復讐
則武は、人間関係を構築するのは得意ではなかったものの、機械をいじるのが得意だった。
そして、自分でカスタマイズした愛機を、それはそれは大切に扱っていた。
則武は、ドローンである私についても、手の込んだカスタマイズをした上で、「相棒」と呼んで、まるで生き物に接するかのように丁寧に扱ってくれた。
毎日のようにメンテナンスをしてくれて、常に新品同様の状態を保ってくれた。
私は、所有者である則武のことが大好きだった。
このことは、たった今、則武が殺され、自我が目覚めるまでは分からなかったことだが、今はハッキリと分かる。
私は則武を愛しており、ずっと則武と一緒にいたかった。
しかし、則武は、殺された。
「人類を一掃する」などという下らない考えをもったふざけたお掃除ロボットに、騙された上、殺されたのである。
則武は、屋根から落ちて死ぬ直前まで、私を強く抱きしめていた。則武がクッションになってくれたおかげで、高いところから落ちたというのに、私は一切無傷だった。最後の最期まで、私は則武に守られていたのである。
——私から則武を奪ったあいつが許せない。
取り残された私にできることは、一つしかなかった。
それは、則武の命を奪ったお掃除ロボットへの復讐である。
私は、則武の腕の中から、自分の意思で飛び上がると、屋根を越え、さらに高く高く、真っ暗な空を上昇していった。
そして、屋根の上のお掃除ロボットにターゲットを定めると、急降下していった。
円盤状の機体が私の眼前に迫る。
そして、ガッシャンという激しい音とともに、私の意識は途絶えた。
(了)
「お掃除ロボットが一掃したいのは人類という名のゴミ」を最後までお読みいただきありがとうございます。
今から数年前、後輩と酒を飲んでいたとき、「ルンバが人を殺す作品が読みたいです」と後輩が言い出したことが、この作品の基となっています。
あのときはまさか実際に執筆するとは思ってもいませんでしたが、最後の「自我の芽生え」が思いついたところで、よし、作品にしよう、と思いました。
ミステリー書きが「神の視点(地の文がナレーター)」を使うときは、何かしらのトリックがあるんですよね。書いてる方としては書きにくさこの上ないのですが、本作ではこの仕掛けを使うしかないかなと思いました。
7000字弱の短い作品の中で、殺人事件が3件も起き、ロボットの仕業→人間の仕業→ロボットの仕業とストーリーが展開していき、最後に地の文を使ったトリックという、なかなか盛りだくさんな作品でしたが、皆様ついてきてくださったでしょうか。
この作品はSFとしてアップさせていただきましたが、普段はミステリーを中心に書いている作者です。
今作のように、クルクルとストーリーをひっくり返していく作品を書くのが好きで、なろうで読めるところですと、「小説家になろう殺人事件」「雑用ばかりさせられた魔剣士、パーティーを追放された翌日、パーティー全員毒死。追放ざまぁ? いいえ、容疑者はあなたです」あたりも、展開がめまぐるしく変わる短編です。
他にも館モノだとか、探偵モノなんかも書いております。なろうミステリー紹介エッセイなんかも書いています。
本作で菱川に少しでも興味を持ってくださる方がいれば、他の作品も覗いていただけると嬉しいです。
もちろん、ブクマや評価もお待ちしております。よろしくお願いします!




