様を試させて貰う」

「ハッ偉そうな事を」

「私は正義ではない。お主がこの戦で死ぬのなら、それがお主の人生だったというだけだ」

「そうかよ。だが悪いな、オレは案外悪運が強くてな」

プシューッと扉が開いた。それは奥の方の扉で、出てきたのは人型の何か。目を凝らすビュクラ。──ウパーディセーサ?・・・。

「『ハデス』を試す。お前ら下がってろ」

変身は解かずに男達が下がっていく中、ハデスと呼ばれた漆黒の生物は悠然と、同時にすごく鋭利な殺気を纏って近付いてくる。見た目はまるで金属製のウエットスーツでも着ているかのような滑らかな全身で、2本の尾状器官は驚くような特徴は無い。そして頭には側頭からカーブして天に向いた2本の角があった。

「ぼ、僕は、援護に回ります」

一瞬、ディンクルスは目を見開いた。

「ディスペリオン!」

ビュクラが理解したのは、ハデスが超速移動してきたという事。そしてディンクルスが、そんなハデスを“拳”で吹き飛ばしたという事。紺碧の電撃が爆発したその一瞬、後退りすら出来なかったと怯えるビュクラを余所に、ウェッシュエッジは怒りを噛み締める。──ハデスでも、蘇りし者には・・・。

「頑丈な奴だ」

そんなウェッシュエッジを余所に、ディンクルスは拳に残る手応えの無さを感じていた。返り討ちにしたハデスは、何メートルも引きずりながらも倒れる事なく立ったまま踏ん張ったから。鎧を被ったような獣の顔だから、人間らしい表情は分からない。するとダメージを伺わせる間もなく、ハデスは尾状器官から熱線を発射した。眉間を寄せるディンクルス。

「うわあっ」

吹き飛ばされたビュクラ。凄まじい衝撃を理解し、倒れながらふと振り返る。それは工場の入口。人を丸ごと覆うほどの大穴が空いていた。廃工場とはいえ建物は頑丈なもの。それが一瞬で貫かれ、しかも地面も一直線に大きくえぐれていた。

「気負うな。戦では、気負った者が先ず死ぬ」

顔を上げるビュクラ。ディンクルスはえぐれた地面の横スレスレに立っていて、真っ直ぐハデスを睨んでいた。

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