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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「ユテス&エテュオン」後編

5元素だけとは限らない。それに1種類だけとは限らない。実際、岩獣は岩と水の元素を持った生態をしてる。蜘蛛と岩獣とは違った生物だってこれから現れるかも知れない。私達は最初から劣勢。この劣勢だってもっと酷くなる事は十分に予測出来る。

「現在蜘蛛の大群を退けてるのはケルタニアと4ヶ国。隣国同士で協力してる所もあるし、このままいけば第一波は退けられるだろうな」

「第一波・・・そうだよね」

「そういえばさっき、独立自警団アルテミスが来たって」

「あぁ。ホールズ各地で動いてる」

「じゃあ安心だね」

「どうだか」

「え?」

アキレスはあんまりアルテミスに良い印象は持ってないみたい。嫉妬してるのか。

「あいつらが来たから岩獣が生まれた」

「そんな言い方。強い敵が来たからシーザーが抵抗したんでしょ?」

そう言うと、私を見たアキレスは鼻で笑った。

「何かあった?」

ベリクロがそう聞くと、ユテスは困ったように口をつぐむ。

「アルテミスの戦闘力に嫉妬してる」

「おい」

「あー。まぁ分かる気もするけど。でも良い人達なんでしょ?会った事ないけど」

「うん、良い人達だよ?魔法だって教えてくれるんだもん」

「あ、ホーン達帰ってきた。どうだった?」

「シーザー周辺は相変わらずだ。5種の蜘蛛がウジャウジャ。よりシーザーに近い場所では岩獣も居る」

「岩獣の新種は?」

「いや」

「そっか」

それから2日経てば、ホールズに進撃した蜘蛛の大群は殲滅された。結局、アルタライザー部隊は周辺国に援軍として赴く事はなかった。それは決して国が不仲という訳ではなく、それぞれの国がオリジナルの兵器を所有していたり、あるいは独立自警団のような部隊が存在するから。

「緊急事態だ。街に岩獣の群れだ」

「何だと」

デリスが慌ててそう駆け込んでくると、アキレスもユテスもベリクロ達もみんな驚いた。岩獣が急に街に現れるなんて今までなかったから。そもそもそれはやって来たのではなく、街で発生したものかも知れない。

「蜘蛛の大群を撃退したからかな?」

「意思のある抵抗だと思えば、そうだろう」

今回は第1チームと第2チームの合同作戦。そもそもシーザーはケルタニアに居るから、1番この国が被害を受けやすい。把握してる限り、岩獣の群れは15体。発生場所は、狙ったように樹海と街の境目。やはりこれは意思であり、抵抗。

「第2は北と東から。私達は東と南から」

「うん」

都心から西に位置する樹海から来る岩獣たちをなるべく多方向から制圧する作戦でいく。群れはなるべく分散させないのがセオリー。私とユテスとデリスとジグとヴェッジが東から向かう中、私はふと樹海で見かけた見知らぬ人間を見かけた。ビルの屋上から、遠く岩獣を眺めていた。

「デリス達は市民の保護を優先させて」

「あぁ」

逃げてくる人々を眼下に街を飛び、そして捕捉した岩獣の1体に向かって急降下して突撃していく。すでに何人もの倒れている人達が見える。大破してる車もあるし、まるで暴動のように建物も被害を受けている。迅速に殲滅しなければとても危険な状況だ。

「うわ、エテュオン、あれ、違うタイプの岩獣!」

3体の岩獣を倒したところで、ユテスは炎と氷の元素を持った岩獣を確認した。岩のような外殻に覆われながら、炎を吐いて、冷気を周辺に放出させていた。そんな時だった、どこからか悲鳴が聞こえたのは。燃えている民家の中だった。自分を冷気で覆いながら民家に入り、尾状器官から水を噴射させていく。

「速く逃げて!」

民間人を家から逃がす間、岩獣がその家の方にやって来たので衝撃波で応戦していく。それでも足を止める事なく向かってきて炎を吐いてきたので、クウカクの壁を張ってとっさに凌ぐ。更にそこにもう1体の岩獣がやって来て、高く飛び上がった。私はそれをただ見上げる事しか出来なかった。一瞬で巨体が落ちてきて、私はクウカクの壁ごと押し潰された。

「くっ・・・」

目一杯力を込めて尾状器官から地面に向けて衝撃波を吹き出し、クウカクごと岩獣を押し退けた瞬間、浮き上がった岩獣はユテスの尾状器官に捕まり、その場で水蒸気爆発衝撃波に包まれた。

「エテュオン大丈夫?」

「問題無い」

「ゴアアア!」

「オレあっちやる」

「分かった」

ユテスが飛んでいった方とは別の岩獣に向かって衝撃波を放ちながら近付き、飛ばしてきた岩をクウカクで受け流し、そして超低温の強風を生み出して岩獣の動きを封じる。止めを刺したところでユテスもやって来て、2人で最後の1体になった岩獣に向かっていく。吐き出された炎を私がクウカクで受け止めてる間にユテスが上空から攻めていき、水蒸気爆発で攻撃していくが、直後に地面から鋭い氷柱が発生してユテスも私も突き上げられた。

「うぐぅ・・・何だこれ、魔法みたい」

すぐに氷柱から離れるも岩獣は炎を吐いてきて、それはクウカクで受け止めたがまた地面から氷柱が襲ってきた。ユテスが衝撃波を撃ち出して岩獣の気を引いたので、その瞬間に超低温の衝撃波を岩獣の顔に狙い撃つ。そこに更にユテスが水蒸気爆発衝撃波を撃ち出せば岩獣は吹き飛びながらバラバラになって絶命した。

「ふう、びっくりしたね」

「うん」

「みんなも戦ったのかな?・・・ん?」

ふとユテスが見上げた先を見ると、建物から飛び降りて来た人間は何やら岩獣の頭に近付き、ポケットサイズのカメラでそれを撮影した。

「また来たぞ?」

カメラをポケットにしまいながら遠くに顔を向けた人間が見た先にふと顔を向けると、その先には体中に棘を生やし、電気を纏う岩獣が立っていた。

「うわ出た。やっぱりそう来たか。でも何か、雰囲気が違う」

「ゴアウオオオン!」

雄叫びと同時に背中から2本の電気が生まれると、それはヘビのようにしなり、大木のように太くなり、そのまま大きな手となった。その直後、知らない人間はまたポケットからカメラを取り出し、岩獣を撮影した。

「ユテス、最初は様子を見て」

「分かってる」

走り出したと思った直後、岩獣は電気を纏い、まるで宙に浮くように滑らかに飛び上がった。

「うわっ」

一瞬で距離を詰められたユテスが素早く殴られて叩き落とされてしまうと、着地した岩獣にそのまま踏みつけられてしまう。

「ユテス」

超低温の衝撃波を撃ち出した直後、岩獣の背中の電気爪が伸びてきて、電気の衝撃と共に私は吹き飛ばされてしまう。何とか追撃は免れて素早く超低温の衝撃波を撃ち、岩獣を怯ませたがユテスは解放されない。隙を見て突撃して顔を殴りつけたが、それでもこのタイプの岩獣は何かが違うのか反撃を受け、また私は吹き飛ばされてしまう。

「強い・・・。明らかに、知能が違う」

その直後、岩獣の前足に潰されていたユテスから水蒸気爆発が起き、岩獣は大きくよろめく。

「ふう、何とか、脱出・・・」

「下がってて」

「ゴアアア!」

真っ直ぐ睨みつけてくるその迫力を前に、ふと過ったのは最悪の結果だった。このまま1人で応戦しても、勝利は無い。ユテスが回復するまで時間を稼いだとして、2人で勝てる相手とは思えない。するとそんな時だった、空からベリクロとティヒムがやって来て岩獣に衝撃波を放ったのは。

「2人共!他のチームの奴ら、全員こっちに向かってるからな?」

「デリス」

力が湧いてきた。安心と、闘志と勝機が体を突き動かした。最大限に体を硬化させ、最大限のスピードで岩獣に突撃していく。タックルを仕掛けると岩獣は吹き飛ぶが、吹き飛びながらも電気爪を振り回してきて私も吹き飛ばされてしまう。その一瞬、その眼差しには曇りの無い殺意が光っていた。

「エテュオン大丈夫?」

「問題無い」

もしあのままだったら、このままやられていただろう。独立自警団アルテミスに出会わなかったら、リッショウとクウカクがなければ・・・。背後から衝撃波が通り過ぎていく。それはユテスのだった。岩獣を牽制したので、その一瞬の内に私は尾状器官から炎を吹かして飛び上がり、超低温の強風を放った。一瞬で体の感覚を奪う冷気。それでも岩獣は雄叫びを上げた。直後に電気爪から電気が放電されると、それはビームとなって真っ直ぐ私に襲いかかった。とっさにクウカクを作ったものの、そのまま押し込まれて建物に激突してしまう。崩落した建物から飛び出した頃にはユテスが岩獣と戦っていて、縦横無尽に飛び回るユテスでも、電気爪に叩き落とされてしまうと動けなくなってしまった。仲間の窮地。それはまた私の体を突き動かした。

「はあああ!」

最大限のスピードで飛び込んで岩獣の顔をぶん殴り、振り下ろされてきた電気爪を弾き返し、岩獣の首を掴んだ尾状器官から目一杯の冷気を放出する。

「ゴアアア!」

しかし岩獣が体を振り回せば私は振りほどかれ、気が付けば電気爪に捕まれて地面に押し付けられていた。

「ぐ・・・」

純粋に重たい力、そして体中を駆け巡る電気が一瞬で力を奪っていく。全く動けなかった。意識も遠くなってきた。でも、仲間への信頼だけは薄れなかった。

「エテュオン!」

体を引きずられる感覚がして目を開けると、そこにいたのはホーンだった。

「下がってろ」

ユテスの水蒸気爆発、リュナークの爆発鱗、アキレスの強力な衝撃波、それからベリクロたちの攻撃によって岩獣が追い詰められている。その光景だけで、小さな達成感さえ感じた。しかし雄叫びと共に岩獣が全方位に電気をばらまいて宙に浮き出すと、そのまま樹海に逃げていった。

「・・・何なんだあいつは」

アキレスが呟いた。

「強すぎない?」

「ただ元素を操る進化じゃない。知能が全然違うよね」

まだ体が治りきってないところでアキレスが私の下にやってくると、アキレスは頷いた。

「足止め、よく頑張ったな」

「正直、危なかった」

岩獣の群れは何とか迎撃出来た。でも不安要素が残った。それは、あの岩獣。蜘蛛とは明らかに違う進化。元素もそうだけど、知能と戦闘力が進化した個体の出現はケルタニアだけじゃなくホールズを緊張させた。それからまた蜘蛛の群れがやって来た。でもそれは進撃というより、どこか牽制のように思えた。

「周辺国との連携は難しいそうだ。蜘蛛の数も増えて、絶妙なくらい分断されてる」

「私達も常に誰かが出動してないといけない状態だから」

シーザリアン対策モニタールーム。そこはアルタライザー部隊の待機室の隣に出来た、シーザーの怪物“シーザリアン”の対策の為の一室。アキレスと私は、何か常に特大モニターを見上げてないと、ちょっと不安。

「あぁ、このまま少しずつ蜘蛛の数が増えれば、それだけでも国が疲弊していくだろうな」

「ゼーレとは侵略のスピードが違うのになー」

「規模が違うからな。このままだと、支配の前に、国が崩壊する」

「そういえばどうなったかな。ジュピターズ」

「ケルタニアの独立自警団か。まぁ、助かるよね。有志で戦ってくれるって。一般人だからとかさ、もう言ってられないよね」

「ケルタニアの企業と投資家が協力して開発した、ケルタニアン・ウパーディセーサ『ジュピター』、カッコイイよね。あと何人か集まったら、正式に発足されるんでしょ?」

「いやもう集まったらしい」

「そうなんだ」

1体の岩獣と数体の蜘蛛の群れが出たので私とユテスが向かった。そこはシーザーのいる樹海に近い地点だった。輸送車が停まって現場に向かうと、真っ先に見つけたのは蜘蛛の死体だった。

「あれ?もうジュピター?」

「いや、違う」

「ん」

「あの人」

「この前もいた」

その日、その知らない男性はカメラではなく剣を持っていた。ユテスが近付くと、知らない男性は私達には警戒する事はなかった。

「ウパーディセーサ、じゃないね。それは魔法でしょ?じゃあきっと異世界から来たんじゃない?」

「・・・・・お前達には関係無い」

「何で戦ってるの?」

「・・・ただの観察だ」

そう応えると知らない男性は歩き出した。

「何だろうね、あの人」

「ユテスお前、警戒させたな、ハハ」

「だな。ああいう詰め方はないだろ」

「えーっ何だよもー」

数体の蜘蛛を倒した後、二手に分かれて岩獣を捜していた時、私とジグはまた知らない男性を見かけた。その男性は崩壊した民家の前に立ち、手をかざした。すると大量の瓦礫が宙に浮き出し、そこからその家の住人達が逃げてきた。しかし大量の瓦礫を庭に落としても、知らない男性は冷たい表情をしていた。

「ジグ、救急車」

「あぁ」

30代の夫婦と2人の幼い兄弟は一命を取り留めた。4人が無事に救急車に乗せられたところでサンバルからジグに通信が入った。ユテスが炎と氷の岩獣を倒したと。

「ユテス、他に居なかった?」

「うん」

「そう。じゃあ帰投する」

私は何となくあの男が気になっていた。ユテスの言う通り、きっと異世界から者か、或いは、シーザーのような者か。

「へー、あの人、人助けしたんだ」

「あの力は、物を浮かせたり、動かしたりするもので、元素を操るギガスではない可能性が高い」

「剣を作る魔法って、独立自警団アルテミスの人達がやってるよね?関係あるのかな?」

「そうかもな」

輸送車が基地に着いたのでモニタールームに戻ってくると、何だかその場の空気がピリピリしていた。

「アキレス、どうかした?」

「先程、ベリカニアに雷の岩獣が現れたらしい」

「私達は?」

「動かない」

「同じ個体?」

「分からない」

「大丈夫かな。ベリカニアの最前線って民間部隊なんでしょ?」

「中継出てるわよ?」

ティヒムがそう言ったので別のモニターを見ると、マスコミの中継映像で戦況が見れたが、すでに街の被害は凄まじかった。

「戦ってるの、軍隊と、民間部隊かな」

「そうみたいね。でも、全く歯が立たないみたい」

「あ、あの人」

「独立自警団アルテミスのヘルと、確か・・・」

「ロックエル。翼人」

「さすがエテュオン」

「ユテス、ロックエルはこの前会ったでしょ」

「え、あれ?あ、そっか」

フェニックスと呼ばれて人気者になっているヘルの攻撃によって、雷の岩獣は簡単に倒された。すでに民間部隊と出動していた軍隊はほぼ壊滅していた。

「あんな簡単にやっつけちゃうなんて」

独立自警団アルテミスのニュース、シーザリアンの脅威のニュースが報道されて翌日、ケルタニアで再び雷の岩獣が目撃された。

「場所は?」

「樹海から北東方面に向かってる」

すぐに現場に向かうと、雷の岩獣は街を破壊していなかった。広い公園で佇んでいた。そして私達の存在を確認した途端、岩獣は雄叫びを上げた。

「まさかだよね」

「いや、狙いは、俺達だろう」

電気爪を作り出し、立ち上がった岩獣。でも私には不安は無かった。何故なら、第1チームの皆が揃っているから。

「人間組は狙撃支援するから、思い切り暴れていいぞ?」

「分かった」

リュナークとホーンが向かっていくと、岩獣は浮き出して、回りながら電気爪を振り回した。

「隙が無いな」

呟くアキレス。でもその態度は全然怯えていなかった。むしろ闘志を見せてくるように、私に頷いた。確かに雷の岩獣は手強い。でもここで足を止めてはいられない。こいつを倒せば、きっともっと強い者が生まれてくるだろうから。

読んで頂きありがとうございました。


アルタライザーが見かける知らない男は一体何者なのか。動向に注目です。

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