第66話 アダムは最後のオーブを見つける
アランは飛行機の中に乗り移ってニーナからゴーグルを受け取った。
「アラン」
ニーナはアランにゴーグルを渡しながら言った。
「なんだ?」
「ごめんなさい」
ニーナはアランの目を見て謝った。
「学園でシナプスが崩壊した時、あなたは一緒に戦おうと誘ってくれた。でも私には勇気がなかった。そしてビビエルの安全を優先してあなたとの約束を破った。今思えばあの選択は間違ってたと思う」
「いいんじゃないか? 結局は今の所アンナの脅威はなくなった。まあ別の脅威が出てきたわけだが」
「許してくれる?」
「許すも何も過ぎたことだ。僕は過去はできるだけ振り返らない主義だ。そして今僕は君に大きな借りができた。だったらもう僕たちは仲間だろう?」
アランは座席の上で立ち上がりながら言った。
「仲間……」
アランは羽根の上に立ってゴーグルをはめた。
「アラン」
ニーナが言った。
彼女は立ち上がってアランの手を取った。
「がんばって」
アランは一瞬だけ笑顔を見せるとゴーグルでアダムの位置を探した。
「あそこだ!!」
彼はそう言って飛行中のアダムに向かって水のムチを伸ばして巻きつけた。
「まるで蜘蛛男って所だな。それはちょっとまずいか」
アダムはそのままムチに捕まってアダムの元まで近づいていった。
「なんだ!?」
突然ムチを巻きつけられたアダムは動揺して身動きが取れずにいた。
「残念だがもう君の姿を見失うことはない。僕の優秀な友人が助けに来てくれたんだね」
アランはそう言いながら一気にアダムに近づくと、彼に掴まったままエネルギー波を浴びせた。
「うわっ!!」
アダムはそのまま高度を下げていき、そんな彼に掴まっているアランも一緒に落ちた。
アランはそのままアダムに向かって追撃を食らわせるがアダムはなんとか防御し、そのまま一気に上空まで上がった。
「俺にはお前と遊んでいる暇はない」
アダムはそう言ってアランのムチを剣で切り裂いた。
「ああそうかい。でも僕は君と遊びたいね」
アランはそう言いながら落ちていくが、全く別の方向にムチを伸ばした。
「やっぱり魔術師は箒で飛ばないとな」
アランはそう言ってムチで掴んだ箒を引っ張ってきてそのまま跨った。
するとアダムはついにアランの前に姿を表した。
現れた彼は身長が2メートル近くあるかなり大柄の男で背中に巨大な剣を背負っていた。
「ようやくお披露目か?」
「もうお前相手に姿を隠していても意味がない」
アダムは箒なしで宙に浮きながら音も立てずアランに近づいてくる。
「ようやく正々堂々と対決ってわけか?」
アランがそう言うとアダムは無言で手のひらを突き出した。
「俺は争い事が嫌いだ。正々堂々となど戦うつもりはない」
彼はそのまま手から魔力エネルギーを放出すると、そのエネルギーはアランの横を通り過ぎて後ろに向かって飛んでいった。
「なんだ!?」
アランが後ろを振り向くと、そこにはニーナが乗っている飛行機があった。
飛行機はアダムの攻撃で大破すると、そのまま地面に向かって落ちていく。
「く、くそっ!!」
アランは急いでニーナの元へと向かおうとしたが、ニーナからの通信が入った。
「来ないで」
「来ないでって、君は落ちてるんだぞ!!」
アランは怒ったがニーナは冷静に返した。
「この程度なら自分で対処できる。あなたはあなたの戦いに集中して」
ニーナはそう言いながら飛行機から飛び降りてパラシュートを開いた。
「負けないで」
ニーナはパラシュートで地面に落ちていきながら呟いた。
「オーブが見つかったのか? 飛行艇の中……。分かった。すぐに向かう」
アダムはそう言ってアランを残したまま飛び立ってしまった。
「くそっ!! オーブを奪われてたまるか!」
アランはそう叫んでアダムの後を追う。
2人はしばらく飛んでいるとついに王様の飛行艇を発見した。
「近くで見ると馬鹿でかいなあ」
先にアダムが辿り着きその機体の上に乗ると、持っていた剣を機体に突き刺した。
「そうはさせない!」
アランはそう言って水のムチを2本伸ばすと、アダムの両腕を拘束した。
「邪魔をするな」
アダムは突き刺さった剣を抜いて拘束をすぐに解いた。
そしてアランの方を振り返ったがそこにアランはいなかった。
「油断したな!」
アダムは突然後ろから飛んできたアランに蹴飛ばされて飛行艇から落ちる。
だがすぐに空中に止まって飛行艇に戻ろうとした。
しかし気づくとアランによって両手両足を拘束されており、身動きが取れなくなった。
「なにっ!?」
飛行艇は彼らを置いて進んでいき、かなり距離を取られてしまった。
「なぜ俺の邪魔をする? お前には彼らを助ける義理などないはずだ。それとも正義のヒーロー気取りなのか?」
アダムが言った。
「何言ってるんだ? 気取ってるんじゃない。正義のヒーローなんだよ」
アランはそのままアダムを自分の元へと引き寄せて勢いのまま殴った。
アダムは殴り飛ばされたがすぐに体勢を立て直すと一言言った。
「調子に乗るな」
彼はそのままアランに向かって飛んでいき、頭突きで彼を箒から突き落とした。
「うあっ!!」
そしてアダムはアランの箒を掴むと、魔力を注ぎ込んで燃やしてしまった。
アランはそのまま地面に落ちてしまう。
「まだまだ。僕は諦めないぞ」
彼は走りながら遥か上空を飛ぶ飛行艇を追いかけた。
アランを追い払ったアダムは邪魔されることなく飛行艇までたどり着く。
そして彼は剣で飛行艇の天井を切り裂いて中へと入った。
光線銃を持った警備員がアダムに襲いかかるが、彼は再び透明になると襲ってきた警備員全員を一瞬で殺してしまった。
そしてもう一度姿を表すと扉を蹴飛ばして、客室へと入る。
そこには王子のトーマス、王妃のマーガレット、王のジョセフがいた。
だがすぐに4人の側近が出てきて行く手を阻まれる。その隙に王達は奥の部屋へと逃げた。
彼らは手に魔力エネルギーを集めながらアダムに近づいてきた。
「俺たちはその辺の兵士たちとは違う。そう簡単に倒せるかな?」
近づいてきた側近が言ったが、アダムは再び姿を消す。
「何っ!?」
側近達は見当違いの方向に攻撃を放ち、その間にアダムによって心臓を貫かれて死んだ。
アダムはそのまま無言で奥の部屋へと進み、王達の元へ辿り着いた。
彼は姿を表して剣を王に向けた。
「オーブを出せ」
彼は一言そう言った。
「おい、お前。王様に逆らったらどうなるか分かってるんだろうな?」
トーマスが横から言った。
「やめろトーマス」
王は止めるがトーマスは口を閉じない。
「お前などすぐに処刑してやる。国民全員の前でだ」
トーマスがそう言うと、アダムは突然トーマスの首を掴んで投げ飛ばした。
「残念だが俺はお前達を殺せない。それがサイファーの命令だ。だが、苦しめることはできる。お前達がオーブを出さないのならば言うことを聞くまで身体中切り刻んでもいい」
アダムは言った。
「オーブは、一番安全な場所に隠してある。もし見つかったとしてもそれを使って私に危害を加えることは絶対にできない」
「早く場所を言え。この飛行機の中にあることは分かっている」
「まだわからないか?」
王は立ち上がって言った。
「オーブは私自身だ」
王は突然手のひらをアダムに向かって突き出すと、オーブのエネルギーでアダムを吹き飛ばした。
「お前は私を殺せないんだろう。だったらどうやってもオーブは手に入らない。諦めるんだな」




