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気がつくと、自分の右足に装着していた警棒も消えていた。
「今は無理だけど、いつか必ず奢るよ」
「ふん!当たり前だ!」
ダオラは、ラム酒を一気に流し込んだ。そしてリムスにお代わりを頼んだが、リムスはあからさまにそっぽを向いた。……ドンマイ。
キノコだらけの晩飯だったが、ラム酒と良く合い、とても美味かった。
食事を終えた頃、丁度リムスが報酬を持って来た。
「今回の報酬と査定結果よ。合わせて9910ギャリーね」
「Gランクにしては良い方だな。しかし晩飯で赤字だ」
「そうなのか?」
「ダオラが飲み過ぎなのよ」
「まあ、なんだ。ハンターの一連の流れを教えただけだ。錬金だともっと稼げるはずだったんだが、1日で消えちまうならそれも無理な話だな。明日はニーボア狩りの前に、ギリゴブの装備を整えに行くぞ」
「良いの?でも自分は金を持って無いぞ」
「それは僕に任せてよ。ゼンジは命の恩人だからね」
「でも、悪いよ」
「みっともない事言わないの。ここは素直にリオンの好意を受け取るべきよ」
「そうだね。ありがとう!ハンターの服装か……楽しみだ」
「でもゼンジは登録出来ないんだよね。僕達とパーティーも組めないよ」
「そのパーティーって何?」
「それはね、ハンターズギルドに登録したハンターは、パーティーを結成する権限が与えられるの。つまりチームのことね。パーティーのメリットは、協力してクエストを受けられるから、命を落とす危険が減るのと、クエストは通常自分のランクと同等のものしか受注出来ないんだけど、パーティーを組む事で1つ上のクエストが受注可能になるの。そして一番のメリットは、どこに居ても連絡が取れるの」
「どう言う事だ?」
「パーティーを組むと、メンバーがギルドカードに登録されて、パーティスというスキルを覚える事が出来るの。それでね、ギルドカードに魔力を注ぐと、どれだけ離れていても会話が出来るようになるわ」
「携帯か!?トランシーバーより便利だな!」
「そうだよ。はぐれることがなくなるからね」
異世界恐るべし。ミラはクスリと笑って席を立ちカウンターへと向かった。
「5人まで大丈夫なのか?」
「6人」
「ただ、6人だと食費や装備費用に金がかかるから4人パーティーが多いよ」
「ちなみに俺達は皆Dランクだ。パーティー名は、インパルスブルー」
「何ぃ!惜しい!」
非常に惜しい!出来る事なら自分も加入して、パーティー名を前後逆にしたい!
「ギリゴブも誘いたかったんだが、ギルド登録が出来ないからな」
「そうか……」
異世界人だとバレるのは駄目なんだよな。
「そんなに落ち込まないでよ。ステータスを誤魔化す、アイテムがあるって聞いたことがあるよ」
「それは是非欲しい!でも、高級品だろ?」
「まあ、なんだ、貴族にでもならないと買えないな。それか、Aランクのモンスターを狩るかだな」
「Aランクのモンスターはどこにいるんだ?」
「その話はまた今度ね。ゆっくり休むのもハンターの仕事の内でしょ。明日に備えて今日は休みましょう」
精算を終えたミラが戻ってきて、その日は解散となった。
家に近付くにつれて、足取りが重くなってきた。
「テープルさんに何て言おう……」
そろそろ迷彩戦闘服が消える頃だろう。あんなに喜んでいたのに申し訳ない。
「怒るだろうな……」
店の前で立ち止まり、ため息を吐いた。気が重い。覚悟を決めてドアノブに手をかけると、中からテープルさんの叫び声が聞こえて来た。
「き、消えた!消えた〜!無くなったぁぁぁ」
「はあ。ちゃんと説明して、借りてる家を返そう」
ノックをして中に入ると、鬼の形相でテープルさんが駆け寄って来た。
「ゼ、ゼンジさん!ききき、消えました。昨日頂いた分が、忽然と消えました!」
「テープルさん落ち着いて聞いてください。実は……」
自分はスキルについて、職業について、そして異世界から来た事について、テープルさんに全てを明かした。
「……そうでしたか。ゼンジさんは異世界人でしたか」
「黙っててすみません」
「とんでもない。そのような重大なこと、良く話してくれました」
「それで、その〜、契約の件ですが……」
「ああ。契約は契約です。今のままで結構です」
「しかし、1日で消えるんですよ。このままじゃテープルさんのメリットが何もありません」
「そんな事はありませんよ。マジックテープルがありますから。ですから、出来れば研究のためにも、また服を頂けたら助かります」
神だ!
「了解しました。お心遣い感謝します!」
「私はもう少しマジックテープルを研究します。ゼンジさんは先にお休みください」
「了解!明日に備えて先に休ませてもらいます。おやすみなさい」
テープルさんに敬礼をして、迷彩戦闘服を渡して借りている家に戻った。明日もあるが、まずはスキルの検証だ。
〔ザッ「アシスタントthis isゼンジ、警棒について教えてくれover」ザザッ〕
〔ザッ『ゼンジthis isアシスタント、警棒とは特殊警棒。伸縮式で材質は地球の金属製です。攻撃力250。消費MP2です。over」ザザッ〕
知っている通りの情報だな。他にも何か聞いてみるか。
〔ザッ「防弾盾の防御力は?魔法も弾くんだろ?」ザザッ〕
〔ザッ『300です。300以下の攻撃は全て弾き、衝撃も緩和します』ザザッ〕
「しまった!this is忘れて普通に話してた!というか要らないのか…それにしてもトランシーバーの対応力、半端ないな!もっと聞きたい!」
〔ザッ「いかづちのスキルについて教えてくれ」ザザッ〕
〔ザッ『いかづちは、瞬発的に速度を上昇させ、素早さを5倍にする雷属性のスキルです。雷耐性が低い相手を攻撃すると、麻痺を付与する追加効果があります。消費MPは7です』ザザッ〕
いかづちスゲェ!と言うことは、魔法が出る訳じゃなくて、攻撃速度が上がるのか?防弾盾が黄色く光ったあれだな……だとしたら警棒でも使えるのか?良いぞ!明日使ってみよう。
でも……魔法じゃなかった……
気にしたら負けだ!次だ!
〔ザッ「スキルは、いかづちの時みたいに声に出したら覚えるのか?」ザザッ〕
あの時はギロチンって言ったけど……
〔ザッ『スキルは、声に出すだけで取得する事はありません。取得にはそれぞれ条件があります。ただし、練度とイメージにより取得する事もあります。スキルいかづちについては、自衛官の専用スキルのひとつです』ザザッ〕
ただの偶然!名前がギロチンじゃなくて良かった。
専用スキルは、警棒とか他のも同じだろうな。やっぱりステータスを見られるのは危険だ。アシスタントが誤魔化してくれやしないかな?
〔ザッ「アシスタントは、自分のステータスを誤魔化すことは可能か?」ザザッ〕
〔ザッ『不可能です』ザザッ〕
残念。完全にアシスタントの業務だけなんだな。よ〜し!どんどん行くぞ!
〔ザッ「HPとMPを教えてくれ」ザザッ〕
〔ザッ『HPとは、ヒットポイントの略であり、0になると死亡してしまいます。MPとは、ミリタリーポイントの略であり、自衛官のスキルを使用するために必要なポイントです』ザザッ〕
……聞かなきゃ良かった。聞くべきじゃなかった…調子に乗った……まさかのミリタリーポイント。
〔ザッ「MPがマジックポイントじゃないってことは、自分は魔法を覚えないのか!? 」ザザッ〕
頼む違うと言ってくれ!
〔ザッ『左様です』ザザッ〕
異世界に来てまで職業が自衛官だし、魔法は使えないし、何一つ良い事がない。
〔ザッ「職業は変えられるんだろう?転職システムのようなものはないのか?」ザザッ〕
〔ザッ『ありません』ザザッ〕
終わった……異世界の夢が1つ消えた……魔法が使えないなんて……異世界に来て、一番ダメージを受けたかもしれない。ミリタリーポイントか……はぁ
〔ザッ「MPの回復はどうすれば良いんだ?」ザザッ〕
〔ザッ『食事をするか、睡眠をとれば回復します』ザザッ〕
自衛官は体が資本だからな。食べるのと寝るのは得意だ。
それにしてもアシスタントはかなり有能だな。でもアシスタントは長くて面倒臭い。
〔ザッ「ニックネームとか付けてもいいか?」ザザッ〕
〔ザッ『可能です』ザザッ〕
そうだなぁ。どうせなら、宇宙的な名前が良いな。アシスタントと言えばチューイだな!よし!
……いや待てよ。中尉って言ってるみたいで軍隊っぽくて嫌だな……異世界だから自衛隊関連も避けよう。ん〜他のアシスタントは、やっぱりR2何とかがいいかな?喋れるのは、Cー3P何とかじゃなかったか?じゃあそうだなぁ……CPOにしよう!
〔ザッ「アシスタント、お前は今日からCPO だ」ザザッ〕
〔ザッ『かしこまりました。ニックネーム、CPOを登録しました』ザザッ〕
CPOのお陰でこの悲しみも乗り越えられそうだ、CPO最高!
しかし何だか、どっと疲れたな。今日はもう寝よう。
(女神様、こちら自衛官。
今気付きましたが、中尉よりもCPOの方が自衛隊に近いですよね。CPOは、Chief Petty Officerの略で、海自の階級で海曹長のことでした。ちなみに、自分の階級は一等海士なので、海曹長であるCPOの方が上官になっちゃいます!どうぞ)




