第45話 アラン vs アンナ 因縁の対決。アランがんばれ~。みんなで観戦。
「そんな事はない。弟子が師匠を倒す話なんて世の中にはいくらでもある。むしろその方がストーリーとしては美しいだろ?」
アランは言った。
「ふんっ。だがいくら粋がろうとお前の負けだ。お前はあたしを倒すためにこんな巨大な魔法陣を用意したようだが、見ての通り未完成だ!! お前達はこのままあたしに殺されるんだよ。全員まとめてな!!」
「そうだ。僕はお前のそういう所に目を付けたんだ」
「どういうことだ……?」
「お前は実に人間だ。確かにお前の持っている力は人間離れしている。だがお前の中身は人間そのものだ。そうは思わないか?」
「あたしは人間を捨てたんだよ。とっくの昔にな。だから躊躇なくお前達を殺せる」
「いいや、違うな。確かにお前には共感能力というものが欠けている。だがその芯にはしっかり人間が残ってる。だからお前は僕の罠にはまったんだ」
「罠だと!? そんなハッタリを!! ふざけるな!!」
「お前には人間ごときには絶対に負けないという異常なまでの自信がある。だからわざわざ魔法陣に近づいて僕たちを貶した。それがお前の敗因だ」
「どういうことだ? 今のあたしのどこに負ける要素があるって言うんだ! 言ってみろ!!」
「そこまで言うなら教えてやろう。君はこの魔法陣を未完成だと思っているようだが、残念ながらこの魔法陣は未完成ではない。これで完成なんだよ」
アランがそう言って魔法陣に手を着くと、その巨大な魔法陣が光を放ち始めた。
「みんな離れるんだ!」
アランに言われた通り、海賊団の面々は魔法陣の外に出た。
「僕は幼い頃からずっと君を見てきた。そうやって気づいたんだよ。君の弱点を」
アンナは魔法陣が放つ光に包まれて身動きを封じられてしまった。
「今日この時の為に僕はずっと準備を続けてきたんだ! お前を倒して、クリスを……。いや、クリスだけじゃない。この国の全員を救う!!」
アランはアンナに向かって魔力エネルギーを放った。
アンナは身動きが取れないままダメージを受ける。
そしてそのままアランに何度も殴られた。
魔法陣が放つ強いエネルギーは光の結界を形成して、もう誰も中に入れなくなってしまった。
「お兄ちゃん……」
皆はもう外から2人の戦いを見ることしかできないようだ。
「あたしが、お前なんかに負けるわけがない……」
「残念だがお前の負けだ!! アンナ。君の力は全て封じた」
「そんなことが……。そんなことがあってたまるかアアアアアアアアアア!!!!」
アンナは力を振り絞って光の翼を背中から出した。
「まさか……。魔法陣の力を打ち破るとは……。それでもお前の力は相当制限されているはずだ!」
アランはアンナに殴りかかったが、止められてしまう。
2人は距離を取り、エネルギー波を放ってそれがぶつかった。
「あたしが人間ごときに……人間ごときに負けるわけがないんだっ……」
「そういう傲慢な考えだから足元救われたんだ。君が粋がる程に僕たちに勝ち目が出てくる」
アランがもう一方の手で魔力エネルギーを放つと、それがアンナに直撃した。
「ち……チクショオオオオオオオオオオオ!!!!」
アンナは倒れながらもアランの足を掴むが、アランに蹴り飛ばされた。
そしてアランはアンナの首を掴んで地面に押し付けるともう一方の手で彼女の顔面を殴り始めた。
「僕は……僕は、お前を殺すために……。お前を殺すこの瞬間をずっと待っていた!!」
「ま……待て……。話し合おうじゃないか、お前の欲しいものはなんだ、なんでもくれてやる」
アンナはそう言ったがアンナは殴る手を止めなかった。
「僕の家族を、僕の人生を、そしてクリスやビビエル、ニーナの人生を奪ったお前を僕は絶対に許さない。お前だけは……お前だけは!!」
怒り狂うアランの姿を見てクリスは動揺していた。
兄のそんな姿を見たことがなかったクリスは思わず叫んだ。
「も、もうやめて! お兄ちゃん!!」
アランはその言葉を聞いて手を止めた。
「クリス? どうしてだ? こいつを殺さないとどうなるか分かってるだろう?」
「そうだけど……。でも……」
「いいや。お前の兄貴のが正しい。クリス、誰かを守るってのはこういうもんなんだ。目を背けるな。しっかり見とけ」
ロンドがクリスに言った。
「そんな……」
アランは再びアンナに殴りかかったが、アンナがアランの拳を止めた。
「フッフッフ……。ハッハッハッハ……」
「何がおもしろい!!」
「いいや。やっぱりお前はあたしの弟子だなと思ってな」
「なんだと!?」
「いいか、お前はあたしの弟子で、そして息子なんだ。その事実からは逃れられない」
「僕の母親はお前なんかじゃない!! 僕の母親はジェーン・ブラックウォールだ!!!!」
アランはアンナに殴りかかろうとしたが、アンナが放ったエネルギー波に吹き飛ばされてしまった。
アンナはゆっくりと空中に浮かび上がって言った。
「いいや。お前を育てたのは確かにあたしだ。あたしはお前の育ての親だ。だがお前には今までこの顔しか見せてこなかったな。育ての親の本当の顔を知りたいだろう? だから今日は特別に会わせてやるよ。本当のあたしにな」
アンナはそう言うと口を大きく開いた。
彼女の口の中からは白く光り輝く何かが出てくる。
口から出たその光は蛇のように這い出ると、下へ向かって伸びていき、だんだんと人の形に変わっていった。
しばらくして光が収まってくると、その正体がはっきりと見えた。
「お前が……アンナ」
アンナは髪が長く背の高い女性で、ジェーンに非常によく似ていた。
そしてその姿はリンカが前世の記憶の中で見た黒壁アンナという自分にそっくりだった。
「どういうこと……?」
リンカが呟いた。
抜け殻になったジェーンの体はアンナと管でつながったまま、空中に浮かんでいる。
アンナはその状態のまま、アランの元へと近づいていった。
「お前の姿は母さんが乗っ取られるときに一度だけ見た。だが、こんなにはっきりと見るのは初めてだ……」
アランが言った。
「もちろんさ。こんなにはっきりと見せることはほとんどない。これまで見せた事のある人間はこの世界に1人もいないな。何故だかわかるか?」
「……」
アランは答えない。
「何故なら、この姿を見せた人間は全員死んだからだ」
アンナはアランに向かって猛スピードで襲い掛かってきた。
アランは殴られ、その勢いで宙に浮いた。
そのまま身動きが取れないうちにアンナのエネルギー波を浴びせられた。
「ぐあっ……!!!!」
「残念だがこの状態のあたしに勝てる奴なんていない。人間としての制限が全て解除されたんだ!! ハッハァ~!!」
アンナは暴走してアランを攻撃し続けた。
そしてアンナの放った強力なエネルギー波で魔法陣によって作り上げられた結界も破壊されてしまう。
結界が壊れた瞬間アンナは6本の腕を伸ばしてロンド達やリンカ、ミルを掴み上げた。
そして最後にダメージを受けて弱ったアランを捕まえた。
結局全員がアンナに掴まって吊るし上げられた状態になってしまった。
「なかなかいい景色だな。誰から殺してやろうか……」
アンナは捕まえた全員を眺めながら言った。
「お、おい! ピッカーが一番おいしいぞ! 最近太ったらしいからな!!」
フォックスが言った。
「バカ!! 俺は不味い! 寝不足だからな!!」
ピッカーが言い返した。
「うるさい!! まあ、最初からあたしの獲物は決まってたさ……」
アランは息を呑んだ。
だが、アンナに選ばれたのはリンカだった。
リンカはアンナの前にゆっくりと降ろされた。
「お、おい!! なんで僕じゃないんだ! 僕ともう一度戦え!! お前にとって一番脅威なのは僕だろう!?」
アランが叫んだ。
「いいや。違うね。さっき戦って分かった。お前などあたしの敵じゃない。だからあたしにとって最も脅威なのは……木崎リンカ、お前だ!!」
「私……? なんで?」
「なんででもいい。お前は理由を知ることなく死ぬ」
アンナは右手を突き出してリンカに向かってエネルギー波を放った。
「うああああああっ!!」
リンカは身動きが取れないままその攻撃を直に受けた。




