46第三王子陣営
第三王子陣営の者にさらわれる。
攫われる理由がわからなかったが、
どうやら第三王子はドラゴンマニアだった。
王子のその趣味を知っていた近衛兵が、
チゴヤ商会で見かけた俺を拉致したらしい。
とんでもない連中だ。
けしからん。
俺はやたら高そうな料理を両手にもち、
モグモグしながら憤った。
「ミギャ」
「はい。どうぞ」
声を上げると、
高級感漂う料理を可愛いメイドが持ってくる。
テーブルの上に乗ってナプキンを首からかけ、
両手にナイフとフォークを持って、
次の料理を待つ。
メイドが可愛い。
料理が美味い。
誘拐犯どもめ、けしからん。
モグモグ。
はじめは警戒心バリバリだった近衛兵は、
今や俺が何かする度に、頭を抱える。
もしくは笑っている。
俺が人間用のトイレを使用した辺りから、
奴等の俺を見る目が変わった。
むう。解せぬ。
ドラゴンに比べれば、人間など下等生物のはずだ。
ドラゴンがトイレやテーブルマナーを使って、
何がおかしい事がある。
その辺の所を延々とミギャミギャ説教してやった。
が、あまり理解してもらえない。
だがその結果、俺の食事にバナナが二本増えた。
どういう事だ?解せぬ。
どうやら、こっちの陣営の者は、
チゴヤ商会の連中よりも知能に劣る。
俺の言葉を理解出来ないどころか、勘違いまでする。
けしからん。
バナナの皮をむく。
モグモグ。
が、料理は美味い。けしからん。
欲を言えばレベルの高い魔物が食べたい。
ここの料理は美味いが、低レベル動物が材料だ。
いくら食べてもエネルギー補給効果は薄い。
ドラゴンゾンビ形態の回復はおぼつかない。
が、美味い。
けしからん。
スナック菓子をご飯の代わりに食べてるようなものだ。
しかし美味い。
けしからん。
高レベル魔物も食べたいが、伝える術がない。
人間に変幻すれば、会話可能だ。
けれど警戒度が跳ね上がるだろう。
そうすればここから逃げにくくなる。
ゴッキーに変幻すれば逃げるチャンスはある。
が 料理が美味い。から逃げられん。
けしからん。
「ドラドラちゃん、お待たせ」
「ミギャ」
第三王子は俺にドラドラという名前をつけた。
まぁそれはいい。
問題なのはこの王子の話、グチが多すぎる。
「聞いてよドラドラちゃん。ピースがさ」
また王子の妻ピースの話か、
王子のグチは哀れすぎて、聞いてられない。
蛇に狙われたカエルのグチを聞けたら、こんな感じだろう。
この王子は、そのうちきっと壊れるだろう。
目の下の濃いクマは、その現れだ。
………ここから逃げ出そうとしないのは、
この王子の存在がデカイ。
何か可愛そすぎてほっとけん。
王の直属であるはずの近衛兵が、
結構な数、王子につけられてる理由がわかった。
こう言うのもカリスマと言うのかもしれん。
モグモグ。
決して俺は美味い料理に釣られているわけではない。
「ミギャミギャ」
「わかったよ」
高レベルの魔物が食べたいと、王子に訴える。
王子からバナナを渡された。
解せぬ。




