還りゆくもの
[終滅のウルド]の書き下ろしラストです。
ウルドは謳った
滅んだ世界にて
過去に紡がれた詩
それは
愛を綴った数編の詩
理を綴った数編の詩
命を綴った数編の詩
新たな一歩を踏むための願いを綴った詩
二度と会うことはなかった人への手紙
幾つもの罪を謳った道化の詩
光夜にて謝り続ける少女を語った物語詩
己の半身を殺した者たちへの復讐を描いた物語詩
死してなお想いを伝えたい優霊の物語詩
哀しみを抱いた旋律が
終滅の闇に響き渡る
そして、ウルドが詩を
歌い終えると
ウルドの身体が
煌めきながら
小さく収束していった
まるで、光が封じ込められた
宝石になるように
待ち焦がれていた
ウルドの隙を逃すまいと
終滅の闇が
ウルドを呑み込もうと
押し寄せる
すべてを呑み込む終滅の闇と
煌めく宝石になりかけている
ウルドの距離が
縮まっていくその瞬間
天より白鴉が
宙より翼を広げ現れて
煌めく宝石へと
姿を変えたウルドを
終滅の闇が呑み込む寸前に
小さな足でしっかりと
掴み穫ると
一声鳴きながら
翼を羽ばたかせて
天へと舞い戻るように
飛び駈けた
たった一つ遺ったのは
宝石となったウルドを
白鴉によって
逃されてしまった
終滅の闇のみ
やがて、世界を呑み込み尽くした
終滅の闇は
原初たる混沌へと
堕ち還っていった――
《終》
作中のモチーフは、サンホラの[Chronicle]最後の「君が生まれてくる世界」です。
エッセイ村に寄稿した「飛び立つ白鴉」と似たような感じになったのは、モチーフは同じだからです。
次話からは、タナトス前哨のための五作品になります。




