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83ドラゴンブレス11


「なんで人間が巨大化できるんだ?」

 

 巨大化した筋肉達の理不尽さに天を仰ぐ。


「きっと、そういうスキルを持ってるのさ。あんたアイツ等に指導者とか呼ばれてるのに、知らなかったの?」

「ああ、知り合ったの最近だし。変身できるとか冗談かと、でもそうか、スキルか」

「そ、そんなことより。どうして私は抱きかかえられてるんでしょうか?」

「私も、おろして欲しいさ」


 できるなら両手で頭を抱え込みたい状況だった。

 俺は右にカルナ。

 左にタレ目女と両脇に美女を抱え込んでいる。

 だが、離せと言われても、もう少し事態が落ち着くまでは離さない。離したくない。

 精神安定の為の、抱きまくら的なアレだ。

 目の前の光景の酷さに、精神安定剤が必要だったのである。


 美女2人のいい匂いと手触りのおかげで、

 若干他の奴等よりも、立ち直るのが早かったせいもあるが、

 正直そうでもしていないと、正気を保てそうに無い。

 俺まで頭が脳筋になるか、ヒャッハーになりそうだ。


 目の前では巨大化したイケメン筋肉3人が、

 にこやかに微笑みながら、大暴れしている。

 なんだ?これ?

 それをノリノリで応援する上腕二頭筋の女。山賊モドキ。モヒカンヒャッハー。


 目の前には地獄絵図が広がっていた。

 城塞都市の巨大な門を、にこやかな笑顔で開け開けと押し開けようとする巨人な筋肉三人衆。


「わっしょい。わっしょい」


 その周りを、山賊モドキが好き勝手に取り囲み、巨大化した筋肉達を応援する奇声をあげている。

 さらにモヒカンヒャッハー達が、


「ヒャッハー。最高にヒャッハー。巨大化ヒャッハー」

 

 とか、謎のハイテンションで叫んでる。

 ここは魔界のサバトか?

 何処の地獄絵図だ?


 なんの因果か、おまけにこいつ等全員が俺の事を、

 お頭とか呼んでくる。

 だめだ。いろいろだめだ。気が狂いそうだ。

 人の上に立つとストレス凄いとかってこんななの?

 部下ってこんなんだっけ?


 目が血走って、くまの濃い顔をした、第三王子が頭に浮かんだ。今の俺の表情は、彼に近いと思う。


 正直、両手に美女でも抱え込んでないと、

 正気を保てそうにない。

 気持ちが張り裂けそうだ。

 脳筋とヒャッハーを、あわせたのが致命的だったのかもしれない。混ぜたら危険な馬鹿共だった。


 竜にかまける第三王子。

 歴史上酒地肉林にふける王様とか、きっと部下や、状況に恵まれなかったから現実逃避したのだろうな〜。

 今の俺みたいに。


 俺は死んだ魚の様な目をしながら、両脇に美女二人をはべらせて、ヒャッハーしている者達を眺めていた。

 筋肉の奮闘虚しく城塞都市の扉は開かない。

 これでは、いったいなんの為に、こんな状況になってるのか?

 こんな事なら、はじめからドラゴンブレスを撃ち込んだほうが、なんぼかましだったのでは無かろうか?


 いや、今からでも遅くは無いか?

 今からでも城塞都市の扉をブレスで砕ければ………。

 ………ヒャッハー等が城塞都市になだれ込むのか?

 阿鼻叫喚の地獄絵図が、今度は城塞都市の中で繰り広げられるのか?

 そして全責任を負わされる俺。

 ………指名手配される山賊ドラゴンの爆誕である。

 ………駄目だ。駄目だろ。それ。

 というか。今の段階で指名手配犯にされてもおかしくないのでは?


 ………ぷるぷると震える。

 俺は何も悪くない筈なのに、筋肉やヒャッハー共のおかげで、俺の竜生に前科が付きつつある。

 

 ………どうする?

 何もかも忘れて俺も脳筋になって、俺もヒャッハーするか?

 現実逃避して、両手に抱えた美女と酒池肉林にでも逃げ込むか?

 ………それとも、それともいっそ。

 危険な眼で、目の前で馬鹿騒ぎを続けるヒャッハー達を、見る。

 いっそ、全ての証拠を消し去ってしまえば。


 危険な目で愚かな自称部下達を見つめていると、

 ゾクリと背筋が震えた。

 何だコレは?

 見られている?

 視線を感じる。

 キョロキョロと周囲を伺う。


 遠い。が

 あ、目があった。

 城塞都市の上からコチラを見つめる金髪がいた。

 遠くの高い位置に居て見えにくいがセーラか?

 かろうじてみえた気がしたセーラのその目は、今しがたの俺の目よりも、さらに危険な色をしていた。

 

 右手に抱えてるカルナがガタガタ震えているのが、妙に気になった。


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