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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「ジュピター」後編

ササラギは朝のサッカーコートに入っていく。そこでは子供達がいつものように練習に励んでいた。

「ヘイングさん」

「おう」

コーチの声が透き通るように響き、子供達がボールを蹴りあげていく。その静かな時間の中で、ヘイングとササラギはベンチに座った。

「オレ、コーチの話は断ります」

「そうか。何でだ?」

「テロ組織が壊滅したニュースあるじゃないですか」

「あぁ」

「本当はまだ終わってないんです。アジトは押さえたんですけどトップと数名の幹部には逃げられまして、オレ、サッカーは好きだけど、未練がましくいたくないんです。オレ、子供達を守れたらと思ってウパーディセーサになったんで。オレは、新しい人生の方に走りたいんです」

「お前らしいな。そういう真っ直ぐな所がお前の良い所だよ」

そう言うとヘイングはササラギの頭をワシャワシャし、ササラギはそれをゆっくりと振り払う。

「もう子供じゃないですって」

「ははっ、オレにとったら変わらないよ」

それからジュピター・コーポレーション本社20階、作戦会議室にジュピターズは集まった。ジュピターズの前に立つのは司令官のファンク。

「テロ組織のトップ、ブラグラと幹部数名は現在行方は分かってないが、アジトがあった場所から東方面にかけて、ネットでそれらしい目撃情報が上がってる。先ずはその街へ行く」

ケルタニア北東の街アンモウ。通行人に紛れて、ササラギはハイロとクワイオと共に街を歩く。都会とあってか通行人も多く、そして不穏な空気は感じない。そんな時だった、ササラギが超感覚で通行人の会話を拾ったのは。

「ジュピターズが来てるかも知れない、目立つなよ?」

「分かってます」

振り返るササラギ。そして目を留めたのは怪しくキョロキョロする男。

「ん?」

立ち止まったササラギにクワイオとハイロが気が付けば、ササラギはアイコンタクトをして、男を追いかけた。何となく素行の悪そうな男はそれからコンビニに入り、タバコと“1人では食べきれない量”の食糧を買い込んだ。

〈こちらミスト。アルタライザー発見〉

〈あー、多分組織の部下が情報を吐いたんじゃないか?〉

〈じゃあ本当にこの街に?〉

〈ったく楽な仕事だよなアルタライザー。アジト潰したのオレらなのに〉

〈文句言わないの〉

〈こちらマイコウ、怪しい車発見しました。いかにもマフィアっぽい。ど、どうする?〉

〈近付くなよ?どこだ、行くから〉

ササラギ達が自然な雰囲気で男を追いかけると、その先にはマイコウが居て、同時に行くと言っていたアロが合流してきた。

「あの男、多分パシリ」

怪しい車が留まった静かな路地にある、大きめのマンションに男が入っていった。

「オレとマイコウは表と裏で待機してるわ」

「あぁ」

マンションに潜入していくササラギ達。階段を上る足音を追いかけ、ドアが閉まる音を追いかける。

「ここだ」

「結局アルタライザーに通報するんでしょ?」

「まぁ丸投げよね」

「市民はここまでか」

マンションの近くにケルタニア軍の輸送車が停まる。軍用車なんてそこにあるだけ物々しい雰囲気で、通行人が目を向けていく。それから輸送車から出てきたアキレスとデリスと、ササラギ達は対面した。

「通報に感謝する。ここからは俺達が引き継ぐ」

「内偵するんですか?」

「いや、テロ組織のトップを捕まえれば、部下が喋らない事も分かる。放っておいてもメリットはない」

それからササラギは見上げた。マンションの表口方面の交差点で、街の通行人、集まってきたマスコミに混ざりながら、アルタライザーに包囲されて制圧されたマンションを。変身したテロリストが暴れ、マンションの壁が突き破られた。その衝撃でマンション全体が軋み、誰もがその音に恐怖を感じた。その瞬間、ササラギは声を拾った。それはマンションの中からの悲鳴だった。

「マズイんじゃないか?」

アイコンタクトするとササラギ達は変身して飛び出した。同時にアルタライザーとウパーディセーサ・テロリストが取っ組み合いながら地面に激突して、やじ馬達が逃げ惑う。今にも崩れそうにマンションが軋み、どこか何階かの天井が崩落した。そのフロアに突撃したササラギ。そして再びの悲鳴を聞けば、その部屋に向かっていく。

「ジュピターズです。怪我は」

「だ、大丈夫、です」

「すぐに避難を」

しかし崩落は止まらず、とっさにササラギがその部屋の住人に覆い被されば、落ちてきた天井はササラギの背中に当たる。でもそんな事は全く気にならないので、ササラギは住人を抱えて部屋を出ていった。

「ちょっと待って」

「え?」

「何も持たずに出ていけるか。せめて財布とか」

「なるべく早くして下さい」

念の為に天井にクウカクを張りながら、住人の男性を見守ってるササラギ。何となく窓から外を見ると、アルタライザーと戦うウパーディセーサ・テロリストは尾状器官に締め付けられていた。無事に“1人は”制圧された。ふと見渡してみるとウパーディセーサ・テロリストは他に見当たらない。それは何となくの胸騒ぎだった。

〈こちらミスト。ブラグラを発見。現在白い車で逃走中〉

〈いやいや止めろって、どこだ〉

〈銀行の前〉

〈とにかく逃がすな〉

「ここは、囮か」

ササラギもハイロもクワイオもそれぞれ誰かを助けながら裏口方面へマンションを出た矢先、1人のウパーディセーサ・テロリストがマンションの壁を突き破って襲い掛かってきた。とっさにマンションの住人を庇いながら、テロリストの尾状器官に殴り飛ばされたササラギ。

「ここにも潜んでたのかよ」

「ジュピターズ!てめえら絶対許さねえからなあ!!」

ジュピターズは全員同じビジュアル。だからテロリストは目についたササラギに襲い掛かり、衝撃波を連射した。とっさに作り出したクウカクで衝撃を和らげて見せると、テロリストは更に怒り出して尾状器官から鎌のような爪を生やした。その直後、クワイオがクウカクを作り出し、見えない壁でテロリストを挟んで押し潰した。

「くそっ」

「捕獲の鉄則」

「おらあ!」

そこに飛び込んでいったのはアロだった。電気爪状態にした尾状器官を思い切りテロリストに突き刺した。

「ぐはあっ」

「大人しくしろ」

〈こちらミスト。ブラグラの車を停止させ、現在幹部の1人と戦闘中〉

〈今着いたぞ〉

〈ミストちゃん私も行きます〉

クワイオによって見えない壁に押しつけられながら、ぐったりしたテロリスト。抵抗もしなくなったのでクウカクが消えると、テロリストは倒れながら人間に戻った。そこにアルタライザーのエテュオンがやってくる。

「テロリストは私達が拘束します」

「頼みます」

追いかければ一目散に逃げるネズミのようにテロリストは散らばった。それが計画的だったのかは分からない。でも程なくして、マスコミは集まった。ジュピターズ、アルタライザーによって制圧されたテロ組織のトップ、ブラグラの前に。

「ようやく終わったか」

「後は軍に任せて、オレ達は撤収するか」

「はい」

その日の夜。ジュピターズは社員食堂にいた。テーブルにはいつものメニューではなく、ホットプレートとスーパーで買ってきた大量の肉が並べられていた。

「それじゃあ乾杯!」

「かんぱーい!」

「お疲れー」

「イエーイ!」

「テロ組織壊滅はジュピターズ最大の功績だ。どんどん食えよー」

すごく良い匂いの焼けた肉を頬張り、ある者はご飯を頬張り、ある者はお酒を喉に流し込む。民間人だからこその宴会。

「いやあ、ネットニュースにずらりだ。ジュピターズ。良い感じだよな。シーザリアンDNA最高だよな」

「でも、アルテミスに協力して貰わなかったら弱いままだったんだよな」

「いいじゃないかよ。社長がそう判断しての事で、それが正解だったんだ」

「イエーイ!みんな!レッサー&オーエンだ!ニュースは見てくれたか?最高だっただろ?」

「今は祝杯を上げてるところだ!紹介するぜ!ジュピターズ!」

「イエーイ!」

とあるテーブル、ササラギとハイロとクワイオはレッサーとオーエンを遠目に見ながら、ゆっくりと夕食を取っていた。

「オレ、コーチの話、断ってきた」

「えっ、何でよ」

「・・・中途半端にはなりたくない。オレはもう、ウパーディセーサだから」

「ほんとそういうとこ頑固だよねえ」

「まぁそこがソウタなんだけどね」

「社長には言ったの?」

「あぁ。さっき。残念がってたけど。でもその代わり、ウパーディセーサとしてこれからしっかり結果を残していく」

「だな。オレさ、ジュピターズになって良かったよ。普通のウパーディセーサじゃなくてさ。個性がバラバラだし、学校みたいに仲良いグループも自然と出来たけど、結局みんな良いチームだよな」

「普通のウパーディセーサじゃ、こういう活動はなかったかもね」

「まぁジュピターズにならなくても、ウパーディセーサにはなってたと思う。でも正直怖くてさ。裏で売られてるウパーディセーサの薬も高いしさ。でも、ジュピターが志願者を募集するって話を聞いて、これだ!って思ってさ。やっぱり仲間っていいなって」

「オージュン、良いこと言うじゃん」

近くのテーブルからそう声が飛んでくれば、クワイオは照れ臭そうに笑顔を返していく。

「これから、どうなるんだろうね、世の中」

暗い表情ではないが、でも唐突にそんな言葉を投げかけてきたハイロに、ササラギとクワイオはふと顔を見合わせる。

「考えても分かんないけどさ、そもそも何で歴史上の人物が生き返ったのかな」

「答えが分かってもどうなる事もないんじゃないか?」

「オレは戦いたいからウパーディセーサになったんだ」

「え?」

また絡んできたと思ったら、近くのテーブルからほろ酔いのシュウズンがやって来る。

「歴史上の人物の蘇りなんて小さい事だ。これからはウパーディセーサの時代だろ?軍も犯罪者もみんなそうだ。オレはただ乗り遅れたくなかっただけだ」

「所属はどこでも良かったの?」

「まぁそれはそうなんだけど、やっぱり企業がお金かけてやってるってのが良いよな。1人でウパーディセーサになって、もし暴走でもしたら終わりだからな。こういうところに乗っかるのが正解だろ」

「それに給料だって出るし」

シュウズンが居たテーブルからロウタがそう言えば、シュウズンは笑って相槌を打つ。

「さすが大企業」

目的も個性も違うけど、大企業にはそういう人達でもまとめられる包容力がある。予算や基盤、その安心感があるから戦えるんだろうと、ササラギは賑やかな宴会を見渡した。それからジュピターズに新しい任務が下された。それは、正体不明のモンスターの討伐だった。どこかの科学者が作り出した失敗作。そんな噂のモンスターは自然災害のように徘徊して、街に傷痕を残していた。

「基本、アルタライザーが前線に立っていくけど、つまりアルタライザーが負けたって事?」

「まぁそういう事なのかな」

「アルタライザーが私達に協力要請した訳じゃないんでしょ?」

「うん、社長の指示」

場所は自然溢れる大きなテーマパーク。そこにササラギ達6人が到着すると、ササラギ達の前に真っ先に向かってきたのはアキレスだった。

「映像は見たか」

「一応。アルタライザーが負けたって」

「負けてない。お前達も気をつけろ。それから、被害は最小限にしろ。これは軍からの指示だ」

「・・・そんなに強いの?」

「・・・死を覚悟した方がいい」

そう言うとアキレスは飛んでいった。とても真剣な眼差しだった。そうササラギはその突き刺さるような深刻さに息を飲んだ。直後、シュウズンとロウタは戸惑いを隠すように笑う。

「ちょっとビビらせようとしてるだけだろ」

「手柄取られたくないからとか」

「みんな、気を引き締めていくぞ」

そうしてササラギ達も飛んでいった。勿論客は避難させられていて誰も居ない。アルタライザーだけで対処していた戦闘の跡が残っていて、それだけでも相手は強敵だと予感させられた。

「あれじゃないか?」

「でかっ」

パッと見、高さ20メートルほどのモンスター。体全体が青カビのような不気味な色に覆われ、微かに白い霧のような光を洩らすドラゴン。不気味な体に不気味な光、それはきっと、人が作ったものじゃない。そうササラギは直感した。

「動きは遅そうだな」

「あぁ。だがアルタライザーが負けたんだ。何かあるんだろ。3人ずつで挟み撃ちするか?」

シュウズンの提案にササラギが頷けば、そしてジュピターズは青カビのドラゴンに向かっていった。アルタライザー達の衝撃波に撃たれながら、ドラゴンはギョロっとササラギ達を見る。その直後、ドラゴンの全身から青カビに覆われた鱗が飛び散った。それは攻撃されたのではなく、ドラゴンの攻撃。まるで竜巻でも起こったように、青カビの鱗はドラゴンの周囲を高速で飛び回り、近付く者全てを襲っていく。

「くそっ近付けない」

「クウカクが、もたない・・・」

「うおぉおおお!!」

アキレスの尾状器官から放たれた、2本のビーム。同時に上空からはリュナークが帯電爆発鱗を撒き散らす。それで大分青カビの鱗は減らせた。そこに超高熱状態のホーン、そして電気爪状態のササラギが双方から突撃していった。

「ガアアア!」

巨体が暴れ出すとホーンとササラギは離れ、相手の出方を見極めていく。それからドラゴンがギョロっと見つめたのは、アキレスだった。直後にドラゴンの全身から洩れる白い霧のような光が線となって周囲に放たれ、その全てが凄まじい爆発を生んだ。レーザーと爆発。そんな攻撃にテーマパークの施設、自然は激しく破壊された。ササラギが気が付いたのは、燃える木の上だった。

「・・・・・く・・・そ」

倒れている事を自覚したと同時に、目の前に倒れているハイロを見つけたササラギがゆっくりと立ち上がる一方、アキレスも意識を取り戻すとすぐに立ち上がり周りを見渡した。この攻撃だ。さっきもこれでやられた。対処法を見出ださないまま、またやられた。そう、アキレスは木を殴った。

「ソウタ!どこだ!」

ウパーディセーサには自己再生能力がある。だからじっとしてれば傷は癒え、ハイロも目を覚ました。

「サンナ!」

「ふう・・・ふう、あいつは」

「ガアアア!」

「ピンピンしてるらしいな」

「居た、ソウタ、大丈夫?」

「もう大分治ってきた」

「シュウズン達は?」

「分かんないけど、多分、大丈夫だと思う。それよりどうしよう。あんなモンスター、数で攻めても無理だよ」

「アルタライザーでも、勝てないんだから、もう、あの人達じゃなきゃ・・・」

そんな時だった、ササラギがふと見知らぬ男を見かけたのは。客の居ないはずのテーマパークだからすぐに目に留まったが、見知らぬ男は恐れる事なくただドラゴンを遠く見上げていた。

「誰だあれ」

「・・・・・来たか」

そうポツリと呟くと見知らぬ男はパッと消えた。

「・・・え」

「ん、何?」

「消えた。見たよな?オージュン」

「見た・・・見ちゃった」

「何なのよ」

「いや、男が居てさ、でも消えたんだ。魔法使いかも知れない」

「・・・それより、私達じゃどうしようもないんだから、早く呼ぼうよ、アルテミス」

読んで頂きありがとうございました。


ケルタニアの登場人物として今回はジュピターズを少し掘り下げました。アルタライザー、ジュピターズ、この2団体がルア達とどう関わっていくのか、注目です。

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