表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/7

第1賞:運命の口付け

よくある乙女ゲームの世界の話ですが、ちょっと設定を捻りました


マリスリス帝国。

その名の通り、冷徹な皇帝カルロッタと

「氷の令嬢」と恐れられた皇妃シルクが統治する

規律と秩序を重んじる国である。


皇帝夫妻は

民の前では完璧な品位と微笑みを絶やさない。


しかし

その微笑みの裏にある冷徹さは

誰もが知るところだ。


彼らが心からの笑顔を見せるのは

家族、そして彼らが唯一認めた存在

バレンティノ公爵家の令嬢マリナベリーに対してのみであった。



バレンティノ公爵家は

建国以来帝国の重鎮として君臨する名門中の名門。

その一人娘であるマリナベリーは

幼い頃から両親に溺愛され

周囲から甘やかされて育った。


結果、彼女は手に負えないほど我儘で

その性格はきつく

誰もが彼女の機嫌を損ねることを恐れていた。




そんなマリナベリーが6歳の時

皇帝カルロッタの嫡男

皇太子シャリオッドとの婚約が決まった。


シャリオッドは

両親の冷徹さを受け継いだかのように

幼い頃から一切感情を表に出さない少年だった。


その瞳は常に凍てつき

周囲の人間を寄せ付けない冷気を放っていた。


婚約の儀の日。

広大な謁見の間に

緊張した面持ちの貴族たちが集まっていた。


その中で唯一

6歳のマリナベリーだけは

退屈そうに唇を尖らせていた。



「つまらないわ。

どうして私が

あんな石像みたいな人と

結婚しなきゃいけないの?」



彼女の声は、静寂を切り裂くように響いた。


公爵夫妻は青ざめ

周囲の貴族たちは息を呑む。


その時

シャリオッドがゆっくりと

マリナベリーの方へ歩み寄った。


その凍てつくような瞳が

マリナベリーを捉える。


周囲は、皇太子が激怒するのではないかと

戦々恐々とした。


しかし、次の瞬間

誰もが予想だにしなかった光景が繰り広げられた。


シャリオッドの顔から冷徹さが消え去り

そこには蜂蜜のように甘く

春の陽だまりのように温かい

優しい笑顔が浮かんでいたのだ。


「マリナベリー様」


彼の声は

これまでに聞いたことのないほど深く

そして優しかった。


シャリオッドはマリナベリーの前で静かに膝をつき

彼女の小さな右手を取った。


「私が、貴女を一生守り抜くことを誓います」


そう言って、彼は彼女の手の甲に

熱く、そして優しい口付けを落とした。



その瞬間、マリナベリーの世界は一変した。


これまで誰からも恐れられ

遠巻きにされてきた彼女に

これほどまでに優しく

温かい笑顔を向けてくれたのは

彼が初めてだった。



シャリオッドの笑顔と

手の甲に残る温もりに

マリナベリーの心は一瞬にして撃ち抜かれた。


「……っ」


彼女の顔はみるみるうちに真っ赤に染まり

心臓が爆発しそうなほど高鳴った。


一方、シャリオッドもまた

真っ赤になって俯くマリナベリーを見て

胸の奥から湧き上がるような

愛おしさを感じていた。


(何て、可愛いのだろう……)


彼は、両親から

「婚約者には優しくするように」と

言われた通りの行動をとったに過ぎなかった。


しかし、その行動の結果

彼女が見せた羞恥と戸惑いに満ちた表情は

彼の凍てついた心を溶かすのに十分だった。



この日、二人は互いに恋に落ちた。


それは、冷徹な皇子と我儘な令嬢という

あまりにも対照的な二人の間に生まれた

純粋で、そして狂おしいほどの愛の始まりだった。




お読み頂きありがとうございます

次回もお楽しみに♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ