静かなる脈動と真紅の計時
正面の扉が開く前に、それはやってきた。重厚なブーツの音がホールに響き渡り、兵士たちに護衛された白衣の集団が乱入してきた。彼らが手にしていたのは、医療用とは程遠い、巨大で不気味なシリンダーだった。
「列を作れ、家畜ども。これから貴様らに『恩寵』を授ける」
指揮官は絶対的な冷酷さでそう言い放った。彼によれば、それは能力を目覚めさせるための特殊なエネルギーの注射であり、我々を超人へと変える魔法の薬だという。滑稽な嘘だった。その赤い液体に「恩寵」などひとかけらもなかった。科学者が「これは安全だ」と断言する時ほど、明確な「死亡フラグ(デスフラグ)」はない。
プロセスは機械的で無慈悲だった。太い針が容赦なく肉を貫き、数秒のうちにホールは屠殺場へと化した。至る所で断末魔の叫びが爆発した。注入された何かが彼らの血管を破壊していた。皮膚の下で血管が腐った紫色に腫れ上がり、まるで独自の意思を持っているかのように脈打っている。
そして、俺たちの番が来た。針が沈み、毒液が血管を流れる。アクセルは絶望に悶えながら腕をかきむしり、膝から崩れ落ちた。サマンサは冷や汗にまみれ、壁に倒れ込んだ。二人の腕には、内側から食い荒らされるように紫色の血管が浮かび上がり始めた。
俺は二人の方へ駆け寄ったが、何よりも血の気が引いたのは親友の姿を見た時だった。ほんの数時間前まで、彼はアクション漫画の中にいると信じ込み、すべてをゲームのように捉えていた。だが今、その「主人公」のような輝きは消え失せていた。彼の瞳は、純粋で動物的な恐怖に見開かれていた。もはやヒーローを夢見る少年ではなく、現実には一時停止ボタンがないことに気づいた一人の犠牲者だった。
だが、俺は何かがおかしかった。感じた痛みといえば、針が刺さった小さな刺激だけだ。馬鹿げた刺激。周囲は悲鳴と紫の血管がのたうち回る地獄絵図なのに、俺の腕は平然としていた。俺の血管はその液体を、まるで物質がただ家に戻ってきたかのように、無機質な静寂の中で受け入れていた。
「制限時間は五分だ」リーダーは撤退する前に宣告した。「その後、その物質が与える力を覚醒させるための『フェーズ1』の試験の扉が開く。それまでに死なないよう努力することだな」
彼らは去り、後には鉄臭い血の匂いだけが残った。俺の血は、最初からこの世界の汚物と同じ色をしていたに違いない。サマンサを支え、親友を見た。終わりの始まりまで、あと五分。
***
俺たちを待っていたのは訓練場ではなく、重度の臨床的うつ病を患った芸術家が設計したかのような、悪夢の情景だった。鋭い岩の墓場、無数の木々、そして重みすら感じるほど濃い霧の中から突き出す錆びた金属。そして、俺はそれを見た。拒絶された傷口のように灰色の中空に浮かぶ、血のように赤いデジタルカウンターが動き出した。01:00:00。
目的は残酷なほど単純だった。時間が尽きる前に、地平線に黒い牙のようにそびえ立つ塔に到達すること。それは速さのテストではない。純粋で剥き出しの自然淘汰だった。あの時計がゼロになった時、左右の檻が「アノマリー(異形)」を吐き出すことは分かっていた。ゴールへの競争ではない。虐殺からの必死の逃走になるのだ。
喉の空気が凍りついた。恐怖で体が動かなくならないよう筋肉を強ばらせ、友人たちを見た。
「走るな……」震える声で、激しく脈打つ心臓の音に抗いながら絞り出した。「足取りを……維持しろ。一定だ。今、力を使い果たせば死ぬぞ」
自分の声が奇妙に、耳に響く鈍い鼓動に遮られて聞こえた。冷静を装っても、体が「俺たちは窮地に立たされている」と理解していた。
数分もしないうちに、空気が燃え始めた。息を吸い込むたびに、粉々に砕いたガラスを飲み込んでいるような感覚に陥る。鉄のブーツと重りのついたベストは肉体的な拷問へと変わり、一歩一歩が自分の忍耐力との決闘になった。
周囲で慈悲の心が吐き気がするほどの速さで消えていくのが見えた。人々はもはやお互いを戦友ではなく、障害物か、あるいは檻の中の獣たちのための「足のついた囮」として見ていた。サマンサが初めてつまずき、膝が乾いた音を立てて地面を叩いた時、アクセルと俺はほとんど反射的に彼女の肩を支えた。
40:02。時間は酸の滴のように零れ落ちる。森は俺たちの努力を嘲笑うかのように伸びていくようだった。
絶望的な悲鳴が呼吸のリズムを切り裂いた。数メートル先で誰かが足首を骨折していた。彼は泥をかきむしりながら助けを乞うていたが、この場所で彼に手を差し伸べる者など一人もいなかった。俺は本能的に一歩踏み出しそうになったが、アクセルの手が、腕が軋むほどの力で俺を止めた。
「考えるな!」彼はクロノメーターを凝視したまま囁いた。「立ち止まれば、俺たちがあの化け物どものデザートになるんだぞ」
永遠とも思える一瞬の躊躇。俺の脳がトラウマを避けるために既に顔を消しかけているその少年を見、それから友人たちを見た。俺は奥歯を強く噛み締め、口の中にストレスによる鉄の味を感じた。俺は歩き続けた。鉛のベストよりも遥かに重い罪悪感を引きずりながら。
23:00、俺たちは太い幹と灰色の樹皮を持つ木の影に、体が求めているのではなく「叫んでいる」休息のために身を寄せた。そこに彼がいた。オスカー。理解できないものを見る時特有の、疑念と困惑が混ざったような視線を俺たちに向けていた。
「お前……」擦れた囁き声のような声で彼が言った。「全く疲れているように見えないな」
その言葉を無視しようとしたが、震え踊る彼の手に反して、俺の手が完全に静止していることに気づかないわけにはいかなかった。オスカーは極限の疲労から告白を始めた。自分の嫉妬について、そして、隣人を踏みつけて一秒を稼ぐのが当たり前のこの地獄で、これほど強固な絆を見ることがいかに不条理であるかを。
「彼らが俺と一緒にいるのは、冒険のためじゃない」俺は苦々しい声で答えた。「俺の故郷では、あるアノマリーに目をつけられていた。そいつは俺の両親を殺し、影に潜んで俺を見張り……その時を待っていた」
俺は言葉を切り、肩に寄りかかるサマンサの重みを感じた。
「そいつが村の残りの人間を食い尽くさないように、俺は村を出た。それなのに、この二人の馬鹿はついてきたんだ。俺が最も迷っていた時、俺を一人にしないためだけに自分の未来をゴミ箱に捨てた。これは友情じゃない、オスカー。俺の命で払い切れるか分からない負債だ」
静まり返った沈黙が俺たちを包み、遠くのカウンターの点滅だけがそれを破った。オスカーは苦い敬意を込めて俺たちを見た。彼は理解したのだ。俺たちのは「少年漫画」のヒーローごっこではなく、運命の手に噛みつくことを決めた家族の誓いなのだと。
「何してんだ、バカどもが!そこに座ってたら時間がなくなるぞ!」
道からの叫び声が、俺たちを一気に現実に引き戻した。
腐った幹に埋め込まれた近くのスクリーンを見た。赤い数字が新たな残酷さで点滅していた。15:00。空気が電気を帯びる。ドラマチックな告白の時間は終わった。
オスカーが最初に立ち上がった。激しく震える大腿四頭筋を無視し、その動きは機械的だった。彼は答えを待たなかった。埃を払い、自分の弱さを振り切るように、盲目的な決意で突き進んでいった。
俺たちも無理やり体を起こした。サマンサの脚はゼリーのように震えていたが、影から現れるものへの恐怖が彼女を突き動かしていた。
ペースが上がった。もはや言葉はなく、乾いた枝が折れる音と、断末魔のような喘ぎ、そして地面を叩く金属音だけが響く。疲労はもはや不快感ではなく、骨まで沈み込ませる鉛の潮流だった。
そして、災厄が起きた。
サマンサが遅れ始めた。俺の背中を見つめる彼女の視線が焦点を失い、リズムが崩れていくのが見えた。彼女の脚が、脳からの命令を拒絶したのだ。
「オリバー……アクセル……無理……待って……」
彼女は崩れ落ちた。乾いた地面に膝を打つ音が、どんな物理的な衝撃よりも俺を痛めつけた。
「脚が……もう動かない……俺を置いて……行って……」彼女は地面に顔を伏せて泣きじゃくった。
俺たちは急停止した。オスカーは一瞬だけ立ち止まり、肩越しに振り返った。彼の瞳の中に、カウンターへの根源的な恐怖と、人間としての最後の良心の葛藤が見えた。彼は視線を落とした。口に出せない沈黙の謝罪を送り、再びゴールへと向き直った。臆病だが、論理的な選択だ。
08:00。時間は指の間から零れ落ちる砂のように消えていく。
「夢でも見てろ」俺は言い放った。
俺は歩みを戻した。俺の太腿も酸のような炎で燃え、悲鳴を上げていたが、愚かさに近い意固地さでそれを無視した。
「私のせいで死んじゃう……」地面で震えるサマンサ。「私はお荷物だよ……ここに置いていって」
俺は彼女の前にしゃがみ込んだ。視界が狭まり、世界の中心にサマンサだけが残った。
「本当にお前を置いていくと思ってるのか?乗れ。俺が運ぶ」
「ダメだよ!オリバーまで力が尽きちゃう……」
「まだ行ける。俺を信じろ」
アクセルを見た。彼の目には、怒りと揺るぎない忠誠が混ざり合っていた。
「アクセル、お前は先に行け。場所を確保しろ」俺は命じた。
彼は奥歯を噛み締め、自殺行為だと分かっている時特有の、怒りに満ちた苦い笑いを漏らした。
「は? 何言ってんだ。追いつかれる時は……三人一緒だ」
04:00。カウンターが血の色で点滅する。
サマンサを背負い、肺の奥底から絞り出すような唸り声を上げながら立ち上がった。足が泥に沈み、重りベストと彼女の体重で背骨が軋むのを感じた。
「行くぞ! 行けええ!」
ゴールの塔が、灰色の空を背景に黒いシルエットとなって、痛々しいほど近くに見えていた。既にゴールした志願兵たちが、狂った影のように腕を振りながら向こう側で叫んでいる。
「来た! 来たよ!」サマンサが叫んだ。
俺は振り返らないよう自分に言い聞かせた。その必要はなかった。肌で感じていたからだ。空気が重くなり、影から這い出したアノマリーの腐敗した臭いが漂ってくる。不自然な動きで距離を詰めてくる歪んだ姿。俺は調整力を失い始め、足取りは引きずられ、視界は水中にいるかのようにぼやけていった。
「オリバー……下ろして……」彼女が耳元で懇願する。
「下ろさない」俺は唸った。もはや体は自分のものではなかった。
だが、限界だった。肺が潰れかけていた。アクセルは俺が自覚するより先に、俺の崩壊を察知した。
「俺に貸せ」
「何?」
「俺に貸せってんだ、オリバー! 命令だ!」
不器用で必死な動きで、サマンサは俺の背中からアクセルの背中へと移った。荷を放した瞬間、俺は前のめりに倒れそうになり、乾いた地面で溺れているかのように激しく空気を求めた。俺たちの数メートル後ろで、混沌が爆発した。断末魔の叫びが空気を満たす。脱落者たちにとって、時間はゼロになったのだ。
アクセルは進もうとしたが、限界を超えていた彼の脚は数メートルで折れた。彼はサマンサを乗せたまま膝をついた。
「立てええ!」俺は叫んだ。目は血走っていた。
ゴールまであと十メートルもない。アノマリーたちは既に木々から飛び降り、俺たちの踵に爪を伸ばしていた。アクセルはもう一度立ち上がろうとしたが、膝が激しい震えと共に屈した。
その時、自分が持っているとは知らなかった生存本能に突き動かされたように、サマンサが彼の背中から降りた。彼女の脚は風に揺れる枝のように震えていたが、動いた。一歩。そしてもう一歩。俺は彼女の横に並び、腰に腕を回して支えた。アクセルも這い上がり、俺たちに加わった。三人、意志と絶望の塊となって、最後の一区間を走り抜けた。
「オリバー! アクセル! 行けええ!」
オスカーの声だった。汗まみれで狂ったように腕を振り、自分の魂が俺たちのゴールにかかっているかのように名前を叫んでいた。
森の影が俺たちを食い尽くそうと飛びかかってきた瞬間、俺たちは白線を越えた。向こう側の地面に倒れ込み、空気も力も枯れ果てて、完全に空っぽの状態で地面を叩いた。アノマリーたちは境界線ぴったりで急停止した。その体は見えないスイッチが切れたかのように不自然に硬直した。悪夢の彫像のようにそこに立ち尽くす彼らを、俺たちは地面から見上げた。
俺は仰向けに寝転び、灰色の空を見つめた。途切れ途切れの唇から、ヒステリックに近い、神経質な笑いが漏れた。それは世界を救ったヒーローの笑いではなく、純粋な奇跡で生き延びた愚か者の笑いだった。
「……やったぞ……」
サマンサが俺たちの方へ這ってきて、泣きじゃくりながら二人を抱きしめた。その瞬間、他の志願兵たちの前で、俺たちは強くあろうとはしなかった。
ただ生きていた。今日は、それだけで十分だった。
あのアノマリーたちと違って、俺の両親を殺した奴は……異質だった。あそこにいる奴らは単純な生物機械、本能に従って無意味に殺すだけの道具に見える。だが、俺の過去の怪物はもっと恐ろしかった。奴らにはない「眼」を持ち、鳥へと姿を変えた。まるで、俺を破壊するためだけに設計された計画の一部であるかのように、すべての動きに目的があるようだった。




