STAGE11:途中経過Ⅴ
「死ねええええ!!」
「俺はコイツの相手をする。ゲオルグは計画をフェイズDへ移行しろ」
「わかった」
アガルタがそう言うと、エージもといゲオルグはプラズマ状の何かが収められた容器へと向かう。
「小僧・・・相手にしてやる」
「武器も持たずに丸裸か!!そんなんで勝てるほど戦場はあまくない!!」
「はっ!!」
「!!」
アスガがアガルタを斬りつける瞬間、目に止まらぬ速さで飛んでくる拳。
「ぐぅぅ!!」
間一髪。装備していた武器で防ぐが・・・
「嘘だろ・・・・?」
装備していた剣“バルムンク”はチリのように消え去った。
「この世界で誰にも俺には勝てない」
―――――――アガルタ軍第二防衛戦
幾重にも掘られた塹壕と積まれた土塁。そこに並ぶ兵士。
向かい側にはそれに対する連合軍が土塁を積んだり、塹壕を掘るなど、臨時の野戦築城を行っている。
「せ、戦況はどうなったのだ?」
「おいおい・・・・動いて大丈夫かよ」
「心配するな・・・貴様に心配されるほど、弱くはない」
「あっそ」
後方の病院に搬送されていたはずのサルデーニャの女狐ことシルヴィア・サルデーニャ。
体のあちこちに包帯が巻かれ、全回復が出来ていない状況だ。
「俺とお前の側近は?」
「未だ寝てる。私をかばったのだ。庇われた私でこれなのだ。そう簡単に動けるはずがあるまい」
「そりゃそうだ」
「さて、貴様はここでそうする?」
シルヴィアの問いかけ。攻勢に出たのはいいが、第二防衛戦で体制を立て直し、そこから再び膠着状態に陥っている。
「魔粒子砲をなんとかしたいが、どうしようもないんだな」
「こちらで鹵獲した魔粒子砲がある。それを使ってみるか?」
「それも手だな。騎士隊に臨時で魔粒子砲部隊を作るか」
「よし。なら私は前線へと復帰し」
「寝てろ」
メンティフィスは一言そう言うと立ち上がり、前線へと向かった。
前線とは言え、アガルタ管理局と連合軍の緩衝地帯はかなり空いている。前線といえど、警戒中他ならず、戦闘中とは言い難かった。
「鹵獲兵器部隊・・・ですか?」
騎士部隊の隊長に話しかけると驚いたような顔をしている。
「ああ。騎士部隊に魔粒子砲なんて取り付けたら、動いている標的狙うのは向こうにとって厳しいだろ?それに、騎馬の突進力は絶大だからな。急遽作って欲しいんだが・・・」
「どの職業にも魔粒子砲なんて装備ありませんからうまくいくかはわかりませんがやるだけやってみます」
「よろしく頼んだぜ。出撃するときは俺が最前線に立つから、呼んでくれ」
「了解しました」
「武器が消えただと・・・・」
「アガルタ管理局のトップは私だ。アガルタの管理人、支配者に位置する。ゲームバランスを崩壊させるようなことすらできるのだ」
「管理人だと・・・・?ふざけたこと抜かすな!!」
新たに装備を変え、突っ込んでいくアスガ。
「だから、私には勝てないと教えただろうが!!」
素手で剣をひと握り。
「な、なんて力だ」
剣を握られ、動かせないアスガ。
「吹っ飛べ」
「えっ?」
彼が一言いっただけだった。
「ガハッ!!」
アスガは今起こった状況に理解できず、ただ、重力に逆ら吹き飛ばされただけだった。
後ろの壁はボロボロに破壊され、天井からはさらにガレキが雨のように降り注ぐ。
「げ、ゲホゲホ・・・・な、何が・・・起こったんだ?」
口から飛び出した血液を吹くと、よろよろしながら立ち上がる。
「よく立ち上がったな。さすが、Lv.220代」
「こ、これが、管理者の力か?」
バタ
目眩に誘われ地面に倒れる。
「ああ。正確的にはMIAS、Manager In Auralisia Storyの頭文字をとってMIASだ。高須ホールディングスの社員で、A.S内で問題が起こった際の役員だった」
「その役員が、本社との連絡が取れなくなったから王様気取りか」
「お前は何もわかってない。まあ、一般人だから仕方がないか。ゲオルグ。旧知の仲だろ?教えてやれ」
「めんどくせえな。単刀直入に聞く。このA.Sは何で出来ている?」
「そ、それは・・・魔粒子だろ?」
空気中の魔粒子が地上や水上の物体として一時的に現れる具現化現象。大気MET現象の一種である。これをいかし、コンピューター上で入力された情報を元に待機中のMETに出力し、命令された通りに物体を作り出す。作り出された物体こそ、仮想世界A.Sである。
「だが、この出力された世界からMET供給が立たれたらどうなる?METによって保たれている世界。既に現実世界シャンバラとの通信・管理コンピューターが音信不通な今、METの現実世界からの供給は立たれているのだ」
「それって・・・・」
「お前の考えているとおりだ。アスガ。このシャンバラの残り寿命はあと数週間。備蓄METが切れかけている今、我々が生き残る術は唯一つ。現実世界シャンバラとこの世界を融合させる。だが、現実世界の人間はパニックに陥るだろう。突然現れた我々を、社会を乱した我々を快く受け入れるはずがない。ならば、することは一つ」
アスガはメンティフィスの言葉を思い出す。
「現実世界へと宣戦布告するのだ!!」