第二幕⑤ 道化師の特別教室―異能とは何か―
ひとしきり二人で笑い合った後、クラウンはソファーから立ち上がった。
「さ、さて……ボクも少し喉が渇いたからコーヒーを取ってくるよ、俊也君もお代わりいるかな? 」
「あー、まだ残っているから平気だよ」
「分かったよ、少し待っててね」
どこか疲れたような雰囲気を纏わせながらコーヒーを取りに行くクラウンの後ろ姿を見送りながら俊也は、先ほど受けた説明を脳内で反芻してみた。
屋上からの飛び降りを五体満足で生還した理由、クラウンの瞬間移動、気絶させた理由、テレパシーが使える三つ子………改めて考えても突拍子もない内容に俊也は、軽い頭痛を覚える。
正直、ここまで聞いても完全に納得出来たとは言えなかった。
まだ、大掛かりなマジックやテレビのドッキリ番組だったと言われた方が納得出来るだろう。
しかし、クラウンの説明や謝罪の言葉にはそんな低レベルなトリックや嘘が混ざっているとは思えなかった。
何より、ここに来てから自分が見た物・経験した事が全て出鱈目だとは考えられなかった。
(瞬間移動、か……)
ふとその単語が俊也の脳内を過ぎり、反射的に離れた机にいるジェーンへと視線を向けていた。
ラビットが少し黄ばんだような色の紙を片手に何事かを説明し、ジェーンはそれに対して返事を返しつつ、目の前のパソコンに入力している様子が見えた。
不思議な事にそれほど距離が離れている訳では無いのに、二人の話し声が聞き取れなかった。
まるで、俊也のいるソファーとジェーン達との間が見えない壁で仕切られているようだった。
俊也は思わず立ち上がって、ジェーン達のいる方へ手を伸ばして見るが、掌には何の感触もない。
「いやー、待たせてごめんよ! ちょっと考え事していたら、コーヒーが溢れちゃって………って何もない所に手を伸ばしてどうしたんだい?」
「ゔぇっ…!? い、いや……す、座りっ放しだったから軽くストレッチでもしようかと、思ってさ……」
「それなら、両掌を重ねてから腕を天井へ向けてゆっくり伸ばした方が良いよ」
いつの間にか戻ってきたクラウンの声かけに俊也は思わず妙な悲鳴をあげてしまった。
クラウンはそんな俊也の奇妙な言動に特に疑問を感じた様子もなく、ストレッチのアドバイスをしてくれた。
クラウンからのアドバイスを聞いた俊也は、早速両腕を伸ばしてみるが、思ったよりも伸びずに苦戦する。
「……け、結構しんどいな……」
「それなら運動不足だね! 軽いストレッチをすると気分転換にもなるから、調べてみるといいよ!」
ストレッチに四苦八苦する俊也に、クラウンは笑いかけながらソファーに腰をおろした。
俊也も慣れないストレッチを切り上げて、再度ソファーへ座り直す。
対面したクラウンは相変わらず、ピエロの化粧のままで表情が分かりづらいが、先ほどと違って少し落ちついたのか、疲労感は見られなかった。
だが派手な衣装を見慣れていたのもあり、今のヨレヨレのTシャツ(先の説教で薄汚れた)と薄い青のジーンズ(右足部分にコーヒー染み)というラフな格好には、些か違和感を覚える。
そんな俊也の視線を感じ取ったのか、コーヒーを啜っていたクラウンは顔を上げた。
「ん? どうかしたかい?」
「あ、いや、大分お疲れな様子だったから大丈夫かなと思ってさ……」
「ハッハッハ、平気だよ! これから話す事についてどう話せば良いかを悩んでいただけだったから、気にしないで大丈夫!! 」
「あぁ、そっち? 俺はてっきりジェーンさんの説教による疲労かと思ったよ」
「……思い出させないでくれよ……只でさえ暫く缶詰めが確定している現実を直視したくないんだよ」
「だったら、最初から仕事を溜めるなよ……」
明るい笑顔を浮かべていたクラウンがどんよりとした面持ちでガックリと肩を落とす様子に俊也は呆れてツッコミを入れる。
先ほど見た大机の机上を侵食している書類の山を見たら、ジェーンが怒るのは当然だろう。
一体どれほどサボっていたのか、検討もつかない。
「ま、まぁとりあえず話の続きをしようじゃないか!! 」
ひとまずは仕事で部屋から出られなくなるという現実からは目を逸らす事にしたのか、なんとか明るい声を出して会話を再開する事にしたクラウンを、俊也は少し呆れた目で見ていたが、すぐに真剣な表情へと変えた。
「それじゃあ、改めて教えてくれるか? クラウンや皆が口にしている『異能』について」
俊也の言葉にクラウンは力強く頷いた。
「もちろんだよ! ただ申し訳ないんだが、ボクらも異能について全てを理解している訳じゃない事は理解してもらいたい!」
「……よく分かっていないというのは?」
「言葉の通りだね! ボクらは学者じゃないから専門的な知識がある訳じゃあない。今まで知り得た知識をまとめて判断しているだけだから、間違えている可能性も高い。それを頭の片隅に入れて聞いてほしいという事なんだよ!」
クラウンの言葉に俊也は少し考えてから頷いた。
「分かったよ、だけどちゃんと説明してくれるんだよな?」
「当然だよ! 知り得る限りの事は話させてもらうよ!」
俊也の問いかけに対して自信満々といったように胸を叩いて返答するクラウン。
その様子に俊也は姿勢を正し、正面のクラウンを見据える。
「じゃあ、質問だ。そもそも『異能』って何なんだ?」
俊也から投げかけられる根本的な質問に、クラウンはすぐには答えず、コーヒーを一口飲んでから何かを考えるかのように、目を瞑る。
「よし、先に結論から言おう」
ほんの数秒、目を閉じていたクラウンは軽く咳払いをしてから語り始める。
「『異能』とは眠っていた才能が目覚めた結果だ!」
「ね、眠っていた才能……?」
クラウンの口から出たあまりに突拍子もない、どこか胡散臭さすら感じる言葉に俊也は胡乱げな表情を浮かべていたのだろう。
クラウンは、苦笑しながら説明を続ける。
「順番に話していくから、安心してくれ。俊也君は『人間』を構成する上で最も重要な場所はどこだと思う?」
唐突に投げかけられた質問に、俊也は少し考えてから答える。
「どこって……それは脳じゃないのか? 脳は記憶を保存したり、感情や五感を感じたりする信号を受信したりしているから、一番重要と言われたら俺はそう思うよ」
俊也の答えを聞いたクラウンは満足そうに頷いた。
「その通りだね! ボクらが体験した事を情報として処理し、喜怒哀楽の感情、聴覚や嗅覚などの感じた物を制御して伝える。今この瞬間も、ボクらが行っている言動も全て脳が指令を出しているから行えている事! 脳が最も重要な場所であるのは疑いようがないね! でも………」
そこでクラウンは、一拍置いてから告げる。
「今言った事は、脳が管理しているモノのわずか一・二割程度の事でしかないんだ!」
座っていたクラウンは勢いよく立ち上がるなり、まるで舞台の役者のように大仰に手を広げながら語っていく。
「それじゃあ、残り八割は何を司っているんだろうね!? ある脳学者は身体に異変が起きた時に補填出来るように待機していると考えている。
スピリチュアル系の人間は、それこそが魂と呼ばれる器官を司っていると主張している。
でも、ボクはそのどちらも違うと思うんだよ! 八割の脳が担っているのは『眠っている才能』! 言い換えるなら、その人が望んだ新たな可能性じゃないかとね!」
「ま、待ってくれよ! 眠っている才能の覚醒こそが異能ってちょっと飛躍し過ぎじゃないか!? そもそも脳が機能しているのは、僅か一割って言うのは迷信だって……… 」
「『脳の機能がわずか一割は迷信』というのは、誰から聴いたんだい? 学校の友達? 偉い学者さん? インターネットに載っていた記事かな?どれも君が直接知った物ではないんじゃないかな?」
「うっ……」
クラウンの主張に待ったをかけようとした俊也だったが、鋭く返された質問に言葉が詰まってしまう。
「じゃあ、仮に今の話が正しかったとしよう。俊也君はさっきまで実際に目にした光景は全て幻覚やトリックだと思うのかな? アイ達のテレパシーにも何か仕掛けがあると?」
「っ……それは……」
自身の反論に対して質問を投げつけるクラウンに、言い淀む俊也。
確かに今まで見た力の中にはトリックを疑う物もあったが、今この場にいる子供全てがマジックの天才やテレビ撮影の企画だという可能性は低い、少なくとも俊也が見た限りではそうした形跡もなかった。
何より今日出会った人が皆、演技をしていたとは思えなかった。
皆楽しそうに過ごしており、笑い合っていたのが芝居だとは考えたくなかった。
しかし、それでも俊也は認める事が出来ずに再度疑問を投げつけてきて必死で食い下がる。
「た、確かに瞬間移動やテレパシーみたいな超能力が脳の覚醒だと言うのは分かるよ。だけど羽で空を飛ぶような空想を実現させるなんて魔法みたいな事までもが同じ能力だとは思えない! それにその理屈が正しいなら全ての人が超能力を使える事になるじゃないか! だけど『超能力が使えるようになった』なんて話は聞いた事もないよ!」
パチパチパチパチッ!!!!
まくしたてるように反論する俊也の主張を肯定するかのように、拍手が鳴り響いた。
拍手しているのは、クラウンだった。突然の拍手に面食らってしまう俊也。
「凄いね、俊也君!! ボクの話を聞いただけでそこに気が付くなんて! 自慢じゃないけどボクは当初その理由が全く理解出来なかったよ! 」
自身の考えを否定された事に怒った様子はなく、むしろよくぞ気付いてくれたと言わんばかりに顔をほころばせるクラウンに、俊也は困惑した。
「悔しいけれど、その通りだよ。子供の頃は望んでいた事が実現不可能だったというのはよくある事だ。空き部屋の衣装箪笥や押入に違う世界はないし、人が自力で飛ぶ事は出来ない」
クラウンが話すのは、子供ならば誰もが一度は思い描いた事がある空想だった。
俊也も昔は祖父母の家で同じ事を想像しながら探検したのを覚えている。
「じゃあ、実現出来ない事が何故異能では出来るのか?その理由は正に年齢、より正確には異能が発現した歳に比例するんだよ!」
「ね、年齢?」
「ここに来た時、やたらと自分よりも年下の子ばかりの事を疑問に思っただろう?これはボクのスカウトだけが要因じゃない。異能の発現、特に幼い子が後天的に発現する際には、その時その子が望んでいるやりたい事に応えるように、異能が形作られていくんだ!」
思わぬ理由に戸惑う俊也だったが、クラウンの手にはいつの間にか数枚のカードが握られている事に気付いた。
見せられた面には全て子供の絵が描かれている。
クラウンは、子供のカードを一枚ずつ等間隔でテーブルに並べていき、そのカードの上に追加で一枚ずつカードを伏せていく。
「『羽を使って自由に飛びたい』と願ったから、翼で空を飛ぶ力が。
『恐竜やヒーローになってみたい』と願ったから、変身出来る力が。
『足が速くなりたい』と願ったから、超人的な身体能力が。
自分が望んだ夢の力が得られた結果こそ俊也君が見 た子達の異能という訳だよ!」
クラウンは説明しながら伏せていたカードを表にしていく。
表にしたカードには、それぞれ『翼』、『変化』、『力』と書かれている。
そして表にしたカードを取り除くと、下には生えた翼で空を飛ぶ子供、動物が混じった姿をした子供、自分の身長以上の車を持ち上げる子供の絵が現れた。
その絵を見た瞬間、俊也の脳裏には先ほど出会った子達が力を使っていた姿が思い浮かんだ。
「だから、小さな子達の異能は毛色が違う力だったんだよ!ちなみに、この子達が成長した場合には持っていた異能が強化される場合と全く別の異能に変化する場合の二つがよく見られる判例になるかな!そして、異能が変化する理由はその子の成長による心境の変化だ」
クラウンは説明しながらテーブルに手をかざすと、広げられたカードは消えてしまう。そして、どこからか取り出したスケッチブックとペンで何やら書き込み始めた。
物の数分ほどで描き終えたクラウンは、スケッチブックを俊也の前にずいっと近づけて見せてきた。
書かれていたのは、両手に抱え込むほど大きな卵を持った小さな子供の絵だった。
子供の周りには小さな矢印が数個描かれており、それぞれに「見た事」「聞いた事」などと書かれ、子供が持つ卵に向かって行っている。
卵には「望み」と書かれていた。
「小さな子の性格を形成する話があるけれど、異能も同じだ! その子が目にした光景、聞いた情報を得て、形作る。やがて望みへと変わり、孵化した物が異能になるんだ!」
紙の右側には、翼を生やした子が飛んでいる絵が書かれている。
クラウンがスケッチブックを一枚めくると、今度は少し成長した翼が生えた子を囲むように無数の矢印が描き込まれていた。子供の絵の下には小さな棒人間も数体書き込まれていた。
「皆、成長していくに連れて入ってくる情報も増えてくる。それと同時に他の人との関わりも増えていき、考え方も変わっていく。結果、異能も変化していく」
紙の右側には、先ほどよりも立派な翼で飛ぶ子供の絵と羽がなくなり、周りにオーラのように光を発生させて宙に浮かぶ子の絵が書かれていた。
「以上が、小さな子の異能が得る過程と成長した際に異能が変化するメカニズムだよ! この後、身体や心も成長していくと、異能が使える大人になるという訳だよ!」
言い終えると、スケッチブックを閉じたクラウンは軽く一礼する。
「ここまでで何か腑に落ちない所はあるかな?」
まるで異能に関する授業をしているようなクラウンの問いかけに俊也は静かに手を上げた。
「おや、どこか変な説明があったかな?」
「……いや、説明におかしい所はなかったよ。でも、俺が聞きたい事についてまだ完全に答えていないよな」
「……というと?」
「《《どうして超能力が使えるって話がどこからも聞かれないのか》》について、だ」
今はスマホがあれば幾らでも情報は拾え、情報を発信出来る時代だ。
まして、こんなすごい力を得たなら自慢したい子が何人かいてもおかしくないはずだ。
だが、俊也はそんな話は聞いた事がないし、ネットやSNSでもそんな情報はなかった。
そんな俊也の疑問に、クラウンは肩を竦めて答える。
「超能力ではなくて、異能なんだけれどもね。ま、それはさておき、この話がどこにも出回っていない理由は単純だよ!皆、忘れちゃったんだよ」
「……忘れた?」
「そう。より正確に言うならば異能が成長する過程で、異能が使えなくなってしまい、ここでの記憶も薄れていって最終的には忘れてしまう。
これが『超能力が使える!』という話を聞かない原因だよ」
「は!? そんなのおかしいだろう!?」
いきなり『忘れてしまったから異能が使えなくなる』という、まるで暴論のような結論を告げるクラウンへ、俊也は思わず叫んでしまっていた。
「どうしておかしいのかな?」
「だって、それじゃあ前提が破綻するだろ!? 眠っている才能が異能なんだったら、目覚めたらずっと使えるはずじゃないか! 」
「いいや? 別におかしい事ではないよ。 俊也君だって昔クリアしたゲームを久しぶりにやろうとしたら、上手く出来なかったって経験があるだろう?異能も同じだよ。まぁ、どちらかと言えばここに来る理由がなくなったから異能が使えなくなったが正しいかな?」
感情的に主張してくる俊也に対して、冷静に答えを返すクラウン。
先ほどまでの陽気な雰囲気が打って変わって淡々と話す様子に戸惑いながらも俊也はたずねた。
「……理由がなくなるって、どういう事だよ?」
「さっき成長するに連れて多くの情報を得る事になると説明しただろう?この情報を得たから異能が使えなくなった。いや、使う必要がなくなったかな?」
「だから、それは矛盾しているじゃないか? 才能だというなら、それを伸ばせば良いじゃない―」
「嫌な言い方をするなら、現実的な問題に直面してしまってここに来る機会が減ってしまったのが原因なんだよ」
遮られるように告げられた現実的という言葉を耳にした瞬間、不意に冷水を浴びせられたかのように、俊也は言葉が途切れてしまった。
そんな俊也を見ながら、クラウンは寂しそうに笑って続けた。
「問題と言っても、そんなに深刻な話じゃあないよ。進学とか転校……単純に飽きたというのもあるね。周りの子達と話している内に話題が噛み合わなくなってきたから、ここに来る事が減ってしまってそのまま来なくなるなんていうのも珍しくもないよ」
「……で、でも、ここには同年代の子だっているじゃないか!? 話題が全く合わないなんて言っても、一時的じゃあ、ないか……」
俊也が何とか絞り出した言葉に、クラウンは首を振る。
「そうかもしれないね。だけど、共通の話題で盛り上がれる相手がいなくなったら? また新しく友達を作るのはなかなか難しいし、友達に会えるから来ている子もいるから、友達が来なくなったからいいと来なくなる事もよくあるんだよ」
「だ、だけど……異能が、使えるなら……」
「残念だけど、外で異能がしっかり使えるようになるのは結構時間がかかるんだよ。ここで異能を使う姿を撮影する子もいたよ?でも帰った途端に使えなくなって、結果、友達からウソつき呼ばわりされて二度と来ないと言って去る事も多いんだ」
その時の様子を思い出すかのように、目を伏せながら語るクラウン。
「だから、異能が使えるようになったという話を聞く事がないんだよ。一時的に話題になってもトリックだと否定されてしまう事もザラだし、親しい人達から嘘だと言われてしまえば尚更だよ。そして、自分でも『あれは、夢だったんだ』と言い聞かせていって異能が使えた事を忘れてしまうんだ。そして、使わなくなった異能は衰えていき、やがて消えてしまう」
「そんな……それじゃあ、まるで―」
まるで、授業中居眠りした時に見る一時の夢みたいじゃないか。
そんな言葉が出てこようとしたので、俊也は思わず口を噤んだ。
それを口にしたら、今いる場所が煙のように消えてしまうんじゃないかという恐怖があったからだ。
「でもね、ボクはそれでも構わないと思っているよ」
しかし、クラウンは穏やかに笑っていた。
そこには諦めも寂しさもない、心から嬉しいと思っている笑顔を浮かべていたのだ。
「否定的な理由ばかり話してしまったけれども、中にはやりたい事が他にも出来たから来れなくなると言う子もいるんだよ。ボクはそれを聞いてとても嬉しかったよ、『一時の夢でも、その子の為のに助けになる事が出来るんだ』ってね!」
俊也が口に出来なかった言葉を、クラウンは前向きに捉えて喜んでいるのだ。
「不思議な話なんだけれども、そういう子は異能が消える事が少ないんだよ! 中には、異能の性能が前よりも高くなって上手く制御したいと言ってまた来てくれる子もいるんだ!」
そして、クラウンはその場でクルリと一回転すると出会った時の派手な道化師姿へと服装を替えた。
「だからボクは考えたんだ! 『異能が使えるようになった子達が楽しく過ごせるような夢のような場所』であり、『異能に目醒めた人に同じ力を持っている仲間がいる一時の安らぎを得られる場所』を作れないかとね!
そうして、出来たのがここ『デイドリーム』なんだよ!」
それは、正に夢のような話だ。
訪れた子達は、誰にも邪魔されずに自分が思い描いた力を使って過ごす事が出来る場所。
たとえ飽きて忘れてしまっても構わない。
僅かな時間でも、その子にとって楽しい夢を提供出来たならば。
他にやりたい事が出来ても気にしない。
一時でも、その人にとって心安らぐ場所となるならば。
皆、異なる能力を持っているが、誰も責めず、否定せず、やりたい事が出来る場所。
そんな、白昼夢のような事を彼は実現させたのだ。
「……と言っても、仲間になってくれるような人はそんなに多くなくてね。今の所は、少し変わった才能に目覚めた子達向けの児童館に近いね!」
クラウンは照れ臭そうに頭を掻きながら現状を告げているが、俊也は笑わなかった。
むしろ、自分のやりたい事を実現させているクラウンに尊敬の念を感じていた。
「さて、以上で、『クラウンの異能教室―初級編―』を終わります。ご清聴ありがとうございました」
道化姿なのに、まるで学校の課題発表会のように深々と頭を下げて話を締めたクラウンに、俊也は思わず拍手してしまっていた。
そんな俊也の反応にクラウンはホッとしたように、再びソファーに腰を降ろすとテーブルに残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
「さて、これでひとまず話せる所は終わりだけれども……」
クラウンは空になった紙カップをテーブルに置きながら、まだ話の余韻でぼんやりとしている俊也へニコリと笑いかけてきた。
「俊也君も仲間に入らないかい? 」




