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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第三章 王国
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第71話 ブラックウォールの秘密

 アダムはすぐに着替えて父親の書斎へと向かった。 


「おお、待ってたぞ。アダム。お前に大事な話があるんだ」


 彼はそう言ってアダムを出迎えた。


「話とは何でしょうか?」


 アダムが聞いた。


「大事な大事な話だ。この家と君の将来にまつわるね。アダム、お前は私の職業が何か知っているな?」


「はい。会社の経営者です」


「その通りだ。だが、それは私のほんの一部でしかない。私は会社の経営者である以前にこのホワイト家の主なんだ。わかるな?」


「はい」


「いいか、ホワイト家の主である事は君が思っている以上に大きな事を意味する」


「どういうことですか?」


「お前は長男だろう? いずれ私の役目を継ぐことになる。だからホワイト家の長男として課せられる使命をそろそろ君に伝えておこうと思ったんだよ」


「使命ですか?」


「ホワイト家は伝統ある名家だ。今この国を取り囲んでいるブラックウォールが誕生する以前から代々続いてきた。記録によると、我々の直系の先祖に当たる人間がブラックウォールの誕生に関わっている」


「本当ですか……?」


 アダムは驚いた表情を見せた。


「本当だとも。その誕生の経緯についてはよく知らされていないが、我々ホワイト家はブラックウォールに関する秘密を代々受け継ぎ守り抜いて来たんだ」


「それは……どんな秘密ですか?」


「来たまえ」


 アダムの父親は窓際まで行き、いつも閉じてある雨戸を開いた。


 その窓の先は家の裏庭だ。


 この家の裏にはすぐ近くにブラックウォールがそびえ立っている為、アダムは一度も近づいたことがない。


 その為、アダムはその時初めて裏庭の光景を見た。


「あ、あれは……」


 目の前にそびえ立つ巨大な黒壁。


 だがその表面にはおぞましい表情をした巨大な顔が浮かび上がっていたのだ。


「あれがブラックウォールの本体だ」


「本体……?」


「ブラックウォールはあの暗黒エネルギーの肉体に意思を宿している。つまり生きているんだ。あらゆる生物を取り込みながらどんどん成長をしているがあの本体が全てを制御している」


「そんな……」


「さらに恐ろしい話がある。あれがこの世に存在しているたった1つの目的は何だと思う?」


「わ、分かりません……」


 アダムはその巨大な顔の恐ろしさに圧倒されて答えが出なかった。


「人類を1人残らず殺すことだ」


「な、何故……。では我々もいずれあれに食われる運命なんですか?」


「心配することはない。この国は魔法の力で守られているからあれがこちら側に入ってくることは基本的にはない」


「基本的には?」


「そう。まだお前に言っていないもう1つの秘密があるんだが……。まあこれはまた今度にしよう。一度に話すと刺激が強すぎるからな」


 そう言って父親は雨戸を閉めた。


 アダムはまだ考えの整理がつかないようでぼうっとしていた。


「いいか、アダム。これが我々ホワイト家が代々守ってきた秘密だ。そしてお前もこれから守っていかなければならない秘密だ。分かるな?」


「は、はい……」


「まあ、そう心配するな。最初は刺激が強いがすぐに慣れる」


「そうですね……」


 アダムは自分の胸に手を当てて上を向いて気持ちを落ち着かせた。


 すると壁に飾ってある額縁が気になった。


 そこに描かれていたのはホワイト系の家紋であるひし形の模様だった。


 アダムはリトの事を思い出した。


 彼の首元にも同じ模様が刻まれていたからだ。


「あの、1つ聞いてもいいですか」


「なんだ? なんでも聞いてくれ」


「俺に兄弟や従妹っていますか?」


 そう聞いたアダムに父親は一瞬だけ驚いた表情をしたが、またいつもの表情に戻って答えた。


「いないぞ。お前はうちの1人息子で長男だ」


「そうですか……。分かりました」


「どうしてそんなことを聞くんだ?」


 アダムはそう聞かれると、しばらく考えてから答えた。


「…………夢を見たんです。俺に弟がいる夢を」


「そうか……」


 アダムはそのまましばらく家紋を見つめながら黙り込んだ。


「そ、そうだ。良いものがあるんだ。お前に見せてやろう」


 父親はそう言って巨大な箱を持ってくると机の上に置いた。


「何ですか? これは」


「見たら驚くぞ」


 父親はその箱を開けて中身をアダムに見せた。


 そこに入っていたのは巨大な剣だった。


「見てろよ?」


 父親はそう言って剣を握るとその剣は青白い光に包まれて輝きだした。


「どうだ? 美しいだろう? これは魔剣グラって言ってな、人間の魂を吸い取ることができるといわれている。この世に7本しかない魔剣の1つだ。高かったんだぞ?」


「どうしてこんなものを?」


「ああ、この輝きに一目惚れしてしまってね。こんな平和な世の中だからな、使いどころはないだろうが書斎に飾ろうと思ってな」


「そうですか……」


 アダムはそう言って剣を眺めていると突然執事が部屋に入ってきた。


「アダム様。お勉強のお時間でございます」


「ああ、もうそんな時間か。アダム。話はもういいから、行ってもいいぞ」


 父親は言った。


「では、失礼します」


 アダムはそう言ってそのまま書斎を後にした。


 そして翌日。


 あれだけ振っていた雨は綺麗に上がり、その日はこれ以上ないほどの快晴となった。


 アダムはまたいつものように稽古を始めようと家の前の庭に出た。


 だがあれだけ毎日時間通りに来ていたリトがその日は居なかった。


「リト……」


 アダムは剣を下ろし、稽古を始めずにベンチでリトの事を待った。


 だがやはりリトはいつまでも来なかった。


 草の擦れる音がする度にアダムは振り向いてリトの存在を確かめるが、誰もいない。


 そしてそんなことを繰り返しながら1時間、また1時間と時間が過ぎていき、とうとう父親が帰ってくる時間になった。


 リトはもう来ないのかとアダムは落胆した。


「そんな所で何をやってるんだ? あんまり勉強をサボるなよ」


 帰ってきた父親はベンチにじっと座っているアダムに向かってそんな事を言ってそのまま家に入っていった。


 執事と共に家に入っていく父親を見たアダムは、ふと彼が帰って来た後いつも何をしているのかが気になった。


 彼はもう1つ話していない秘密があると言っていた。


 そこにリトの秘密が隠されているのではないかとアダムは思った。

チキンナゲットはやっぱりバーベキューソースが一番だね

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