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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第三章 王国
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第73話 記憶の世界の冒険

 だがアダムはしばらくすると立ち上がって呟いた。


「俺は……俺は……諦めない……。リトを……蘇らせるんだ」


 彼はそう言って背中に剣を背負った。


 そしてそのまま走り出してこの家の門から飛び出した。


「あんなに急いでどこに行くんだ?」


 アダムをずっと陰で見ていたアランは突然飛び出していくアダムを急いで追いかけた。


 彼らはホワイト家の門を出て森の中をしばらく走った。


「ちょ、ちょっとスピード落としてくれよ~!」


 アランがそんな悪態をつきながら走っていると、突然目の間に人影が現れた。


「おわっ!!」


 アランはぶつからないようにと急に避けたことで足が絡まってその場に倒れてしまう。


「いたたた……」


 アランはそのまま顔を上げると目の前に悪戯な笑顔で彼を見つめる少年が立っていた。


「君、いきなり危ないだろっ!」


 アランがそう叫びながら立ち上がると彼はその少年の正体に気づいた。


 そこに居たのはリトだった。


「なんで君がここに? 君は死んだはずでは?」


「う~ん。そう思ったんだけどね、気付いたらここに居たんだ」


「おかしいな。この世界の登場人物は皆アダムの記憶に乗っ取って動いているはずだが?」


 アランは言った。


「そんなの知らないよ~。でもあなたのことは知ってるよ? アラン・ブラックウォール。お兄ちゃんが殺したい人でしょ?」


「待て待て。君がそんな事を知っているのは絶対におかしい……。君はただの登場人物だ。アニメのキャラクターが急に画面の外にいる自分に向かって話しかけてきたらおかしいだろう? それと同じだよ。キャラクターは決められたセリフしか喋れないんだ」


「そんな事言ったって実際にこうやって僕と会話してるじゃない」


「いや待てよ。ここは彼の記憶の中の世界だ。1人だけ僕に話しかけてきてもおかしくない人物がいる……。もしかすると君はリトではなく、彼自身の一部分じゃないか?」


「彼って?」


「アダムだ。そうだ、君はアダムだ。恐らく君は彼が自分の中にずっと閉じ込めていた、彼の良心の部分だな? そうであればこれは期待できるぞ」


「期待ってなにが~?」


「君を外の世界に出すことができれば彼に良心が戻って世界が救われるってことだ! さあ行くぞ! 彼を見失ってしまうとここから二度と出られなくなる」


 そう言ってアランはリトと共にアダムを追って走り始めた。


 彼らは草木の生い茂る森を抜けてアウトサイドの街に出た。


 一面に屋台が立ち並ぶその通りの奥にアダムは居た。


 アダムは通りの外れにある薄暗い路地裏で誰かと話している。


 その様子をアランとリトは陰からこっそり見守った。


「あの壁の中から彼の意識を取り出すのは至難の業だ。あれは人間が大好物でな、一度食べたらなかなか離してはくれない。だが、絶対に不可能という訳ではない」


 アダムと話していた男が言った。


「じゃあどうやれば……。どうやればいいんだ!!」


 アダムは男に掴みかかった。


「まあまあ落ち着け。フラグメントオーブという魔術品を知っているか? この世で最も強力なエネルギーを持つ品の1つだ。それを3つ揃えることが出来ればあのブラックウォールのエネルギーをも凌駕して自在に操れるほどの力を手に入れられるという」


「何!? 本当か?」


「ああ、本当だとも。だが簡単じゃない」


 その男はアダムに手を出し握手を求めた。


「俺の名はサイファー。俺がオーブを集める手伝いをしてくれないか? そうすればお前の弟を蘇らせてやろう」


「サイファー……!!」


 アランは思わず叫んでしまう。


 アダムはサイファーの手を取り、2人は握手をした。


 すると突然辺りの街並みが一気に変わり、彼らは高層ビルに囲まれたセントラルシティに移動していた。


「アダムはどこに行った!?」


 アランは必死に周りを探すがアダムの姿は見当たらない。


「あそこ見て!!」


 リトが指をさした方向に彼は居た。


 アダムは透明化して道行く人を容赦なく殺していた。


「あいつ、いつの間に透明人間になったんだ!?」


「自力で習得したんだ……」


 リトが言った。


「何故君が知ってる? やっぱり君は彼の一部だな?」


 2人はどこかへ向かって進んでいくアダムを急いで追いかけた。


 アダムは進みながら人を襲っていき、人間の魂を集めていた。


 アダムの近くまでたどり着いた2人は物陰に隠れて彼の様子を見ていた。


 リトはアダムが人を殺すのを見るのが辛いようで、時折目を背けた。


 だがアダムが殺しを辞める事はない。


 リトは思わずアダムの方へと飛び出して行きそうになったが、そんな彼をアランは止めた。


「今ここで君が彼を止めても何の意味もない。あれはただの記憶の一部だ。実際に起きた事実は変わらない」


「でも……。でも……」


「今は我慢しろ。君がこの世界から出ることが一番大事だ」


 アランはそう言ったが、リトは首を振った。


 そしてリトはそのまま飛び出して行ってしまった。


「もうやめて!! お兄ちゃん!!」


 リトは見かねて思わず叫んでしまった。


「おいバカ!!」


 アランがリトを引っ張って引き戻すも、アダムには気づかれてしまったようで彼はゆっくりアランたちの元へと向かってきた。


 行き止まりの狭い路地裏に入ってしまったせいで出ていくこともできず、彼らは息を潜めてアダムが去るのを待った。


 その足音はゆっくり確実に近づいてくる。


「くそ……ここまでか……」


 アランは鉄パイプを拾い上げて戦いの準備をした。


 だが近づいて来た足音は突然聞こえなくなった。


「な、なんだ?」


 しばらく待ってもアダムは現れないのでアランは思い切って路地裏から表に出た。


 やはりそこにはアダムは居なかった。


「あんなところに!!」


 アランは遠くに見えるビルの中に入っていくアダムを見つけた。


 記憶の世界からの出口は必ずアダムの近くに現れる。


 つまり彼を見失ってしまうともう2度と外に出ることはできないのだ。


「行くぞ!」


 アランはリトの腕を引いてアダムの入っていったビルに向かう。


 だがその時、突然聞きなれない轟音が遠くから聞こえてきた。


「今度はなんだ!?」


「あ、あれ……」


 リトが指をさした方向を見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。


「嘘だろ……」


 おびただしい数の自動車が彼らの元へと迫ってきていたのだ。


 それはビルよりも高く積み上がり、まるで雪崩のようにビルとビルの隙間を縫って流れ込んできていた。


 その自動車の雪崩に飲み込まれると彼らは一溜りもないだろう。


「ど、どうしましょう」


「何言ってるんだ!! こんな時は逃げるしかない!!」


 アランはそう言って走り始めた。


 リトもその後を追いかける。


「でも! お兄ちゃんを見失ったらまずいんじゃ?」


 リトは走りながら聞いた。


「そんなの分かってるけど、しょうがないだろ!!!!」


 アランはそう叫びながら走り続けた。


「いいや……ちょっと待てよ……」


 アランは突然足を止めた。


「な、なにやってるんですか! 死んじゃいますよ!」


 リトはもう目の前にまで迫ってきている雪崩を見て叫んだ。


「これはアダムの記憶の世界だ。彼があんな車の雪崩を起こすことができたのなら、君も何かを出せるはずだ」


「ど、どういうことですか?」


「だから言ってるだろう? 君は彼の一部だ。だったらここは君の記憶の世界でもあるってことだ! 何か出してくれ! 早く!」


「そ、そんなこと急に言われても~!」


「とにかく何か想像するんだ! 何か巨大なものだ! ロケットランチャーでも何でもいい!」


 リトは戸惑いながらも必死に何か解決策になりそうなものを考えた。


「う~ん……う~ん……」


 すると突然彼らの目の前に巨大な物体が降ってきた。


「な、なんだ!?」


 彼らの元に降ってきたのはなんと巨大な磁石だった。


「磁石!? 君はどんな想像力してるんだ! だいたいなんで磁石なのにスイッチが付いてるんだ!」


「な、何でもいいって言ったから……!」


「もうこうなったら仕方ない……。やるぞ!!」


 アランはそう言ってその磁石に付いていた巨大な起動スイッチを押した。


 するとその瞬間、彼らの元へ迫ってきていた自動車は反対方向へ吹き飛んだ。


 おびただしい数の自動車がまるで花火のように大きく空に広がって遠くへ飛んでいった。


「や、やった!!」


「なんでこれでうまくいったんだ……?」


 アランは納得いかない様子だ。


「さ、急ごう!」


 リトがそう言って2人はアダムが向かったはずのビルへと向かった。


 ビルの中は見たこともないような構造をしていた。


 まず入ってすぐ目の前に巨大な穴が開いていた。


 足の踏み場は十数センチしかなく、一歩間違えれば真っ逆さまだ。


「気をつけろ」


 アランはそんな事を言いながら壁伝いに進んでいく。


 そして彼らの真上には果てしなく高い螺旋階段が伸びていた。


 だがそこにアダムの姿はない。


 2人はその階段が続く先を見た。


「あれは……出口だ!」


 アランは階段の先の最上階にある緑色の扉を見てそう言った。


「なんで出口ってわかるんですか?」


「知らないのか? 出口は緑色って昔から決まってるんだよ」


 だがその階段に登るには、部屋の奥まで進んだ後宙に浮いている階段に飛び移らなければならない。


 失敗すれば奈落の底だ。


 彼らは慎重に進んでようやく階段の前までたどり着いた。


 彼らが立っている場所から階段の位置まで約1メートル。


 普通だったら簡単に飛び移ることができる幅だが、今は足場が狭すぎる。


 彼らはなかなか飛び移る勇気が出なかった。

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