始まりのひとこま
misstakeです。
なるべく頑張って行きたいと思います。
「〜♪〜♪〜♪」
とある町のなんのへんてつもない民家の一室。
そこに彼は居た。
とても陽気に鼻歌を歌っている。
もう少ししたら踊り出しそうな程の浮かれ具合だった。
少年は箱を開けた。
中に入っていたのは、側頭部に「翼」のレリーフの刻まれた黒色のヘルメット。
目の部分には、薄い水色のアイシールドが付いている。
少年はそれを頭に被り、ベッドに寝転ぶ。
「ダイブ!」
少年は目を閉じた。
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accesscode:xxxxxxx
dive:incompleted
ver:【1.000】
name:unknown new.player
【welcome to new world!!】
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《ようこそ!私達の世界へ!》
その声と共に俺は目を開けた。
「うわぁ…やっぱりスゲー。」
自分が「ココ」に来て、最初に吐いた言葉は、そんなありきたりなモノだった。
―モンスターズ・オンライン
それがこのセカイの名前。
いわゆる、VRMMO という分類のゲーム。
今までいろんな人達が夢想しながらも成し得なかった、ゲーマーにとっては夢のゲーム!
さらに自分は、ゲームを発売前にプレイする権利を持った、いわゆるベータテスター。
そのベータテストも昨日で終了した。
今日からは自分も最初からのスタート。
このゲームでは、いわゆる「モンスター」になって、敵を倒す(一応敵もモンスター)ゲーム。
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《種族を選択してください。》
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「あー……何にしようかな?」
目の前に表示された種族一覧をざっと見て行く。
パネルの左側に種族名、右側にグラフィックと特徴が写し出されているみたいだ。
俺は、ベータ版では防御の高いゴーレムとして戦っていた。ただし、難点が一つ。
「痛いんだよなー盾役って。」
そう、攻撃を喰らうとその分の痛みが帰ってくる。
まぁ、VRMMOらしく、幾分か軽減された痛みではあるようだけど。痛いものは痛いのです!
――え?もやしっ子?事実そうだし。無問題。
「うん。今回はちょっと変わったキャラクターにしようか。」
上部にある検索ウインドウに『トリッキー』と入力し。
「検索、っと。」
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【[KEY WORD] トリッキー| 】
hit:3件
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「三件か。どれにしようかなー…。」のんびりとしたペースで種族の説明を読んで行く。
「ってヤバい!時間制限!」
時間制限。それは、ゆるーりと種族を決めたいプレイヤーの天敵。
あれだよ、格ゲーとかで初見のヤツで「どれにすっかなー」ってやってるとやってくる強敵だよ!
「なんかあと60秒しか無いんだけど!?――あーもう仕方ない、一番上の奴で!」
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―種族は『マミー』でよろしいですか?―
[yes]/[no]
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「はいyes!時間制限マジいらないよー!運営マジで氏ね!」
あとで運営に文句を言ってやる、と意気込む。
『―続けてスキルを選んで下さい―』
「はい?………本当に!?うわ運営マジ神ありがとうございます!」
凄い態度の変えかただなぁと自分でも思うけど。
一度でもRPGをやった事のある人なら、今の俺の気持ちをわかってもらえると思う。
だってスキルだよスキル!
しかも好きな奴って……チート確定(°∀°)キター!!ってなもんですよ。
とはいえ、そんなに強いのは選べないだろうけど。
ゲームバランス崩壊しちゃうし。
…そんな微妙に冷めた事を言いつつも頭のなかではチートが出来ないかと猛孝中な訳で。
「うーん、戦闘スキル取ってもいいんだけど、戦闘ばっかりだと偏るんだよね……。
よし!目指せオールラウンドキャラ!って感じにしようかな。」
概ねの方針が決まったところでスキルを取る。
まずは、生産系のスキルをとる事にした。
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『[武器生産]を取得しました。』
『[防具生産]を取得しました。』
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システム音声が流れる。
続けて、基礎攻撃スキルの確認。
これは、種族がもとから取得しているスキルの事。
勿論、種族によって異なるスキルを持っている。
「さってと。何があるのかな?」
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スキル一覧:
[治療]
[包帯マスタリー]
[包丁適性]
[凶刃乱舞]
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「……ってなにコノ不遇スキルの塊!?」
まずは包帯マスタリー。
前のスキル[治療]に関わると思える。
けど(・・)4つ目のスキル[凶刃乱舞]。このスキルは、少しでもHPの減ったキャラを通常の3.5倍の威力で攻撃するというモノ。
なんだ強いじゃん。とか考えたそこのあなた!そう、貴方ですよ!(誰!?)
これはあくまでも、キャラへの(・・・・・)攻撃。
要するに、敵味方、悪意の有る無し関係無しに必殺級の一撃(追い討ちとも言う)をぶち込むというゴミスキル認定確定済みの一つ。
ベータテスト初期、治療が必要なキャラに近づいて、凶刃系のスキルを発動、相手を四散させるPKが乱発した。
それ以来、凶刃系スキル持ちはほとんどのパーティで冷遇される事となる。
続けて[包丁適性]。
少なくとも俺は、ベータ期間中はこんなスキルを目にしたことはない。
………料理でもしろと!?
「まぁ……仕方ない、かな。」
そう諦めたかの様に呟き。粛々とスキルを選ぶ。
その背中には哀愁が漂っていた。
Ψ
「よし。こんな感じかな。」
数分後。自分でも納得の行くスキル構成ができたので、完了ボタンを押した。
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『最後にプレイヤーネームを入力して下さい』
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プレイヤーネームか……何にしようか。
―――うん。決めた。
[李音]。
それが、この世界の俺の名前。
Ψ
さて。
他のゲームとかだと、自分でキャラの体格や顔立ちを決めることができるのだけど。
この『モンスターズオンライン』では、それらが制限されている。
なんでも、あまりにも現実とかけ離れた容姿にすると、生活環境に色々な弊害が出てくるのだそうだ。
つまり、このゲームでは、所謂ネカマという事が不可能なのである。
解説乙。とでも言いなさいな。
さて、何が言いたいのかというと。
「なんで俺のアバターは女子なんだあぁああああ―――!!!!」
――定番?なにそれおいしいの?どんな味?
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player:李音
sex:female
[status]
ATK:5
DEF:8
DEX:6
TEC:7
SPD:8
LUC:9
[装備]
頭:古ぼけた包帯
胸:サラシ
腰:サラシ
足:
アクセ:古ぼけたマント
武器:拾った包丁
skill :
[治療] [包帯マスタリー][包丁適性][凶刃乱舞][武器製作][防具製作][スピードバッシュ][念力][ランアップ]
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