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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第三章 王国
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第65話 ニーナとアランの約束

 ニーナはそのまま廊下を進んで部屋に入ると後から追いかけてくる者達から身を隠した。


 そして彼女は部屋の壁に爆弾で穴を開けると部屋伝いに格納庫への道を進んで行った。


 外は慌ただしく人が動いており、出ていけば確実に見つかるだろう。


 その為ニーナは部屋に入るたびに小型バーナーで扉を焼くことで扉が開かないように細工をしていった。


 そうして彼女はついに格納庫までたどり着く。


 格納庫は薄暗く不気味な程に広い。その中には何台もの飛行機が並んでいた。


 ニーナは止めてあった飛行機内の1台に近づいて、ドライバーで鍵を開けようと試みた。


 ニーナが苦戦してしばらく作業を続けていると、突然部屋の明かりが付いた。


 ニーナは飛行機の下に隠れ、大勢の人間が格納庫の中に入ってきた。

 

「ここに隠れてるんだろう? ニーナ・イェール。この部屋は完全に封鎖した。どこにも逃げられやしない」


 男がそう言いながら部屋の中を回っていく。


 部屋の中には数十人の人間が入ってきて流石のニーナも太刀打ちできそうにない。


「おい、どこだ? 出てこいよ」


 彼らは止めてある飛行機を順に調べながら回っていく。


 ニーナの元にもいずれたどり着くだろう。


 ニーナは必死に扉を開けて飛行機の中に入って隠れた。


 彼らは1台2台と順にニーナの元へと近づいてくる。


 ニーナは飛行機の中でなんとかエンジンを起動させようと試みたが、なかなかうまくいかない。


 そんなことをしているとすぐ目の前まで男が迫ってきた。


「お〜い。隠れてたってどうせ見つかるんだ。これだけの人数に囲まれてるんだぞ? 逃げられやしない」


 男はそんなことを言いながら近づいてくる。


 ニーナは必死にエンジンスイッチの配線を手繰り寄せる。


「な〜にしてるのかな、お嬢ちゃん」


 ニーナはとうとう男に見つかってしまう。


 男は飛行機の扉を開けてニーナをつまみ出した。


「侵入者を捕まえたぞ〜!」


 男はそう叫んで周りの人間に知らせた。


 ニーナは腕を掴まれ銃を奪われた。


 ニーナの周りにぞろぞろと人間が集まってくる。


「さあてお前をどうしてやろうかな」


 男はにやけながら言った。


「私はあなたみたいな小物には負けない」


 ニーナは小さな声で呟いた。


「なんだって? もう一度言ってみろ!」


 男がそう叫んだ瞬間、突然目の前の飛行機のエンジンが起動してゆっくりと進み始めた。


「な、なんだ!?」


 皆は驚いて後退りをする。

 

 その瞬間ニーナは隙をついて男の腕を振り払うと飛行機に向かって走り出した。


 大勢から銃弾が撃ち込まれる中、ニーナは走りながら飛行機に飛び乗った。


 そして扉を閉めるとそのまま格納庫の出口の坂を駆け上がって城の外へ出た。


「わ、わあ!? なんだ!?」


 猛スピードで走ってくるニーナの飛行機を見て道ゆく人間は皆避けていく。


 ニーナの乗った機体は城の前を数10メートル走行した後にそのまま離陸した。


「待っててアラン」


 ニーナは手に持ったゴーグルを見つめながら言った。


 彼女はそう言いながらアランとの約束を思い出していた。


 そう、あれはまだニーナがアンナの元にいた頃……。


    ◇


 当時アンナによって集められた子供達は、スパイ技能、機械技術、魔術の3つのコースに分けられてそれぞれの技能を訓練されていた。


 ニーナはその中でももっとも危険と言われていたスパイ技能の訓練を受け、度々怪我をしていた。


 ニーナは休憩室で怪我の手当をしていると、ビビエルが心配そうな目をして近づいてきた。


「お姉ちゃん、大丈夫なの?」


「私の心配はいい。好きでやってるから」


 ニーナはビビエルにいつもそっけない態度で接していた。


 そんなニーナにビビエルは少し腹を立てた。


「なんで? 私には魔術をやらせてくれなかったのに自分は好きなことやってるんだ」


 ビビエルの元には同じチームの仲間達が近づいてきて彼女はその仲間達とわいわい声を上げながらどこかへ行ってしまった。


 ニーナは怒ったビビエルに対しても表情を変えずに1人で黙々と治療を続けた。


「君は嘘つきだね」


 そんなニーナの元にアランが近づいて来て言った。


「どうして」


 ニーナが聞いた。


「積極的に危険な道を選ぼうとする人間などどこにもいない。どうせアンナと取引でもしたんだろう? 例えば、妹を機械技術に行かせる代わりにに自分がスパイ技能のコースに入るとかだな。自分を犠牲にして妹を守るとは、なんていい姉なんだ」


「あなたには関係ない」


 ニーナはそう言ってアランの元を去ろうとしたが、アランが行く手を阻む。


「そうカッカするなって。僕は君の妹を思う気持ちに感動したんだよ。僕にも妹がいるからね。君は妹を守る為によく頑張ってるよ。でも、1つ思ったんだ。君が妹を守るのなら、君自身を守るのは誰なんだ? 今回は怪我だけで済んだかもしれないが、次は死ぬかもしれないぞ」


 ニーナはしばらく黙ったが口を開いた。


「自分の身は自分で守るから」


「いいや、僕が君を守ろう」


 アランがニーナに手を差し伸べたが、ニーナはアランを見つめたまま手は取らない。


「そんなこと、頼んでない」


「君は何か勘違いしていないか? これは君の大好きな取引だ。君も僕もお互い妹を守るので精一杯だろ? だったら互いに協力しようじゃないかってことだ。僕が君を守るから、君は僕のことを守って欲しいとそういうことだ」


「あなたは……信用できる?」


 ニーナは疑いの目でアランを見た。


「僕を誰だと思ってるんだ? アラン・ブラックウォールだぞ」


 アランはそう言ってもう一度ニーナに手を差し出してきた。


 彼のその目にはアンナに対する底知れぬ怒りが垣間見えた。


 その目を見てニーナは思わずアランの手を取ってしまった。


「よし。約束だ。ちゃんと覚えてろよ?」


 アランは笑顔で言った。


    ◇

 

 ニーナはしばらく飛行機を飛ばし、雲に近いかなりの上空まで来ていた。


 レーダーによると、王様が乗っている飛行艇に次第に近づいていた。


 恐らくこの辺りにアランはいるのだろう。


 ニーナは雨の降る中、目を凝らして辺りを見回した。


 すると雲の中から何かが出てくるのが見えた。


 人間だ。


 ニーナは飛行機の速度を上げてその人影に近づく。


 近づいて分かったが、落ちてきているのはアランだった。


「アランっ……!」


 ニーナはさらに機体を加速させてアランの元へと飛んでいった。


 だが雲の中から現れたもう1人の透明な何かがアランを突き飛ばして彼の落ちる軌道を変えてしまった。


 ニーナは急いで旋回して方向を変える。


 彼女は飛行機の中で屋根を数回蹴ると、そのまま屋根を蹴り飛ばした。


 剥がれた屋根は吹き飛んでいって機内に雨が振り込んだ。


 ニーナは操縦席の上に立ち上がり、拳銃を構えた。


 そしてアランに近づく透明人間に向かって銃弾を放った。


 銃弾は直撃し、アダムはアランを諦めて雲の上へと戻っていく。


 ニーナは急いで操縦桿を握り直し、アランの元へ近づいた。


 次第に風が強くなったことでアランはどんどん遠くへ引き離されていく。


 それでもニーナは諦めずに加速を続けた。


「間に合ってっ……」


 ニーナはそう呟いてぎゅっと操縦桿を握りしめた。


 彼女は思い切り飛行機を前傾に倒して高度を一気に下げる。


 このままいけば正面のビルにぶつかってしまう。


「う、うわああああっ!!」


 アランはギリギリのところで機体の羽根に捕まってなんとか落下を防いだ。


 そしてアランをキャッチした瞬間ニーナは一気に高度を上げて、ビルの屋上に機体を擦りながらも衝突を避けるのに成功した。


「運転が荒いなあ。もっとソフトにキャッチしてくれよ」


 アランは文句を言いながらも笑っていた。


「よかった。約束、守れた」


 ニーナも珍しく笑ってそう言った。

げんまんってなんだろう

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