第9話 夜と朝のハイバーチューン その4
前の日に見つけたブンボーフエの店をようやく見つけ、2度目の朝食。中心部に戻りビールで最後のひと時を楽しんだ後、いよいよ次の目的地タイのバンコクへ向かう事になった。
4
店長と料理長は、早速よさそうな店を物色。看板に表示されていた“ブンボーフエ”と“ミークワン”という麺を食べようと、ある店に入り、注文。
1人目にミークワンが来たので、次はブンボーフエだと思っていたら、屋台の人が同じ黄色い麺を入れようとする。
料理長が「ブンボーフエ、ワン」と何度も説明するが、行動は同じ、予想通り同じミークワンが来てしまった。
このまま、諦めて食べようかと思ったが、
やはりどうしても“ブンボーフエ”が食べたかったので、店員に抗議すると、ようやく相手がわかってくれたのか、取り替えてもらえる事になった。
どうやらブンボーフエの言い方のアクセントが悪かったようで、正統な言い方をすれば相手もすんなり理解してもらえた。
言語能力の弱さを痛感したものの、どうにか念願のブンボーフエを食べる事ができたのだった。
出された香りは、正に期待していた“ブンボーフエ”そのもの。
牛骨と豚足スープのコクの深いスープとパスタのような太いブン(米麺)
「昨年、イベントの大阪のアジアフェスティバルや東京のベトナムフェスティバルで屋台を出した時の味そのものだ!」
店長は思わず感激した。
ブンボーフエは、店長がベトナム料理の中で最も好きな食べ物であると同時に、昨年店で屋台出店した味そのもの。
いや厳密には60cmの寸胴鍋を使ったイベントの屋台のほうが上かもしれない・・・。
そういう自惚れをも感じてしまった。
「今のところ店で出している料理は、どれも本国と対等の味になっていてほっとしたわ」料理長も満足そうであった。
ブンボーフエを堪能した後、目の前にアオザイ屋のお店が2軒並んでいた。
直感で、1つの店に入り、アオザイを注文。
先ほど市場で見つけたのと同じ布地を見つけ、
完成まで3日で出来るという。
「これなら、次に戻ってくる時に引き取れるわ」この店でアオザイをオーダー。
料金は50万ドンで前金として30万ドンを支払った。
料理長は嬉しそうに、アオザイの寸法を測ってもらい、3日後を楽しみにその店を出た。
「のこり1時間、どこかのカフェにでも行こうか」料理長の提案だったが、時間も押し迫ってきたので、ホテルの近場である昨日の高級ホテル群のところまでタクシーで移動した。
タクシーで昨日と同じカラベルホテルの前に着き、「どうしようか」とあたりを見渡すと、
“LION”の文字が。
「せっかくなので、あそこでビールを飲もう」店長の提案でLIONへ。
この店も、場所がいい所にあるので、たいてい毎回ベトナムに来ると一度は来る店。
最初の頃は店内にハエがたかり、店内で醸造していたビールの味も決して美味い物ではなかったが、来るたびに味が美味しくなっている。
この日も、通常のものとダークタイプを頼んだ。
一口飲むと、十分日差しが強まってきた、HCMで汗だくになっている体を1時的に冷却するのに非常に役立ち、やはり美味しかった。
ちょうど市民劇場の横にだったので、店長は、ビール片手にそれをスケッチした。
名残惜しいものの、ついにタイムリミットが
迫ってきた。
歩いてホテルの近くにあるサークルKで水を購入。
このようなコンビニエンスストアーも前回までベトナムには無かったので、「変わったな」と思わずため息が出る。
ホテルの荷物をまとめ、チェックアウトを無事に済ませると、昨日のガイド、ハンさんが待っていた。
車に乗り込み、感想などを軽く話をしながら、空港に向かって車は走る。
タンソニャットの空港に到着。ハンさんとの記念撮影を終え、手続きを一通り済ませたので、待っている間に空港のカフェに入った。
空港だからやむをえないが、商品は米ドル表記で異常に高い。
それでも、他にいい場所も無いので、そこでタイガービールのドラフトを注文。
こっそり、先ほど買ってきた白とうもろこしのお菓子を食べると、急に食欲がわき、手が止まらないまま5分程度で空になってしまった。
そうこうしているうちに、搭乗時間となった。
HCMは、あくまでこのツアーのおまけであり、ここからが、いよいよメインの目的地であるタイ・バンコクであった。
最後にトイレに駆け込んだ時、間違った日本語表記を訂正している律儀な日本人がいたようだった。
「国民性だなあ」と感心し、そのまま機体の中に吸い込まれていく。
やがてベトナム航空の最新の機体は、自国でもある喧騒の”HCM”を何事も無いように後にし、アジアの大都会、“バンコク”を目指すのだった。