9:試験日のママ
私、シアン・ブラフォードには夫と娘がいる。
素敵なシュンとかわいいニーナ。
夫に出会うまでは私は一人でいること何も違和感を感じていなかった。
しかし、私の罠にかかって死にかけていた夫に出会ってから私の生活は激変した。
治療する際に、私好みに顔をいじったことに何も言わないでくれる彼。
私に結婚しようと言ってくれた。
それ以来私は周りのすべてが輝いて見えている。
今では彼が隣にいないなんてことは考えられない。
私は外の世界に興味はなかったが、彼がこの世界を知りたがったので、二人で世界中を巡った。
手を出してくる者は叩き潰したし、仲良くなった者も多い。
今なお付き従ってくれる者もいる。
世界を巡っているうちに、私たち夫婦にかなうものなどほとんどいなくなっていた。
そんな私に二つ目の転機が訪れる。
ついに子供に恵まれたのだ!
彼と一緒になってはや数百年、やっと授かった一人娘
名前はニーナ・ブラフォード
かわいい名前だ!
私の眷属になってくれた素敵な旦那様と不死王の私との愛の結晶!!
自分の子供がこんなにも可愛いとは思わなかったわ。
夫は年賀状に写真を載せるのがどうこうと言っていたが、年賀状や写真ってなにかしら。
そんな私の日常はとってもシンプル。
生活にかかわることは夫がやってくれている。
私の仕事?・・・夫と娘を愛でること!
あとは、
私の家族に危害を加わる者の処理かしら。
私たちのかわいいニーナが学校に行きたいと言い出したのが、3年前。
生まれる前から夫が発動していた「ニーナちゃん学校へ行こう計画」に沿ってできる限りの布石を打ってきた。
まずは安全な都市として帝都を作り上げ、都の地下には巨大地下迷宮を作った。
これは緊急時の避難場所に使えるし、地下2層以降には私の配下が大勢住んでおり安全な戦闘経験が積めるように作り上げた。
そう言えば、この都を作った時のあの小さな子供が今やこの都の帝、もう今ではもうおじいちゃんになっているらしい。今度会いに行ってみようかしら。
安全が確保された都に学校も作った。
ニーナが学校に行きたいと言い出してからは、3年がかりで学校を改装、女の子に優しい作りに変えた。
女子向けの食事スペースやお手洗い、シャワー室など完璧に匠の技で仕上げたわ。
学校の運営はマティアナックに任せている。
ニッポンよりさらに南を旅していた時に出会った女の子。
青白い肌、長い髪でいつも白い服を着ているちょっと変わった子かな。
悪い男の子を殺しちゃったりする吸血幽霊?だから、学校は安全ね。
ニーナの試験の日、私と夫は家で帰りを待っていた。
彼は娘の好きな料理でお出迎えするためにエプロン姿で料理にいそしんでいる。
こんな素敵な彼に出会えた私は幸せ者だ。
あとはニーナが帰ってきて笑顔を見せてくれるだけ。
だのになぜ!
試験から帰ってきたニーナはお帰りのハグのあと、ダメだったかもと力なく微笑むと自室へ入ってしまった。
「私にまかせて、あなた」
夫に声をかけると私はニーナを追って部屋へ向かう。
ニーナに話を聞くと実技試験で力が出し切れなかったのが残念だったようだ。
まあ、ゼフィに勝てる相手なんてそうそういないものね。
「パパが毎日稽古つけてくれたのに、申し訳なくて・・・パパに試験やり切ったって言えないよ」
力なく肩を落としている。
部屋の外ではゼフィが夫に必死に弁明している声が聞こえてくる。
神さえも凌駕する力を持つフェンリルが形なしだわ。
「ウォン、ウォン、ウォン(実技試験で華麗に頑張ったのだ)」
「ふむ」
「ウォン、ウォン(試験官に勝利したのだ)」
「ふむふむ」
「ウォン、ウォン、ウォン、ウォン(誰一人殺してないし、合格させるよう脅しといたのだ)」
「ふーむ、ふむ、なるほど~」
「ウォン!(わかってくれた?!)」
夫は相槌を打っているみたいだが、彼は魔獣語は話せない。
哀れゼフィ・・・がんばっ!
「ニーナ、あなたが残念そうにしていることを、一番パパが残念に思ってるわ。
あのまま放っておいたら、パパさみしくね泣いちゃうわよ。」
ニーナはしばらく下をみてうつむいていたが、パッと顔を上げて笑顔を見せると
「そうだよね。おなか減っちゃった。」
と言って、言葉とともにおなかがぐぅ~と鳴った。
「パパを励ましにいきましょう!
パパがあなたのために、腕によりをかけてごはん作ってたのよ」
二人で部屋を出ると、夫はは愛用の大槍を肩に担ぎ、ゼフィと今まさに世界を滅ぼしに向かうところだった。
「ニーナをしょぼんさせたこの世界に全面戦争じゃーーラグナロクのはじまりじゃ〜」
相変わらずかわいい旦那様だ。
「パパ!晩ご飯まだ?今日はお腹空いちゃった。」
ニーナはバツが悪そうに声をかける。
私は最愛の夫に
「あなた、ご飯にしましょ」
と声をかける。
元気になったニーナを見た夫は満面の笑みを浮かべる。
「今日はニーナの好きなハンバーグだぞー!」
本当にわかりやすくてかわいい旦那だ。
ぜフィのお腹がグーッと鳴ったのを聞くと、
「お前もペコペコか~」
と彼はスキップしながら台所へ走って行った。
「((うふふっ))」
私とニーナは目を合わせて微笑んだ。
その後、試験の話を聞きながら3人と1匹で楽しい晩御飯をを食べた。
さて明日は学校を任せているマティアナックに試験の様子を聞きいてみようかしら。
学校の出来具合も最終チェックしなくちゃいけないしね。




