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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第二章 学園
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第22話 図書館にあった謎の本、東京観光スポット特集! カラオケ行きたいな~

 リンカは真っ直ぐ廊下を進み、アーチ型のゲートを抜けると図書館の中心部に出た。


 その部屋は天井が高く開けており、壁は円形だ。本棚が壁一面に設置され、まさに360度本棚に囲まれている。


 そんな広い図書館だが人の気配は無く、空中を逆さまで飛び回って本を読むアランの姿しか見られなかった。


 リンカは部屋の隅で見つけた掃除用具入れから箒を取り出し、さっそく掃除を始めた。


 かなり長い間掃除がされておらず、本棚の上はもちろんの事、机の上にまで埃が溜まっていた。


「でも、どうしてこんなに埃が溜まってるんですかー? 掃除をする人って私以外にいないんですかね?」


 リンカは上にいるアランに向かって聞いてみた。


「うるさいぞ。僕の邪魔をするなと言ったろ? 次話しかけたら出て行ってもらうぞ」


 アランは本を読みながらリンカの方を見ずに言った。


「もう……。ちょっと聞いただけなのに……」


 これ以上アランを刺激しないよう、リンカはしばらく黙って掃除を続けた。


 すると、とある本棚に違和感を感じた。その本棚に並んでいる本は他の場所に並んでいるものと比べて明らかに古びている。さらには、どれも魔術に関係しない本ばかりだった。


「必見、東京観光スポット……? 一体何の本なんだろう……」


 リンカは目に留まったボロボロの観光案内本を手に取った。


 その本の中にはアウトサイドでもセントラルシティでもない、リンカが見たこともない場所が写真で紹介されていた。


「な……なにこれ……」


「お、おい!! その本はダメだ! ってもう読んでるな……」


 アランはリンカがその本を読んでいるのを見つけ、ようやく宙に浮かんだ椅子から降りてリンカの横に立った。


「い、一体これは何なんでしょうか……? トウキョーって一体どこの話なんですか?」


「それはもう二百年以上前に書かれた本だ。つまりは~、そうだな~……」


「もしかして……! 絶版ってことですか?」


「全然違う!! いや、違くはないか……。君はブラックウォールはもちろん知ってるだろ?」


「はい。何度か近くまで行った事もありますっ」


「その本はブラックウォールが出現する以前に書かれた。その本だけじゃない、この辺りの棚にあるのはほとんどがそうだ。ここまで古い本が揃ってるのは恐らくこの国ではここだけだろうな」


 アランが誇らしげに言った。


「ブラックウォールができる前……。じゃあ、ブラックウォールが出来る前はこんな場所があったってことなんですか!?」


「まあそうだな。それはそれは良い世界だったぞ……。今よりちょっと空気は汚いが、溢れんばかりの人で賑わい、何より山ほど娯楽があったんだ。カラオケに、映画、ショッピング。あとはなんだったかな……? そうだ、マンガなんてのもあったなあ~」


「なんだかその時代を知ってるような言い方ですね」


「まあ、本で読んだだけだがな」


「アランさんはこの辺りの本は全部読んでるんですか?」


「当たり前だろ! これは僕の個人的な持ち物だ。君は何故かこの図書館が学園のものか何かと勘違いしているようだが、一つ言っておく。ここは僕の家だ!」


 アランは両手を開いて誇らしげに言った。


「家……?」


「そうだ。だから君がここにアルバイトに来たのは何かの間違いだ。確かに、僕は掃除が出来ない。だから君が掃除をしてくれるのは助かるが、それ以外の余計なことはするな。分かったか?」


「うーん、でも……」


「でもは無しだ! はいと元気よく答えればいい。分かったか? 分かったら返事を!」


「はい!」


「ところで君の名前は?」


「リンカです。ってさっき言いましたよ?」


「ああすまない、人の名前は12回以上聞かないと覚えられないんだ。後11回は我慢してもらうよ」


「2回言ったから、あと10回ですよ」


「そんな事はどうだっていいんだ。リンカ、大体君はどうやってここに来た? こんな所に人が来ること自体おかしい。この辺りには僕が使った人避けの魔法で誰も近づかないようになっているはずだ」


「私はここで働けるって教えて貰って……」


「ちょっと待った! しー!」


 急にアランがリンカの口を押えた。


「誰か来る! 隠れろ!」


 アランがリンカの手を引いて、本棚の裏に2人で隠れた。


 図書館の窓の外に2人の人影が見えた。


 そこにいたのはニーナとビビエルだった。


「あれは、生徒会長のニーナさんですよ」


 リンカがアランに言った。


「ああ、もちろん知ってるさ。有名だろ? 僕の次にね。そしてその横にいるのは妹のビビエルだな」


「でもなんで隠れるんですか?」


「リンカ、君は分かってないな。ああ、かわいそうに。あいつらがどんな奴らなのか知らないんだな。あいつらは俺の敵だ! いや、人類の敵とも言えるかもしれないな。ああ恐ろしい」


「人類の……敵?」


「あいつらはシナプスだ! ああ~、名前を言っただけで鳥肌が立ってきた」


「シナプスって知ってますよ。私、入らないかって誘われました」


「君がか? ありえない! そんなに弱そうなのに。君なんかせいぜい魔力値10くらいだろ?」


「6ですけど……」


「6!? ろくぅうう!? ブフッ! ぶぁっはっはっはっは!」


 リンカの魔力値を聞いてアランは突然大笑いを始めた。


「ああ、だめだだめだ。僕はジョークに弱いんだ。君はおもしろい奴だな。掃除係としては適任かもしれないな」


「本当のことなんだけどな……」


 ニーナとビビエルが去ったのが分かって2人は立ち上がった。


「君のことは気に入った。これからもここで雇ってやってもいいぞ。ただし、本には触るな、そして僕にも話しかけないでくれ、あとはついでにシナプスのことを嫌いになるっていうのを守ってくれ」


「わ、かりました。たぶん。シナプスのことはよく分からないですけど……」


「ようし! 分かってくれたな。うんうん、君はいい奴だ。これからは君とも仲良くやっていけそうだよ」


「はいっ。よろしくお願いします」


 リンカは勢い良く頭を下げた。


「よし。じゃあ今日はこれで終わりだ! さあ、回れ右だ! 解散っ!」


「えっ、えっ!? もうですか?」


 リンカは動揺したが、アランに肩を掴まれ、無理やり回れ右をさせられた。


「続きは次回だ! 僕も忙しいからな。あまり君に構っている時間はない」


「わ、わかりました。じゃあ、失礼します……」


「また暇な時に掃除しに来てくれ。じゃあな」


「さ、さようなら~」

 

 リンカが手を振ると、アランは椅子に乗ってまたどこかへと飛んでいった。


 そしてリンカはそのまま自分の寮に帰った。


 彼女が寮に到着し自分の部屋に入ろうとした時、丁度同じ階の他の部屋からミルが出てくるのが見えた。


「あ、ミル! ドアの工事終わったの?」


「リンカちゃん~! 今終わったんだ。もうガッチャガッチャ開くよ」


 ミルは直したばかりのドアを開けたり閉めたりして見せた。


「直したばかりだからあんまりガチャガチャしちゃダメだよっ!!」


 リンカは慌てて言った。


「昨日はありがとね。リンカちゃん。私達が出会って初めての夜……。楽しかったよ~。私達の初夜だね」


「初夜ってなんか意味が違うような……」


「ところでリンカちゃん今日は何か予定あるの~?」


「うーん、特にはないけど~」


「だったら、昨日のお礼も兼ねて今日はリンカちゃんが私の部屋に泊まるっていうのはどうかな?」


「ほんと!? それいいかも!」


「やった~! なんだか一人で寝るの寂しかったんだ」


「ありがとう! じゃあまくら持ってくるね!」


「投げるんだね~? まくら投げ大会だね~?」


「ね、寝るのに使うだけだよ!」


 リンカはそう言いながら自分の部屋へと入った。

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