第10章:危険なアイテムと公爵家の影
裏社会が動き出します
ダンスパーティーから離れ
シャリオッドとマリナベリーは
壁際で二人の時間を過ごしていた。
二人の間には
前世の「和哉」と「みなみ」としての
絆が完全に修復されていた。
「和哉、……いえ、シャリオッド様。
少し真面目な話をしてもいいかしら?」
マリナベリーは真剣な眼差しで、彼を見つめた。
「ああ、何だい? みなみ……いや、マリナベリー」
「この世界は
私が前世でプレイしていた
『光と闇のらび♡リンス』という
乙女ゲームの世界なの。
本来のシナリオでは
私は貴方に捨てられるはずだった……
でも、今はもうストーリーが壊れているわ」
彼女は、ルシアが使おうとしていた
香水の正体について語り始めた。
「さっきルシアがつけていたあの
不自然な香水。
あれはゲームの『課金アイテム』なの。
人の理性を狂わせ
強制的に好感度を上げる――
『魅惑の香水』よ」
シャリオッドは不快そうに眉を寄せた。
「道理で、あの匂いを嗅いだ瞬間
吐き気がしたわけだ。
魂が拒絶しているような感覚だったよ」
「問題は、あんな危険な代物が
この世界に実在していることよ。
課金アイテムは他にもあるはず。
もし他の誰かが、もっと強力な
『隷属の首輪』や『記憶消去の薬』なんてものを
手に入れていたら……」
マリナベリーの言葉に
シャリオッドの表情が険しくなる。
皇太子として
国家を揺るがしかねない
魔道具の存在は見過ごせない。
「それは放置できないな。
……だが、表の騎士団に動かせる案件じゃない。
魔法騎士団でも感知できない
『闇の魔力』が絡んでいる可能性がある」
「ええ、だから
……我がバレンティノ公爵家が贔屓にしている
『ダニエル商会』に頼みましょう。
彼らは裏社会の流通にも精通しているわ。
毒をもって毒を制す
……彼らに市場の『課金アイテム』を特定させ
処分させるのよ」
数日後、バレンティノ公爵邸の密談室。
呼び出されたダニエル商会の主・ダニエルは
マリナベリーから差し出された
「課金アイテム」のリスト
(ゲーム知識を総動員して書き出したもの)を見て
額に脂汗を浮かべた。
「……お嬢様、これは……。
正直に申し上げまして
我らダニエル商会でも
これほどまでに邪悪な法力を持つ品は
扱っておりませぬ。
というより、恐ろしすぎて手を出せませぬ」
ダニエルは、裏社会の掟さえ超越した
「理をねじ曲げる力」に恐怖を感じていた。
「これらは、使う者の精神をも蝕む禁忌の品……。
もし、あのビブラスの親父がこれに
手を出しているとしたら
商売どころか帝国の均衡が崩れますぞ」
ダニエルは立ち上がり、深く頭を下げた。
「承知いたしました。
バレンティノ公爵家の名において
裏の全ネットワークを使い
これら『呪物』を市場から排除いたします。
ビブラス商会がこれらを隠し持っている証拠を掴めば
奴らを一気に叩き潰す絶好の機会でもありますな」
「頼んだわよ、ダニエル。
これは帝国の平和を守るための戦いよ」
マリナベリーの冷徹な微笑は
かつての「我儘令嬢」のものではなく
愛する人と国を守ろうとする
「公爵令嬢」としての矜持に満ちていた。
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