第13話 「暁の寺とチャイナタウンとピンクのシャツ その4」
2人は、今回もチャイナタウン「ヤワラート」へ。そこで十分堪能した後、最後に有名なカオマンガイのお店に、お腹は十分満足した状態で食べた味は・・・?
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タクシーで10分ほど走ると到着。メインの通りは一方通行なので、手前で降ろしてもらうと、いつもの喧騒が見えてきた。
”大金行 ”という、金融を取り扱う銀行よりさらに、上位の強力なインパクトのある看板が、ひしめき合い、車は慢性的な渋滞。
歩道上には、多くの中華系の屋台が立ち並び、おそらくバンコクの各地から遊びに来たと思われるタイ人達で、お祭りの縁日のような賑わいが続いていた。
歩いているだけで、心躍るような気持ちでいろいろな屋台を見渡す。
いろいろなおかずやドリンクの屋台が並ぶ中で、たくさんの席に多くの人がおいしそうに麺を食べて賑わっている屋台を発見。
ここでその麺を頼むことになった。
店長は、これはチャンスとばかりにスケッチを開始。
どうしてもバンコクのチャイナタウンは、好きでたまらない。
目の前には、メガネをかけた親父がプラスティックの容器を次々と洗っていた。
やがて、洗い物が一息ついたのか、休憩をしていたが、店長がスケッチしている絵が気になったのか覗きに来た。
ちょうど、象徴ともいえる”大金行”の看板を描き始めたところだったので、それを見せると「なんだあ」と言う表情で軽く笑っていた。
店長は、そのときの親父の顔が特徴的だと直感し、予定を変更し、その親父を急遽描き加えたかと思うと、その親父に見せてみた。
するとその親父は、恥ずかしそうな表情をしながらも、嬉しかったのか大笑いをしてくれるのだった。
今回のスケッチは、言葉がわからなくてもコミュニケーションとしては非常に強力なツールであることを改めて認識するのだった。
麺は、確かにおいしかった。食べ終わると、もうしばらく歩いたが、料理長が「もう疲れた。帰ろう」と言ったので、タクシーを拾おうと待ち構えたが、ちょうど他の人たちも帰る時間だったのだろうか?
空車のタクシーが次々と手前で取られていく。「そういえば、以前ここに来たときも同じような目に・・・・」
ふと、過去の出来事が頭によぎる店長。
このまま待っていても難しそうなので、タクシーが拾われるエリアに向かって歩き始める。
そのエリアに行く途中で、運良く1台のタクシーを拾うことができ、ホテルのあるプラトゥーナム市場までタクシーを飛ばした。
タクシーで20分ほどかけてホテルの近くまで到着。
このまま宿に戻ることも考えたが、料理長が事前に調べた情報で、「非常に無愛想で、注文をとるのが大変だがとても美味しいカオマンガイ(鶏肉のせごはん)屋さんがあるらしい」
という。
明日からの予定を考えると、そこに行く事ができるチャンスがある時に行っておこうということで、カオマンガイのお店を目指して運河の方向に歩いた。
この時間(午後10時ごろ)になっても、服を販売する業者が、歩道上で屋台群を形成していたので、賑やかであった。料理長もゆっくりの服を物色し、気になったものを数点購入。
アジアの中でも今まで最安値と思っていた、店の近所の船場エリアよりも安い服がそろっていたので、ついつい財布の紐が緩んでしまった。
「運河の近く」「ピンクのシャツの店員がいる」程度の大まかな情報しか得ていなかったので、場所がわからない。
料理長が思わず店の人などに聞いてみると、すぐに解ったらしく方向を指差してくれた。「奥まったところにある」と言う情報もあったので、運河の横の路地や運河を渡ったりしたものの、まだ解らない。
もう一度他の人に聞くと、この人もすぐに解って指を刺してくれた。
こんなに皆にすぐわかるというという店も過去に余り例が無く、よほど有名な人気店であるという期待に、2人は胸を膨らませるのだった。
もう一度運河を渡り、歩いていくとようやくピンクの服を着た集団がいる店を発見した。
”路地 ”という情報が間違っていたようで、
比較的わかりやすいところに位置し、先に注文。相手はすぐにわかったらしく、頷いてくれた。
カオマンガイは、専門店が店の近くに出来たり、簡単に出来あがるセットを食材屋さんが開発したり、密かに流行っている。
昨年、詳しく走らないが、これに似た料理である、シンガポールの海南チキンライスがマスコミによく掲載されたらしい。
反響が大きく、思わず当店もランチメニューに加えるほどだったので、その影響も大きいのかもしれない。
いや、それよりも、ショウガとにんにくが効いたごはんの上に鶏肉を載せた料理は、わかりやすく、食べやすく親しみがあるのかもしれない。
ただ、チキンライスとカオマンガイの両者は一見似ていてもごはんを炊くときに入れるものが若干異なるなど、細かいレベルでは違う事もあって、現在カオマンガイのほうは店の定番料理にはしていなかった。
しかし、たまに作ることもあるので気になり、確認がしたかったのであったが・・・。
注文後、比較的早く念願のカオマンガイが出された。
味は、すでにいろいろ食べておなかも十分落ち着いているのにも関わらず、箸が進む。
さすがに完食はできなかったが、非常に美味しく、また当店の味に非常に近かったので安心するのだった。
従業員も無愛想と言うより、タイのどこにでもいるような感じで全く心配は無かった。
それよりも、この短時間の間にも近所で働いている人たちなど、多くの人の出入りが激しく、本当に、「流行っているんだなあ」と実感するのだった。
完全に満腹になり、明日からの事を考慮し、この後は大人しく宿に戻るのだった。