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第20話「潜む獣性」

視点 : 3人称



 やむを得ず地に降り立った巨鳥へ、その隙を逃さず1頭のウルフが飛びかかった。喉元を狙った牙は、しかし寸でのところで躱され巨鳥の片翼の付け根へ食い込む。

 致命傷とはならなかったが、これで巨鳥の不利が決定的となった。


 ウルフ1頭を支えられず、巨鳥の体勢がグラリと傾ぐ。

 倒れこんでしまえばそのまま数に物を言わせて抑え込まれてしまうだろう。


 小屋の方からは女性の身を切るような叫びが届き、巨鳥は立て直そうと苦心しながら反射的に言葉を返す。


 その間に、更にもう一頭のウルフが地を蹴った。今度こそ、巨鳥の喉笛を捉えんと迫る。


 あわや均衡が崩れるかと思われたその瞬間。


――ッゴォゥ!!


 身のすくむような吠え声とともに、黒い影が巨鳥とウルフの間に割り込んだ。


 その場にいるモノたちがそろって動きを止める中、黒い影はそのままウルフの喉元を捕らえ、地に引きずり倒してとどめを刺す。


「“盾となれ”。」


 同時に、1人の青年が小屋から飛び出そうとしていた女性の前に駆け寄り、魔法を放った。


 そうすれば、ザワリと周囲の木々が反応したばかりか、瞬く間に土中から緑が顔を出し、急成長して彼女とその家を囲む。

 更には蔦や茎が、まるで獣らを捕らえようとするように蠢いた。


「アルフレッド様!?・・・ハクは、いえ、その魔物は・・・!」


 草木に隔てられながらも、女性――シリンが必死の声をあげる。


「ええ。僕はあなた方を守るだけです。あっちにも鳥型を攻撃する気はありません。」


 それに対し、アルフレッドは前方へと剣を抜きつつ返す。


 シリンへ襲い掛かろうと迫っていたウルフ2頭は、突然現れた草木の壁に阻まれ唸り声をあげている。

 やがて奴らの標的は青年に移るだろう。


「ひとまずウルフを始末します。少し待っていてください。」


 アルフレッドは油断なく正眼に構え、淡々と告げた。








 一方、ウルフを振り落とし体勢を立て直した巨鳥と虎、残りのウルフ2頭は互いに睨み合っていた。

 ただし、巨鳥は片翼に負荷がかかり、少し動きに支障がでている。


 仲間を1頭殺されたウルフらはまるで憤るような唸り声をあげ、体躯に勝る虎にも全くひるんでいない。


 虎は口元を赤く染め、仕留めた魔物が完全に息の根を止めたことを確認したのち、巨鳥を庇うように前へ出た。


 その眼光は1頭でウルフ2頭と張り合うほどに鋭く、しかし、ウルフとは対照的に至って静かだった。


 それだけに威圧感が際立つ。


『お前は・・・。』

 

 巨鳥もまた気圧されたように言葉を切る。

 だが、一方の虎は気負うことなく飄々と言った。


『噛まれたとこは大丈夫かよ。』

『・・・ああ、問題はない。』


 彼らは眼前の敵から一切注意をそらすことなく、最低限の言葉を交わす。


『そうかい。でも、ちょっと俺が相手変わるから、その間に休憩しとけ。』

『・・・頼むぞ。』


 巨鳥はわずかに迷った末、虎に託した。

 片翼の動きは制限されるが魔法を使うのに支障はなく、まだまだ巨鳥も戦闘可能だったが虎の足手纏いにはなるだろう。

 回復が先だった。


『任された。』


 一方の虎はいっそふざけているかのような明るい調子だ。


 本虎(ほんにん)は笑みを浮かべているのだろう表情で――実際のところ牙を剥き出しにした威嚇顔で――、まるで口上の様に高らかに言い放つ。


『さあさあ、今度は俺が相手だ、オオカミども。ネコ科とイヌ科、どっちが強いか勝負といこうか!』 


 そして次の瞬間――。

 

 虎の黒く銀を纏う巨体が、躍動した。


第20話「潜む獣性」

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