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魔王へと向かう者たち 後編

これもコピーによる再投稿です。

五詩

草原の果てへとたどり着いた彼らは

岩山の壁の合間にある森の入り口に

黒い装束に身を包んだ男と出会った


彼らの一人が問う

「我らは魔王を討ちに参った者である。

そこの者よ、お主は魔王に関するものか?」


男は返す

【いかにも、我こそは魔王なり。

これより先は我が領土。

何用があってここに来た!】


魔王の言葉を聞いた彼らは

ざわめきながらも

剣を抜いて

魔王に刃を向け叫んだ

「我らの用は、魔王ただ一人!

悪の権化たる貴様を討ち、世界に平和をもたらすのだ!」


魔王は彼らの叫びを

嘲ることなく

腰に差したる剣を抜きつつ

ただ立ち向かう


【我を討つか。良いだろう。

己が無力を呪いながら、

その身を朽ちらせてやろう!】


六詩

魔王の剣が

彼らの刃を切り裂いてゆく


彼らは魔王の剣に

切り結ぶことなく


身体を巡る血液を

傷口から溢れ出す


魔王が剣を振るうごとに

彼らの恐怖は増してゆく


なんと無力なものなのか


剣は裂かれ、鎧は砕かれ

盾はもはや意味も無い


無慈悲なる魔王の刃が

彼らの戦意を奪い尽くした


七詩


魔王の刃に生き残ったのは

一人の青年だけ


魔王は剣を鞘に収め

青年に問うた


【青年よ。ただ一人遺され、それでも我を討とうするか?

望みすでに叶わぬと知りながらも、我に立ち向かうか?】


青年は答える


「魔王よ、私には貴様を倒す術はもうない……。

立ち向かう力すらも消えてしまった……。

魔王よ、貴様に問うが、なぜ私を生かしたのだ?

なぜ、他の者たちと共に私を殺めなかったのか?!

私一人生き残って、生き恥をさらせと言うのか?!」


草原の果てに

青年の悲痛な叫びが

響き渡る


【なぜ、お前を生かしたか。

周りの者らは、欲に満ちた瞳をしたいたが、お前だけは違った。

我を討つと称した者らは、名誉欲の渇望と金銭への執着に満ちていた。

しかし、お前の瞳に宿っていたのは、我を討つことで世界に平和がもたらされるという一点のみ。

純粋にして一途な欲望があったからだ】


魔王は青年と

草原に倒れ伏す屍とを比べ

淡々と言葉を告げる


「……魔王よ。私は確かに、貴様を討つことで世界に平和がもたらされると信じていた……。

魔王よ。私が信じていたものが違うと言いたいのか……」


魔王の告げる言葉に

懐疑を抱かされた青年は

再度魔王に問う


【そうだ。我を討ったところで、世界に平和など訪れぬ。

お前のいう平和とは、人の世界に置いて意味を成そう。

しかし、我が領土に置いて、我の死はお前たち人間による、我が民への殺奪及び殺戮を産み出すきっかけを作ることになる。

そんなものが、平和とは呼べぬ。

それでもなお、我を討とうとするか?】


魔王は己の死から推測し

必ず生じるであろう

平和とは真逆の虐殺を

わずかに怒気を

孕みながら

ただ淡々と述べる


「魔王よ……私には何が正しいのか……分からなくなってしまった……。

これが貴様の狙いなのか……。

私が信じていたものを、言葉によって壊すのが……」


信心を砕かれた青年は

善悪の判断が

分からなくなっていた


【我はただ、推測を述べたに過ぎぬ。

青年よ。お前の想う平和とはなにか、始まりから思考し直せ。

繰り返し続けることで、得られるものがあるかもしれぬしな】


魔王はただ紡ぐ

鉄は繰り返し鍛えることで

鋼になるように


思考し続けることで

本当の意味での

平和とはどういうものか


淡々としながら述べた


【貴様との話はもう終いだ。

我が領土へ侵入するならば、その命無いと思え。

ではな】


魔王はそう告げると

己が領土たる森の奥へ

去っていった


八詩


草原の果てで

共に歩んでいた仲間たちの

屍の群れのなか

魔王の言葉によって

茫然自失となった青年は

魔王の言葉を

心の中で反復していた


魔王の告げた

本当の意味での平和を

理解するために――


<FIN>

あなたの抱く正義は、どのようなものでしょうか?

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