寝ても覚めても、醒めない現実へ
人知れずに埋もれてしまう過去に。
掘り下げてしまう未来への扉を。
鍵を握るのは君なのかもしれないね。
◆
人差し指を差して翁を返せと藤太は言った。
それに百足も背中の翁を横目に見て、
「ああ。分かったよ」
苦笑交じりに頷いた。
それに藤太も百足に向かい腕を伸ばして。
ずっしりと重いように見えた、割と軽い翁を受け取った。
「おかえり、ダンマルちゃんw」
前から抱きかかえる格好に藤太はなった。
その様子に、
「私は今日から、その子を雇うことにした食事何処みんみんの亭主、百足蝉だよ。お兄さん」
百足も肩を竦めて指を差した。
「お兄さんからの許可を取った方がいいのかな? 一昨日に入社したんでしょう? いいのかなって思っちゃうんだよね。私は常人の大人なので」
目を細める百足に藤太もほくそくむ。
「っは、っははは! 私、そんなに兄バカなんかじゃありませんけど? こいつも19歳って歳なんだし、自分のこたぁ自分で決めるだろぉさw」
背中をトントンと叩く藤太。
表情は変わらずに笑顔だ。
ズリ落ちそうになる翁を持ち直す藤太。
それを見守る百足に、
「この部屋は、君も知るように《群青双竜》から友達で同居人でもある百目鬼君が借りていて、間借りする格好で住んでいるんですよ。私は別に部屋がありますが、こいつと一緒じゃあねw 都合が悪いからwwww」
藤太は顔を翁の頭に乗せた。
至って、どこにでもいるような兄弟だ。顔は、全く似ていないが。
「また。明日からドンドン、働かせますから♪ よろしくお願いします♡」
お辞儀をして立ち去ろうとする百足に、
「百足さん。知ってますか? この世の中、顔がそっくりなのは、あと2人はいるって話しを」
よくも分からない話しを藤太が振った。
「? ああ、まぁー~そりゃあ? え?」
首を捻って当然の会話。
だが、それを続ける藤太に百足も目を細めていく。
「入社式に。こいつに似た社員を見ました。だから、彼を見たら気をつけて下さいねw こいつとは全く性格が違いますからwwww」
「ふぅん。ご忠告ありがとう、それじゃあおやすみなさい。藤太君、ダンマル君」
◆
帰って行ったのを確認すると。
「っだ、っはぁあああ~~っっっっ‼」
大きく息を吐き抱きかかえた翁共々。
床に腰をついた。
「翡翠ぃいい~~っっっっ!」
家に帰ろうとしたときに。
早乙女ミドリこと群青翡翠から連絡が入った。
◇
――『直ちに《尾田ダンマル》を迎えに行け。勿論、偽物の方のだ、っぜぇw』
◆
深くは訊かなかった。
訊く必要もなく、どうせ碌でもないことだと分かっていた。
拒否ってもいいとは思ったのだが。
(今後のいい貸しになるしなwwww)と思い。
一役を買ったのだが、演じるのもしんどいと思ったが。
そんなしんどくも重い。
演じる道を選んだ翁を藤太も見下ろした。
「馬鹿な奴だなぁ、表ちゃんは」
優しく髪の毛を触ると、弟のダンマルとは違い猫毛で。
柔らかいことに、違う人物なんだと改めて感じた。
「でも。路は開かれたからあンたは間違ってなんかいないよ? 本当さwwww」
ここで藤太の携帯が鳴った。
眉をひそめて液晶を見ればだ、
「あっちゃぁー~~本物w」
肩を落としてスライドさせた。
「もっしも~~し。お兄ちゃんだよー」
携帯の向こうのダンマルは荒ぶっていた。
原因は手の内に在る翁である。
『フリをされたんです!』『電話も着拒否にされたんです!』『喰ってもいいですかッ!?』
喚く本物が。
「え? 俺は今、本しゃー……いや。もう《骨壺》に乗るしwwww 悪いなぁ~~あ! 電波がっっっっ‼」
少し素性を探って欲しいだのと言ったところで電話を切った。
家に帰っても五月蠅いであろうダンマルを思い起こし。
翁を見下ろして鼻息を吐いた。
「本当に似てないったらないw」
改めて抱きかかえ直して。
リビングのソファーの上に置いた。




