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超能力週間  作者: 安田枝美
2/8

ゲーム1日前

それは新緑が目立つようになってきた五月のある金曜日、いつも通り学校に登校した時のことだった。


靴箱から上履きを取ると、中に小さく折りたたまれた紙が入っていた。若干不審に思いながらも、そっと紙を開く。

「話がある。今日の放課後、教室に残れ。」

差出人が書いてない。字からして男子っぽいけど、字だけで誰か特定出来るほど親しい人はいない。そういえば、教室っていうのは私のクラスの教室でいいのかな?手紙で呼び出しなんて初めてだから、ちょっと戸惑う。でも正直、手紙の指示に従う気はあんまりない。差出人不明なんて怪しすぎる。


と、思っていたのに、放課後になり、結局私は教室に残ることになってしまっている。たまたま今日、私が日番で、担任の先生に教室の戸締りを頼まれてしまったからだ。まったく、ついてないと思う。

あの手紙がいたずらじゃないなら、差出人は教室に最後まで残るか、他のクラスから入ってくることになる。一体誰なんだろう。今日一日ずっと考えてたけど、そんな心当たりはあるはずもなく、結局今も誰かわからない。

少しずつ、教室から人が出ていく。だんだんと教室にいる人数が少なくなっていく。

_____そして残り一人になった。私以外に、一人男子が残っている。

草壁真人くさかべまさと。茶色混じりの短髪に、モデルのように小さい顔。目も大きくて、全体的に顔立ちが整っている。

クラスであまり目立つ存在ではないけど、その容姿から、女子からは結構人気があるらしい。

その彼がなぜ、今ここに残っているのか、私にはわからない。まさか、草壁くんがあの手紙の差出人なのかな。 


前から、私はなんとなく草壁くんのことが気になっていた。といっても、それは恋愛的なものではない。

なんというか、彼が近づいてくると、胸のあたりがざわざわする。もう一度言うけど、恋愛的なものではない。ドキドキとか、そういうのじゃなくて、なんていっていいかわからないけど、胸の奥がかき乱されるような感じ。彼は何か他の人とは違う気がする。とにかく、言葉にはできないけど、私の草壁くんに対するイメージはそんな感じだ。


だから、今こうして教室で二人きりでいる時も、私はずっと胸がざわざわしている。そうしている間に、草壁くんが近づいてくる。なんか、緊張する。ついに草壁くんが話しかけてきた。

「こんな日に日番とか、ついてないよな。」

「ああ・・・うん、そうだね」

あ、今考えればこれ初会話かも。

「まあ、俺的には都合良かったけど。あんな手紙で残ってくれるとは思ってなかったし。」

「え?あれ、草壁くんが・・・?」

「そうだけど。この状態になっても気付かなかったのか?」

「いや・・・」

草壁くんだったのか。私の勘はあてにならない。

「で、本題だけど」

そうだ、草壁くんがあの手紙を書いたってことは、私に何か用があるってことだ。

何だろ?全く思いつかない。

「お前、超能力者だろ。」

・・・え?何言ってんのこいつ。

いや、当たってるんだけど、なんで草壁くんがそれを知ってるの?どこでばれたんだろ。

でも、認めるわけにはいかないかな。他の人に言いふらされたら私の学校生活は終わりだ。

ここは、とぼけるのが一番だ。

「え?いきなり何言ってるの草壁くん」

「実は俺もだよ」

・・・は?ほんとに何言ってんのこいつ・・・

「そんな冗談言うためにわざわざ・・・えっ?」

私は目を疑う。重力がなくなったみたいに、教室の机といすが全部宙に浮いている。

何これ・・・まさかこれ、草壁くんがやってる?

「信じてもらえるかな?」

あっけにとられている私に、草壁くんがにやりと笑いながら言う。

すると、浮いていた机といすがふっと音もなく元の位置に置かれた。

「俺は物を動かす超能力を持ってるんだ。さっきみたいに、大体の物は自由に動かせるよ。人体は無理なんだけど。お前も俺と同じじゃないにしろ、何かの超能力を持ってるんだろ?」

「なんで・・・それを・・・」

言ってしまった。この発言はもう自分は超能力者だと認めてしまっている。草壁くんは、待ってましたとばかりに説明を始める。

「このクラスになってから、不思議な現象がよく起きるようになった。誰かが階段から落ちそうになったとき、一瞬意識が消えて気がつくとそいつはその場に座り込んでいたり、授業中誰かが落とした筆箱が気がつくと机に置かれていたり。そして、それらが起こった時、全て近くにお前がいた。だから、この現象はお前が関係あるんじゃないかと考えた。」

たしかに、その通りだ。私の能力はおどろいたり危険を感じたら勝手に発動するから、日常生活の中でも時間を止めてしまうことは多い。そして、私は時間を止めてから状況を変えてしまう。なんだかそのまま放っておくのは気が引けるから。階段から誰かが落ちそうだった時には、その人を座らせて落ちないようにしたし、筆箱が落ちたときには全部拾って机に戻した。時間が止まっている間は私しか動けないし、時間をもう一度動かした時には、何もなかったことになるから、まさかそれでばれるとは思ってなかった。

「そこで俺はこの前一つの実験をした。お前の目の前で、わざと花瓶を落とした。すると、たしかに落としたはずの花瓶が気がつくと手元に返ってきていた。そしてそのあと、お前がいない状態で花瓶を落とすと、あっけなく割れた。こうして俺はお前が超能力者だという確信をもった。花瓶を割ったことによって、担任の説教を食らったけどな。」

ああ、あの花瓶、先生のお気に入りだったからなぁ・・・私たち1年2組の担任、岡本雅美おかもとまさみは花を愛する現国教師だ。そのお気に入りの花瓶を割ったのだから、お説教は地獄絵図だっただろう。

そういえばあの花瓶を落とした男子は草壁くんだったか。それがわざとだとは夢にも思ってなかったけど。

これはもう言い逃れできない。認めるしかない。さよなら私の平和な学校生活・・・

「すごいね。その通りだよ。私は時間を止める超能力を持ってるの。」

草壁くんは意外そうな顔をした。

「へえ、すごいな。時間を止める能力は超能力者の中でも選ばれた人しか使えないって聞いたことある。何か能力を持ってるとは思ってたけど、そんなにすごい能力だとは正直思ってなかった」

「別にこんなの使えたって意味ないよ」

「そんなことないって!他の人は持ってないものをもってるんだぜ?それってすごいじゃん」

「なんでそんなに興奮してるの・・・とにかく私はこんな能力持っててもうれしくないの」

すると突然草壁くんは何か思いついたような顔になった。

「そうだ。せっかくこうして同じクラスに超能力者が二人もいるんだしさ、ゲームしようぜ。」

・・・ゲーム?この人、私の話を聞いてなかったの?

「何を言い出すの?私は超能力なんて・・・」

「来週一週間、俺が学校内で能力を使って物を動かすから、浅倉は時間を止める能力を使って俺が動かした物を元に戻す。簡単だろ?」

「ちょっと、そんなの私は絶対しないって・・・聞いてる?」

草壁くんはもうさっさと帰る用意をしている。

「じゃあ月曜からよろしく。楽しみにしてるよ」

「ちょっと待ってよ」

私の声を聞こえないふりして草壁くんは教室を出ていってしまった。

ありえない。私は絶対そんなゲームはしない。


ここから、私の学校生活は少しずつ変わっていくことになった。ありえないような一週間が、訪れようとしていた。





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