第13章:牢獄のヒロインと真実の暴露
ルシアご愁傷さまです
ビブラス商会の崩壊は瞬く間だった。
強欲な商人とその娘は
帝国の地下深く、光の届かぬ牢獄へと繋がれた。
冷たく湿った石壁に囲まれた独房で
ルシアはドレスを泥に染め
床に座り込んでいた。
「どうして……、どうしてこんなことに。
私はヒロインのはずなのに。
課金アイテムだってあったのに……」
彼女の呟きは虚しく響く。
その時
牢獄の重い鉄扉がギギギと音を立てて開いた。
差し込んだ光の中に立っていたのは
まばゆいばかりのドレスを纏ったマリナベリーだった。
彼女の背後には
松明を手にした看守が控えている。
「あら、随分と惨めな姿ね。
『光と闇のらび♡リンス』のヒロインさん」
マリナベリーの声は
氷のように冷たく
そしてどこか楽しげだった。
ルシアは弾かれたように顔を上げた。
「え……? 貴女、今なんて……」
マリナベリーは優雅な足取りで牢の中へ入り
ルシアを見下ろした。
「驚いた? 私がその名前を知っていることに。
……貴女、転生者でしょう?」
「っ!」
ルシアは息を呑んだ。
まさか、この世界の人間が
「ゲームの名前」や「転生」という言葉を
知っているはずがない。
「やっぱりね。貴女の行動は
あまりにも不自然だったわ。
平民の身分で皇太子に近づき
ゲームの知識を使って
好感度を上げようとする……。
典型的な悪役令嬢(私)を陥れるムーブメントね」
マリナベリーはクスリと笑った。
「でもね、残念ながら
この世界は貴女が知る
ゲームのシナリオ通りには進まないわ」
「どうして……?
貴女が悪役令嬢で
私がヒロインのはずなのに……!」
ルシアは、縋るような目でマリナベリーを見た。
「それはね、……私も転生者だからよ」
「え……?」
ルシアは、唖然として口を
ぐうの音も出ないほどに開けた。
「石川みなみ。それが私の前世の名前。
私も死んでこの世界に転生したの。
そして、貴女が狙っていたシャリオッド様……」
マリナベリーは
牢の入り口の方へ視線を向けた。
「彼もまた、転生者なのよ」
「な……、何ですって……?」
ルシアは、信じられないというように首を振った。
「しかも、シャリオッド様は
私の前世の恋人なの。
私たちがこの世界で再会し
愛し合うのは必然。
貴女のようなぽっと出のヒロインが
割り込める隙なんて最初からなかったのよ」
マリナベリーの言葉は
ルシアの心の拠り所であった
「ヒロイン」というプライドを
根底から打ち砕いた。
「そんな……、そんなのありえないわ……!」
ルシアが絶望に打ちひしがれていると
牢の入り口に影が差した。
「みなみ、話は終わったかい?」
現れたのは、シャリオッドだった。
彼はマリナベリーを愛おしげに見つめ
その肩を引き寄せた。
「シャリオッド様……」
ルシアは、涙ながらにシャリオッドを見上げた。
しかし、彼の瞳には
かつて見たことのないほどの
冷徹さが宿っていた。
「ルシア・ビブラス。
君が我が婚約者に
そしてこの私に対して行おうとした不敬な行為。
その罪は、万死に値する」
シャリオッドの声は
牢獄の空気を凍りつかせた。
「私には、前世から
愛し続けてきた女性がいる。
君のような浅ましい女に
心を許すはずがないだろう」
シャリオッドは
ルシアを一瞥もせず
マリナベリーの手を取った。
「さあ、行こう。こんな場所
長くいるところじゃない」
「ええ、シャリオッド様」
二人は、幸せそうに微笑み合いながら
牢獄を後にした。
背後からは、ルシアの絶望に満ちた叫び声が
いつまでも響き渡っていた。
お読み頂きありがとうございます
次回もお楽しみに♡




