05
気づけば僕は大きなドラゴンの姿になったようだ。
しかしでかい。
<竜化>Lv1ならもっと小さくてもいいんじゃないだろうか。
これでMasterまでいくとどれだけ大きなドラゴンに変身してしまうのか、ちょっと怖いところだ。
そんなことを考えつつ、クロハの姿を探す。
森近くの木に視線を向けると、木の下でペタンと座り込んで驚いた表情のまま固まっている小さなクロハがいた。
―<<えっと…ごめんクロハ、驚かせちゃって。…大丈夫か?>>―
あまりにも驚かせてしまったようなので心配になって声をかける
しかしクロハは反応がなかった。
―<<あれ?おーいクロハ?>>―
この時クロハは自分が何か話しかけられてるのだろうとは思ったものの、ミツキの言葉が理解できず困惑していた。
さらに、ミツキが予想以上に大きなドラゴンになったことと、咆哮によって驚いて気が動転してしまいどうすればいいのか混乱してしまったのだ。
―<<ん…?ひょっとして言葉が通じてないのかな?>>―
もしやと思い、もう一度話しかけるも反応は変わらなかった。
さてどうやって伝えればいいのか思案、そして閃く。
文字を書けば伝わるはずだ。
ならば早速と、指で地面に文字を書くが、ドラゴンになった自分の手は大きく、小さく文字を書くのが非常に難しく、クロハが読めないサイズになった。
ならば、出来るか分からないけども不安な手で行こう。
ダメだったらまた別の手を考えよう。
僕はのっしのっしとクロハに少し近づく。
少し歩いてみて分かったのだけれど、人化のときより体のバランスが安定しているようだった。
ゆっくりと近づかれたクロハはビクっと体を硬直させて、またもや驚いてしまっていた。
言葉が通じないので、内心でごめんと謝りながらクロハの近くに左手の掌を開いて地面に下ろし、右手の指で掌をトントンと叩いた。
意図が伝わったのだろう、クロハは自分を指差し、そして僕の掌に指差した。
僕は頷くと、クロハは数回深呼吸をして立ち上がり、恐る恐る僕の左手掌に近づき、掌の上に乗った。
それを確認し終わると、クロハを落としてしまわないよう注意しながらゆっくりと、左手を持ち上げる。
どうやら問題なく人を持ち上げたりできるだけの筋力はあるようだ。
左手を持ち上げる最中、クロハが僕の掌に座り込んで必死に指にしがみ付いてる姿をみて、さらに内心謝罪。――ほんっっっとごめん。
左手を僕の顔近くまで持ち上げて、もう一度右手で地面に文字を書いてクロハに地面を見るようにジェスチャーをした。
恐る恐ると、クロハは指の隙間からゆっくりと地面を覗き込み、驚いた。
『だいじょうぶ?』
そう書かれた文字をみて、胸を撫で下ろしたようで掌の上から体を僕の顔のほうに向けて少し声を出した。
「はい、大丈夫です!すいません、とても驚いてしまって…」
そう謝るクロハに僕は気にするなと首を横に振り、地面にも文字を書く。
その書かれた文字を見て意思疎通ができてるとわかったクロハは喜んでいた。
さらに僕は驚かせてしまった事に対しての謝罪の言葉を地面に書き、それを見たクロハは首を横に振り、にっこりと微笑んだ。
「いいえ、私もまさかこれほど大きなドラゴンに変身するとは思いませんでしたので。それにミツキ姉さんが使ってた言語でしょうか?私には分かりませんでした」
確かに僕もここまで大きなドラゴンになるとは思わなかった。
それに、やはり言葉が通じていなかったようだ。
そうなるとドラゴンになると言葉が<竜言語>になってるようなので、言葉を理解するほうもスキルが必要なのだろう。
僕はその事を地面に書き、クロハもその文字をみて頷いて納得していた。
そんなやり取りをしつつ暫く談笑する二人。
その光景は他の人から見ると、ペタンと座り込んだドラゴンが掌にエルフを乗せ、地面に文字を書いて会話をするという微笑ましい光景だったのだが、その光景を見る者は誰もいない。
何故なら、ミツキが最初に叫んだ言葉が最初の街やその近辺にも聞こえ、皆街に避難をして門を緊急閉鎖するという緊急事態を招いていたのであった。
もちろんそんなことは、二人は知る由もない。
僕はドラゴンになったついでに、色々と実験をしておこうと考えた。
<竜化>スキルの説明には、ステータス上昇と書かれていたのだが、スキルのほうはどうなのか試したくなったのだ。
ただ、クロハをこのまま掌に乗せた状態で実験すべきか、一度降ろすか少し考える。
とりあえず本人の意思はどうなのだろうと思ったので伝える。
このままよければスキル実験をしてくれていいと承諾してくれた。
まあ試すと言っても<飛行>と<息吹>の2つなのだけれども。
<飛行>を試すと伝えてから、片手じゃ不安なので両手でクロハを包みこむようにして、安定の確認。
準備が出来たので僕は背中の翼に集中する。
初めて試したときよりもよりスムーズに翼を動かし、そして体が浮き始めた。
ぐんぐん高度があがり、さっきまで居た場所が小さく見え出す。
体感高度30メートルぐらいだろうか、そのぐらいの高さまで高度が上がるとスキルが足りないせいか、これ以上はあがらないようだった。
そのまま滞空して、クロハの様子を確認すると、とても目を輝かせていた。
「うわぁ……すごい、すごいです!こんなに高く飛べるだなんて!始まりの街があんなに小さいですよ!」
どうやら大はしゃぎのようだった。
ならばさらにサービスしようと思い、体を前に少し倒して翼をはたかせて前進をしたり、体を斜めに傾けてゆっくりと旋回する。
「こんな初日から、しかも空を飛べるだなんて!ミツキ姉さんさすがですよ!」
クロハのテンションが鰻上りでなおも上昇中。
でもこれ僕がスゴイわけじゃないよね。
ある程度飛んでると、ふとMP消費はどんなもんなのかと思い出してMP残量をみると残り3割近くになっていた。
どうやらドラゴンの姿になると消費MP速度も速くなるようだ。
僕はMPがなくなる前に、最初にいた森林付近まで戻り、高度を下げて降りたつことにした。




