第二百六話 シルバーセカンド
ようやく今年一発目、いや~投稿間隔が空き過ぎて面目ない。ペコリ
○純白のバニーガール その4○
キラン
彼は落ちている指輪を拾い上げると天高く掲げた。
よせっ、やめるんだっ!
ギギギギ・・・
俺は何をしようとしている?
ギギギギ・・・
馬鹿っ、こんなのバレたら人生即終了だぞっ!
ギギギギ・・・
やはりダメか、もうこのウキウキはそう簡単には止まらないっ!
ギギギギ・・・
臨界点突破、最終緊急プログラム、レットイットビーが発動されました。
「今行くぞっ、欧州の名峰達ぃ!
レッツフォーリンらっ?!」
だがまさにその時、眼前の空間に突如金髪ダンディの姿がモヤモヤぁっと。
「ソフィアぁぁぁぁ!」
ちなみにこの瞬間転移はファミリータイズストーンというアメリカオハイオ州にあるキートンダンジョンでしかドロップしないレアアイテムの力、親兄弟の下へなら瞬時に移動できる。
とはいえその破壊確率は80%で相場価格は5万ドル(約775万円)、普通の探索者が気軽に使える代物ではなかったり。
「す~、す~・・・」
どうやら寝ているだけのようですね。
静かに横たわる女性の無事を確認すると彼はホッと胸を撫で下ろす。
コロコロコロォ・・・コツン
むっ、この指輪は・・・
かくして世界的な殺し屋が自首したという大ニュースが世界中を駆け巡る。
「チッチ、罪を悔いるのに特別な理由が必要かね?」
しかし彼は犯した罪こそ認めるものの背後関係に関する情報は一切語らなかった。
そして明くる日の夕方、とある空港では真っ黒なサングラスを掛けた金髪の美男美女がコンドルのイラストが描かれた連盟の専用機に乗り込んでゆく。
ともあれこれでしばらくは大人しくなるでしょう。
「にしても今回ばかりはお兄様が来てくれなかったら危ないところでしたわ。
あのままだったら今頃私はどうなっていたか」
「ひとつ言っておきますがソフィアさん、貴女は大きな勘違いをしていますよ」
勘違い?
「昨日私が駆けつけた時、あの場には眠っているソフィアさんと傍にあのリングが落ちていただけ。
今回の件に関して私は特に何もしていません」
「えっ、では誰が私を?」
「世界的な殺し屋を手玉に取る実力を持ちながらソフィアさんのピンチを知り得た人物。
この条件に当てはまるのは私以外ではミスター多田くらいでしょう」
「でもお兄様、あの時の私はバニー姿のまま意識を失い倒れていたのよ。
命を狙われているにもかかわらず毎日呑気にお気楽三昧の彼なら欲望に負け間違いなく私に襲い掛かっていたはずです」
「愚者を演じる道化、彼をそう報告して来たのは何処の誰でしたか。
監視者に愚かな姿を見せるのは彼の常套手段なのでは?
そして世界的な殺し屋に狙われていて尚その愚者の仮面を外す事なく2km離れたソフィアさんの動向を完全に把握とか。
むしろ私としては今すぐにでも彼をSSランクに昇格させたいくらいです」
嘘っ・・・あれが全てケント・タダの演技?
いいえ、彼が私を助ける理由なんて・・・あっ!
僕はこの間このウサギさんに危ないところを助けてもらったんです。
だが彼女の感情とは裏腹にその根拠はまだ新しい記憶の中で簡単に見つかってしまう。
「私が知る本当の彼はとても誠実な本物のジェントルマン。
受けた恩義には全力で応えてくれますし、レディの尊厳を踏みにじるようなマネなど絶対にしない男ですよ」
正直なところミスター多田のような男性を知ればソフィアさんの男性不信にも良い影響が・・・
なんて流石にそこまでは虫が良過ぎましたね。
それからしばらく二人は只黙っていた。
バサッ、バサッ・・・
フライトの時刻が来ると翼を羽ばたかせた鋼の機体はゆっくりと浮上。
沈みゆく夕日が小さくなる島国を眺めていたレディをセピアに染めているとその横顔には何時の間にか優し気な笑みが浮かんでいるのだった。
「ねぇお兄様、もし・・・もしもよ・・・」
「どうしたんですか?急に改まって」
「私がケント・タダにお付き合いしたいって言ったら彼は応えてくれるかしら?」
「なっ、ななななっ、いやミスター多田は止めておきなさい!
かっ、かっ、彼にはそう、既に蛯名っちさんという素敵な女性がっ!」
「お兄様嘘はイケません、彼が特定の女性とおつき合いしている様子は全くありませんでしたわ。
それにその蛯名っちさんを邪険に扱う様子なら何度もお見かけしましたし」
「えっ、それは本当ですか?ニヤリ」
突然とんでもないことを口走り始めた人類の最高傑作さんと不敵な笑みを浮かべるその兄。
上空20000mに達したコンコルドン号は超音速で飛び去って行った。
キィィィィ――――ン
一方そんなことなどつゆ知らず、今日も呑気にお気楽三昧な我らが主人公は・・・
「ふ~ん、桜は絵描きさんで円は自衛隊員かぁ」
「私は勿論茶屋の看板娘ですよぉ、かおるお姉さまは?」
「私はねぇ小学校の先生かな、定番でしょ。
あっ、ちなみに賢斗君は探索者じゃなかったら自分は何に向いてると思う?」
「そだなぁ、あっ、登山家?
俺ってほら、名峰の囁きが聞えちゃう方だし」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○シルバーセカンド その1○
おかしい、鉄也の野郎、あれからまるで連絡をよこさねぇ。
ひょっとして俺抜きで大和の探索を?
いや、アイツは石橋を叩き壊して渡らない超慎重派の堅物。
危険なSランクダンジョンにDDSFだけで足を踏み入れるとは到底・・・はっ、まさか賢坊達かっ?
くそっ、何とかみやちゃんの目を掻い潜り俺も飛び入り参加しなくてはっ!チラッ
「そういやあんたも探索者引退したんやし新しい仕事見つけんとなぁ」
えっ?一応コメンテーター的な仕事はあるし、それなりの収入はありますが。
「あっ、せや、探索者向けの学校でも開いて学長とかどうや?」
どうやと言われても・・・
「尖ったナイフと云われた俺が今更人にものを教えるとか向いてると思うか?」
「向いとる向いとる、何やかんや人望あるし口も達者な方やろ。
それに人間ちゅうんは暇だから余計なこと考えるんや」
ギクッ!
「ちゅうわけでこれ見といてな。パサッ」
「えっ、何これ、探索者スクールプロジェクトぉ?」
こんなもんにかまけてたら俺の自由時間が消滅するぞ。
「後進の育成は大ベテランの義務、若い子等のお悩みを豊富な知識と経験で解決してあげるんよ。
あっ、ちなみに嫌やいうたらうち実家に帰らせてもらうで」
「あっ、いや、みやちゃん、少し落ち着いて」
俺が求めるスリリングはこれじゃない。
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○シルバーセカンド その2○
金曜日の午後、DDSF本部の巨大倉庫にはDDSFが所有する小型乗り物系アイテムがズラリ。
うっひょ~、見たことない乗り物系アイテムがいっぱい♪
坊ノ岬沖ダンジョン調査は明日からなのだが現地拠点となるDDSF屋久島支部には前日入り、それに便乗させてもらうべくナイスキャッチの面々もDDSF本部までやって来ていた。
「そういや多田少年、お前さんには今作戦中に限りあそこにあるヤドカリンガーを貸し出してやる」
えっ、ホントぉ?!
「まっ、小型で一人乗りだがこいつは我々からの細やかな礼って奴だ」
はて、お礼とな?
「あの世界的殺し屋が小さな交番に突如自首した奇妙な逮捕劇、ありゃどうせお前の仕業だろ」
ほう、名探偵がこんなところに。
「で、その影響で連盟の兎も本部へ帰還、作戦前にこの展開は我々にとっても好都合ってわけだ」
えっ、嘘っ、ウサギさん帰っちゃったの?
う~む、是非ともカムバックをプリーズしたいところだが。
「で、どうすんだ?要らないってんならそりゃそれでかまわんが」
「あっ、要ります要ります、超要りますっ!」
何にせよ自分専用機とか胸躍る、まっ、レンタルですけどね。
「ねぇ大黒のオジちゃん、武蔵には何時乗れるのぉ?」
「悪いが武蔵に乗るのはダンジョン突入後だ、浮上して人目に晒すわけにもイカんからな。
まっ、今日のところは屋久島までクレイジーバットで空の旅。
明日海底のダンジョンまではあそこのドランクタートルで向かう、ちょいと乗り心地には難ありだがそこは勘弁してくれ」
ほう、あの亀さんにも乗れるんすね♪
とそこへ・・・
ブロロロロロロン、キィィ
厳ついバイクから降りた銀ピカマスクの男はSSのロゴが入った銀ピカマントをバサリッ。
「あれ、どうしたんすか?中山さん」
「中山さんではない、私はそう、ピンチじゃなくても現れる押し掛けヒーロー、シルバーセカンド。
この度危険なダンジョン調査に赴くと聞き及ばずながら馳せ参じてみたり。キメッ!」
ほう、中々斬新なヒーローっすね。
「チッ、ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ、ったく守衛の奴は何やってやがる。
ともかく契約もしとらん不審な覆面男を同行させるわけにはいかん。
とっとと帰ってくれ、シルバーセカンド君」
「なっ、契約なら今すぐ結べばいいだけの話。
Sランクに匹敵する私の力が不要とは何という頭でっかち」
うむ、惚れ惚れするほどふてぶてしい。
「あぁ~ん、だったらテメェの契約内容は善意の無償ボランティア、これなら今すぐ契約してやる。
ヒーローってのは一切見返りを求めねぇもんだろ」
「いやそこについては是非ともヒーロー格安プランをご提案させていただきたい」
おおっ!そんな魅力的なプランまで♪
「ったく、お前の代わりはもうとっくに手配済み、くれてやる予算なんざびた一文残ってねぇんだよ。
なぁ多田少年、お前からもこんな奴必要ないと言ってやってくれ」
「いえ、是非連れていきましょう」
「なっ、お前はいったいどっちの味方なんだっ!」
当然面白い方の味方です♪
そんなこんなでクレイジーバットはDDSF本部を後にした。
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○ダンジョンデバフ○
さてDDSF屋久島支部に到着すると近くのホテルにチェックイン。
今日はもうのんびり過ごす気満々のご様子だったが・・・
「いや~うちの先生に方角ステッキを持たせたら鬼に金棒。
大和だろうと何だろうとすぐ簡単に見つかっちゃいますって」
「えっへん♪」
「方角ステッキってお前等・・・チッ、仕方ねぇ、ここはこのシルバーセカンドが直々に特別講義をしといてやるか」
えっ、何の話?
「お前等が今耳に入れとくべきはダンジョンデバフについての情報だ。
このダンジョンデバフが何たるかってのはダンジョンに居るだけでジワジワとHPやMPが削られ気付けばステータスパラメータまでダウンしていたり。
はたまた魔力感知や気力感知が阻害され索敵やマッピング系のスキルやアイテムが機能不全を来す。
こんな複数のデバフ現象が一斉に起こりそのダンジョンの危険度をとんでもなく跳ね上げてしまう怪現象のことだ」
そりゃまた物騒な。
「で、この現象が引き起こされる原因についてだがそれは異常に高い魔素濃度、レッドラインを超えると今言ったようなダンジョンデバフ現象が発生する。
そしてその異常に高い魔素濃度を齎しているのがそのダンジョンに眠る超巨大乗り物系アイテム・・・なんてな。
この現象の事例自体は過去にいくつか残っているが、原因についてはあくまで俺の推測だ。
だがあの武蔵を発見した飽の浦では発見後ダンジョンデバフ現象は自然消滅しダンジョン内の魔物も弱体化、この持論を裏付けるには十分な体験だった」
おおっ、貴重な武蔵発見秘話っすか。
「それでシルバーセカンド、肝心のダンジョンデバフへの対策については?」
「そうだなぁ、HP、MPの減少については一定時間微回復が継続するスキルやアイテムを使うのが一番いい。
それがない時は多少の妥協案だがポーションをチビチビ飲んで満腹になる前に一旦帰還ってのを基本戦略にすれば対策自体はそこまで難しくない」
確かにポーション代が嵩みそうだがその対策ならすぐできる。
「それに引き替え妥協案も見当たらないのが探索に関する対策の方だ。
索敵やマッピング系のスキルやアイテムは普通魔力感知や気力感知で周囲を探っている、つまりダンジョンデバフの状況下ではこれらが使い物にならなくなる。
そこで唯一無二の対策になってくるのが心力系の千里眼スキル。
心の眼で遠くの状況を見ることができるこの能力は魔力感知や気力感知が封じられても一切影響を受けない。
周囲の魔物を把握するのはお手の物だし記憶系スキルとの併用でマッピング代わりにもなってくれる。
だがしかしコイツはそのスクロールが中々出回らんのが難点、オークションでも年に1回見掛けるかどうかって代物だ」
ほほう、千里眼スキルかぁ。
「で最後にお宝を探す手段についてだが頼れるのは直感や占いといった霊力系の能力くらい。
しかしこの手のスキルはレベルを上げなきゃ当てにできないモノばかり、即戦力で使えるとなると霊力の高さが能力に直結する陰陽術くらいだ。
とはいえこの陰陽術ってのも少し難ありでな、スクロール自体はこの屋久島にあるモッチョムダンジョンのラスボスも稀に落としたりするんだが、そのスクロールを使おうにも幽霊が居るとか真顔で言うような霊感の強い奴しか覚えられないらしい。
まっ、テレビなんかじゃよく見かけるがそんな逸材身近にはまず居ないだろ?」
いや、結構近くに居そうな気がする。ジロッ
「とまあ長々と話しちまったが対策としてはこんなもんだ。
一朝一夕じゃ無理だろうし・・・って急にどうした?お前等」
「いやちょっと今からそのモッチョムダンジョンに行ってみようかと」
次回、第二百七話 第六感系能力。




