61アキリアとの再会2
筋肉達の拠点の中は、ある意味予想通りのものだった。
建物の中にいる者達は、皆、筋肉鍛えてる。
筋トレだ。
老若男女構わず、半裸で筋肉鍛えてる。
汗と筋肉と笑顔が漂う不思議マ、ソウル空間だ。
げんなりする。
「帰っていいかな?」
(駄目)
「お、おう。でも折角きたので指導者にあってくださいよ」
(とにかく脳筋たちが崇める御神体の所まで来てよ)
「わかった」
アキリアと筋肉二人の会話がダブって鬱陶しい。
福音スキルの弊害だな。
先導する筋肉について奥の方まで歩いていく。
「さあ、この部屋だ。指導者様がいらっしゃる」
「なんだか入りたくないなぁ」
ゴテゴテした扉がある。
ぶつくさいいながら、ゴテゴテした扉を開く。
中を見る。
扉を閉める。
何かいた。なんかあった。
「………………」
「どうかなさいましたか?」
「筋肉の像が何体か」
「おお、それは指導者様ですな」
「どういう事だ」
「まぁまぁ、よく見ればわかりますよ」
そう言って案内人筋肉は扉を開けて、
中へと入っていく。
後ろからついていく。
………なんか4体の筋肉像がある。
黒い禍々しい筋肉像。
きれいな女性の筋肉像。
スキンヘッド男性の筋肉像が2体。
どれもこれも仁王像を超えるマッスル像だ。
それらがポーズをとっている。
「ようこそ。我等がマ、ソウル教団へ。歓迎します」
「もう少し待つのじゃ」
『本日のポージングの練習が終わりますので」
筋肉像達がポージングをとりつつ喋りはじめた。
筋肉像は、人間だったのか?
三人とも
顔だけ見れば、傾国と言っていいほど整っているが、
首から下はビキニ半裸の仁王像。
………なんかもうげんなりする。
(ハハハ。ちなみに黒い像は僕だ)
唯一動かない、黒くて禍々しい筋肉像から、
アキリアの福音の声が届いた。
「どういう事だ?」
(この象は強力な神器なんだ)
「神器?」
神器ってなんだ?
聞き慣れない言葉だ。
(神が地上で活動するために使う依代)
「へ?」
(地上で使う分身というか、体の事を神器って言うんだ)
「へえ〜。その像も?」
(これは他の誰かが使ってた奴だろうけど、引き寄せられちゃって、出られなくなっちゃった)
「お前は高い所に登って、降りられなくなった猫か?」
(それに近いかなぁ。ほぼ動けないし、助けてくれ)
「………どうやって?」
(この像を壊してくれればいいんだよ)
「それは困ります」
それまでポージングを取っていた女筋肉。
彼女がアキリアの提案を却下した。
「てか福音聞こえてるのか?」
「もちろんです」
(この娘に福音スキル渡したんだよ)
「なぜ?」
(理由を話して助けともらおうとしたのさ)
「助けるのはノーです」
ポーズをとりながら、筋肉娘。
「何故だ?」
「折角。マ、ソウル様が降臨なされたのです」
(僕は慈悲深き女神アキリアだ。マ、ソウルじゃ無いよ)
「いいえ。私にはわかりますよ。貴方はマ、ソウル様です」
(この調子で帰してくれないんだよ)
「自力で突破できないのか?」
(かなり力を使えばできる)
「やれよ」
(こんな馬鹿みたいな事に、大量の力を使いたく無い)
「なる程」
「私共の神マ、ソウル様は、未来永劫ここで我等に加護を与えるのです」
(福音スキルあげたら、味をしめちゃって)
「うん。もうそれでいいんじゃないかな?そういえば、福音スキル持ってない人に、スキル譲渡ってアキリアできるの?」
(できない。福音スキルだけは僕の力を多少使えばできる。なのではじめに福音あげなきゃいけない)
「ほー。力使って、頼み拒否されて、ふんだりけったりだな」
(そうなんだよ。困ってるんだ)
「もうこのまま。ここで神として崇め奉られてろよ」
なんか面倒くさい。
ここに来ればアキリアに会えるわけだし。
このまま放置で良いかな。
(ちょっと待って、嫌だよ。そんなの)
「いやよいやよも好きのうちです」
(どうして君には会話が通じないんだ)
「お、おう。みろ。我等が指導者様を」
「マ、ソウル様と会話されておるのじゃ」
「羨ましいのう」
「新入りも会話に参加しておるのじゃ」
「な、なんと」
「新入りの筋肉が膨大なマ、ソウルを宿している証」
「我らも筋肉を鍛えてマ、ソウル様の福音を頂くのだ」
俺を案内してきた筋肉と、この部屋にいた仁王筋肉二人。
合わせて三筋肉がおかしな事を言っている。
誰が新入りか?
名誉毀損で訴えるぞ。
(とにかく彼等を説得なり、像を壊すなりしてくれよ)
「ごめん。無理そう」
「無理ではありませんよ」
「へ?なんで?」
「私達はならず者ではありませんよ』
「そうなの?」
「はい。私達に言うことを聞かせたいのなら、筋肉で言う事を。聞かせればいいのです。会話は無力です」
「会話無力、腕ずくって、ならず者じゃないか」
思ったよりも体育会系だった。
「そういう意味ではありませんよ」
「なら、どういう意味だ?」
「我々が信仰するのは筋肉。より筋肉にマ、ソウルを宿す者こそが正義です」
「おう。そうじゃ。筋肉が正義じゃ」
「筋肉とマ、ソウルを比べて、強い者に従うのだ」
「筋肉こそが正義」
3筋肉共も賛同する。
ある意味わかりやすいけども。
「つまりそこの筋肉姉ちゃんに、筋肉で勝てば良いのか?」
「そうです。私に勝てれば、どんな事も思いのまま」
「像を壊せと言えば、言うことを聞くのか?」
「もちろんです。全てはマ、ソウルの導きのままに」
(この娘ら、筋肉でしか決められない脳筋だから)
「なる程。脳筋の考えはわからん」
(より強くてカッコいい筋肉を見せれば従うんだよ)
「うんざりだな」
(そんな事を言わずにさ。変幻スキルあれば楽勝でしょ)
なる程。
変幻スキルでマッチョになれと?
あ〜それどうなんだろな。
不正じゃないか。
でも、楽に勝てるか?
やるしかないのか?
勝ちの決まった、この勝負。




