第83話 ニーナ、ミル、リンカの大ピンチ! サイファーの策略
「ニーナ。君はここで大人しくしておくんだ。俺たちが行ってくる」
アランは言った。
「でも……」
ニーナは何かを言いたげな表情でアランを見た。
「安心してくれ、せっかく君たちに助けてもらった命だ。粗末にしたりはしない」
アランは言った。
「じゃあね、お姉ちゃん。行ってくる」
「わかった。ビビエル、アラン。気をつけて」
ビビエルとアランはニーナのその言葉に黙って頷くと拠点を出ていった。
「なんだかアランからすごいエネルギーを感じる。これもオーブの力なのかな」
ビビエルは言った。
「おそらくそうだろう。そのオーブはあらゆるエネルギーを司る力を持っている。そんな能力があっても不思議じゃない」
「まあ、俺たちはエネルギーの塊みたいなもんだからな。ビンビン感じてくれよ〜。なあ、アラン!」
熊がアランの体から出てきて言った。
「コラ熊! 勝手に出てくるな! 後でしっかり人間を満喫させてやるから、今は大人しくしといてくれ!」
アランが言った。
「お前だけは悪魔って呼んでくれると思ったのに……。いいな? 絶対だぞ? ピザとか食わせろよ!?」
熊はそう言ってアランの体の中に戻った。
「ピザは熊でも食べられるだろう……」
アランはそんな事をボヤキながらサイファーのいる場所へと向かった。
「変だなあ。全然動かない。こんな場所でじっとして何してるんだろう」
ビビエルがサイファーの位置を表示した端末を見ながら言った。
「行ってみればわかるさ」
アランはそう言って先へと進んでいく。
2人はしばらく歩いてようやくサイファーのいる場所の近くまで来た。
城から少し離れたセントラルシティの繁華街だが車通りは一切無く、がらんとした高層ビルが立ち並んでいる。
「やっぱりおかしいよ。この辺りに居るはずなのに……」
ビビエルは言った。
「なんだ? 壊れてるんじゃないのか? これだから機械っていうのは信用ならないんだ」
「そんなはずはないけど……」
ビビエルはそう言いながらしばらく端末を操作して原因を探った。
するとあることが分かった。
「アラン!! 私達、逆探知されてる!! 私が付けた発信機がバレたんだ!!」
「なんだと!?」
「すぐにお姉ちゃんに連絡しないと!!」
ビビエルはそう言って慌ててニーナに連絡を取った。
「お姉ちゃん? 今すぐそこから逃げて!」
ビビエルは電話口に向かって叫んだ。
「どうして?」
ニーナが聞いた。
「サイファーがそっちに向かってるかもしれない!! 私達も急いで戻るからお姉ちゃんたちは早く逃げて!」
「分かった。確認する」
ニーナはそう言って監視カメラの映像を確認した。
すると確かにサイファーが彼女たちの拠点へと近づいてきていた。
「サイファーはこっちに来てる。大丈夫。私が何とかする」
ニーナはそう言って電話を切った。
「アラン、すぐに戻るよ」
ビビエルはそう言って2人は急いで拠点に向かって走り始めた。
お願い……。みんな無事でいて。
ビビエルは心の中で呟いた。
「ど、どうするの?」
ミルがニーナ聞いた。
「はっきり言って大丈夫じゃない。もうサイファーはすぐそこまで来てる。私たちにはリンカを運ぶほどの時間がない」
「リンカちゃんが逃げられないなら、私はここに残るよ」
ミルは言った。
「それはダメ」
ニーナは言う。
「でもどうするの? ニーナちゃんは足を怪我してるし……。そうだ! 私がそのベルトで高速移動してみんなを逃がすのはどう~?」
「それもできない。このベルトは私専用に調整してある。他の人が使えば体の負担が大きすぎる」
「それでも、みんなを守れるならやるよ!」
ミルが言ったがニーナは止めた。
「ダメ。私が時間を稼ぐ。あなた達は早く逃げて」
ニーナはそう言いながら立ち上がった。
「そんな足で戦えるわけないよ! やめて」
そんな2人が言い争っていると、リンカが治療ポッドから出てきて2人の元へと近づいて来た。
「リンカちゃん、なにやってるの! ポッドに入ってなきゃだめだよ!」
ミルが言ったがリンカは聞かなかった。
「2人とも、ごめんね。私のせいで………」
リンカは言った。
「リンカのせいじゃない」
「そうだよ! だからまだ寝てて」
2人はそう言ったがリンカは首を振った。
「ううん。狙われてるのは私が持ってるオーブなんだよ。だから、ここで犠牲になるのは……私だけで十分……。ごめんね」
リンカはそう言って2人の後頭部を強打すると彼女たちを一瞬で気絶させた。
「ほんとにごめんね。私は負けたくないから。私の負けは、みんなを失う事……だから……」
彼女はそう言って体中の痛みを耐えながら、フラフラの足取りで外へと出ていった。
通りにはサイファーの部下が数人居たが、リンカは彼らに目もくれず真っ直ぐサイファーの元へと向かって行った。
「木崎リンカ………。自分から出てくるとはいい度胸だ。だがお前が死んでいなかったとはな」
サイファーは言った。
「あなたが欲しいのは私でしょ?」
「よく分かってるな。お前がオーブの力を持っているのは調査済みだ。しかし驚いた。お前はオーブの力を丸ごと飲み込んでも死ななかった」
「私はオーブと相性がいいんです」
リンカは言った。
「だが前にもお前は俺に負けた。そんな体で俺に勝てると思ったか?」
「それでも……。私は負けられないから」
リンカはそう言って拳を握った。
彼女を赤いオーラが包み込む。
「うおおおおおおおっ!!」
彼女は歯を食いしばりサイファーに向かって走っていった。
だが彼女はサイファーを殴る直前に全身に激痛が走り倒れてしまう。
「おいおいおい……。勘弁してくれ。俺はまだ何もしてないぞ? お前はもっと骨のあるやつだと思っていたがな」
サイファーはリンカを掴み上げた。
「お前ももうおしまいだな」
サイファーはそう言って杖を捨てるとリンカの腹を思い切り殴った。
「っ…………!!!!」
「お前を倒すには杖など要らない。これで十分だ」
彼はそう言ってリンカを上に放り投げると彼女のことを蹴り飛ばした。
リンカはあまりのダメージに倒れたまま動くことすらできなくなっていた。
サイファーはそんなリンカに近づいて杖を向けた。
「お前のオーブは俺が貰った。俺の……勝ちだ」
サイファーは言った。
「ううん。私はみんなを一時的でも守れた。だから……私の勝ち」
「これのどこが勝ちだ!! さっさとくたばれェ!!!!」
サイファーはそう叫びながらリンカに向かってオーブの力を放った。
リンカはそのまま息絶え、彼女の体からオーブのエネルギーが漏れ出てきた。
サイファーが手をかざすと彼の手の上にエネルギーが集まりオーブの形となった。
そして彼はそのままそのオーブを自分の杖にはめ込んだ。
「これで……2つ目っ!!!! 残るはあと1つだ!!!! ビビエル・イェール……。待っていろ」
サイファーはリンカを残したままその場を去って行った。
リンカに気絶させられていたニーナとミルはしばらくしてから気が付いた。
「り、リンカちゃん!!」
ミルは気が付いてすぐにそう叫ぶとそのまま外へと飛び出して行った。
彼女は倒れたリンカを見つけると、すぐに近寄って何度も名前を呼んだ。
「リンカちゃん!! リンカちゃん!!」
だがリンカが彼女の声に答えることはない。
送れてやって来たニーナもリンカの傍に寄った。
「まだかすかだけど生きてる。ミル、ポッドまで運べる?」
「わ、分かった!」
ミルはそのままリンカを抱え拠点まで戻ると、リンカをポッドの中に戻した。
「リンカちゃんは、どうなるの?」
ミルが恐る恐るニーナに聞いた。
「一応ポッドがあれば延命はできる。でもこれ以上回復する期待はあまり持てない。ポッドがなければすぐに死んでしまうくらい危険な状態……」
「そんな……リンカちゃん……」
ミルは目に涙を浮かべてリンカの事を見た。
「もしかすると彼女をこのまま生かし続けるのは苦しめるだけになるかもしれない。とにかく判断は彼女の親族である丸地ハヤトを見つけてから。それまでは……」
そんな事を話すニーナだったが、ミルは突然立ち上がるとどこかへ出かける準備を始めた。
「どこに行くの?」
ニーナが聞いた。
「私、戦ってくる。エリオちゃんも殺されて、リンカちゃんまで……。もう私我慢できない」
ミルはそう言って机にあったニーナのベルトを手に取るとそれを自分の腰に付けた。
「ダメ。あなたがそれを使ったら……」
ニーナはそう言ったが、ミルは迷わずベルトを起動させた。
「アクティベート」
ミルのその言葉と共に彼女は電撃に包まれた。
無事に変身は完了したが、ニーナは不安そうな表情でミルを見つめていた。
「行っちゃダメ」
ニーナはそう言ったがミルは首を振った。
「私、行ってくる」
彼女はそう言うとそのまま一瞬で消えてしまった。




