85ドラゴンブレス13
「そもそも、どうして負ける事前提で話しているのですか?そのセーラさん?に勝利してしまえば、問題は無いのでは?」
タレ目さんから放たれた素朴な疑問。
その意見は最もな事だけれども。
「無理さ」
「確かに難しいな」
「どうしてです?どう見ても勝てそうですが?」
タレ目さんは城塞都市のほうを見て、勝ちを確信している。
巨大な筋肉達や、大盛り上がりの山賊モドキ。
確かにあの様子だけ見るなら、そう思っても仕方無い。
だが俺は知っている。
『セルバンテスが………』
カルナと俺の声がかぶった。
だが、そうだ。セルバンテスがなぁ。
「セルバンテスって奴がいて、アレに勝つのは無理さ」
「ドラゴン様でもですか?」
「普通の方法だとまず無理。本気を出して、寿命削る気ならなんとか」
「無理さ。あんたセルバンテスの強さを知らないさ」
「知ってる。一度逃げ切ってるし、あいつのライバル一人食べてるし」
あれは、あまりいい記憶では無いな。
「ちょ、ちょっとあんた。いったい何してるのさ?」
「前にカルナにくっついてここに来た時に、セルバンテスに見つかって殺されかけた」
「私にくっついてって。いや、ホントに、あんた何してるのさ?」
ぬ?確かに俺何してたんだっけか?
………ストーカー?
白虎装備にあてられて、ゴッキー姿でハイになってたからな〜。
「カルナくらい可愛ければ、ストーカーの一人や二人に追い回されるのは当然だよな」
「な、あんた私のストーカーだったの?」
「まぁまぁ。あらあら。じゃあカルナ様は、今ストーカーさんに捕まってしまっているのですね?」
カルナの顔は見る間に青ざめる。何かストーカーに嫌な思い出でもあるのか?
「は〜な〜せ〜」
カルナはジタバタ暴れ始めた。
「安心しろ。ストーカーってのは冗談だ」
「本当に?」
「本当にだ。俺はただ、ゴキブリに化けて、カルナにくっついていただけだ」
「ちょっとあんた。本当に何やってくれてんのさ?」
「懐かしいな。ゴッキーになってカルナにくっついて、セルバンテスに見つかって、セーラの髪の毛に隠れたんだっけか?」
いつの間にか思い出になってるな。
「本当の本当に何やってんのさ?は〜な〜せ〜」
「暴れるな」
「ゴキブリに変身するような奴に触られたくないさ〜」
「私もゴキブリはちょっと」
女二人が逃げ出そうとするが離さない。
「あんまりワガママ言うと、このまま人間サイズのゴッキーに変身して壁ドンしてやるぞ。良いのか?」
「ちょっと本気で言ってる?」
「ひぃ………」
もちろん冗談だ。そもそもデカイゴッキーになど、一度も変幻できた事などない。
ハッタリだが、そんな事を知らない二人には有効だった。
ピタリと暴れるのをやめた二人。
やっぱりGは最強ではあるまいか?
「ヒャッハー。門が開いていくぜ」
「なに?」
筋肉達が開けようとしている。城塞都市の巨大な門は開いていない。
しかし別の小さな門が、開きはじめていた。
大きな門があるような建物には、門は一つでは無く、大きな門の側に大抵小さな門もついている。
ただし、小さな門の方が非常時にはガチガチに補強されて、それを、こじ開けることは大門を、こじ開けるよりも遥かに難しい。
その小さな門が内側から開いていた。
「あああ。きっとセルバンテスが出てくるさ」
「むう。遂にくるか。やっぱり、さっき上から、こっち見てたのはセーラだな」
「まずいさ。きっと私のいる場所を確認できたから、セルバンテスを、ここに差し向けたはずさ」
「げぇ。ここ目指して来るのか」
迎撃しなくては。
そうだ、ブレス。ブレスなら何とか。
この場所から城塞都市までは、かなりの距離があるが、昨日からのブレスの試し打ちでは問題無く狙える距離だ。
セルバンテスがあらわれても、筋肉やらヒャッハーに気を取られているうちに、遠距離から、狙い撃ってやる。
「セルバンテスが姿を見せたら、ブレスで一撃だ。って。あ、あれ?」
しかし、扉から現れたのは、セルバンテスではない。
鮮やかな金髪の女性。前に見たときよりも、顔色が良くなったセーラだった。
「あああ。や、ヤバイさ。セルバンテスよりも恐ろしい魔物が現れたさ。ブレスを。早くブレスを撃ち込むのさ」
おいおい。カルナ。お前達のモラルとか姉妹愛とかどうなってんだ?
「ヒャッハー。美女がでてきたぜ〜。早いものがちだ〜」
「ミギャン」
鮮やかな金髪のセーラを見て興奮、突撃していくヒャッハーへ、
人間形態の俺から放たれたレーザーの様なブレス。
そして爆音。
セーラに突撃していった、モヒカンヒャッハーは、ブレスの直撃を受けて高く空へと舞い上がった。
「下手くそ。姉さんに当てるのさ」
俺の右腕で暴れるカルナ。
いや、ヒャッハー狙ったのであって、
セーラに当てる気は無いよ。
本当にカルナは一度、セーラに怒られても仕方ないと思う。




