8話 天才ハッカー
【 ステータス
称号:【記憶喪失剣聖】
ジョブ:『剣聖見習い』
スキル:『×10のポイント増加』『白魔気』
体力:3000
武力:5532
防御力:2800
敏捷:6000
技術:999
運:5000
魔力:2339
『メモリーツリー:7%「567P」』】
「所持ポイントほとんど使って、上がったのはたったの2%か・・・・・どの『剣聖の記憶』もまだ開放できないし、どうしようかな」
メモリーツリー内に存在している球体の%表示と、メモリーツリー全体の進行度は、連動していないみたいだ。
球体に表示されている10〜100の数字は、やっぱり剣聖本来の力を分かりやすく10分割したもの。
0〜10と10〜20の差は、同様に10%だけど、後者の方が開放しなくちゃいけない球体が圧倒的に多い。つまり、その分ポイントが必要になってくるということ。
「確か、最初にポイントが与えられた時––––––––––––」
俺は、ステータス欄の『×10のポイント増加』スキルをタップする。
<『×10のポイント増加』・・・「剣聖の魂」との適合率によって得られる倍率が異なる(※最大×10)。>
「そうだった・・・・・」
初めてこのシステムを見た時は、一を失った絶望でまともな状態じゃなかった。
「俺が最初にポイントを得たのは、適合テストの時」
その結果、10000×10=100000Pが付与された。
適合率が、そのままテストの結果になったってことか・・・・・あるいは––––––––––––
最門さんたちには黙っていたけど、俺の中には、千葉の未登録ダンジョンに関して一つの仮説が出来上がっていた。
俺が剣聖の力に目覚めるきっかけとなった場所。
もしも俺の仮説が正しければ、ダンジョンモンスターを倒したのは俺ということになる。
意識を失いこの力を得た後、モンスターたちを一掃したということ。この力を実際に試してみて、ほぼ確信を持ってそう言える。
一度目の『剣聖の記憶』では無意識に扱えた『白魔気』が、あれ以降発動することすら出来なくなってしまった。それは、まだ魔力が足りていないからだと思う。つまり、未登録ダンジョンの時も、無意識に潜在能力を開放したと考えれば辻褄は合う。
そしてこのことから分かるのは、「モンスター」を倒せばポイントが得られるということ。
「まぁ、今の俺は実力はともかく、身分上はF級以下。ダンジョンに潜るために最適なのは・・・・・やっぱり荷物持ちか」
採掘班や建築班を選んだとしても、結局は大勢の目を盗まなくちゃならない。
それなら、比較的人数も少なくて隙をつきやすい荷物持ちがベスト。
やろうとしていることは犯罪だけど仕方ない。
そうしてネット上に掲載されているダンジョン一覧を見ていると、人目を惹く記事を発見する。
「なんだこれ・・・・・」
記事の写真には、夜空に浮かぶ俺の姿がデカデカと写されていた。
『なぁこれ、八尺 流星じゃね?』
『あー、不良品って呼ばれてる?』
『てかお前ら、このコメント本人見てる可能性あるんだぞ笑』
『いやまぁ、ほんとのことなんだし、別に良くね笑』
『だな笑笑』
相変わらずひどい言われようだな。
だけど、数日前までの俺とは何もかもが違うんだ。
近い将来、必ずお前たちを見返してやるからな。
『てかそんなことよりさ、こいつ何で空飛んでんの?』
『確かに。ジョブもないのにどうやってんだ?』
『コラ?』
『いーや、そうは見えないけどなぁ』
『あっ、もしかしてあいつの仕業じゃね? ほら、天才ハッカーの!』
『ああー、他人の外見を変えられるっていう?』
『もう外見なんてレベルじゃないんだって! ネットの情報や身分証まで何もかも別人にできるらしい。実際俺の友達にもそいつのおかげで犯罪犯した奴が何人もいてさ。すごいのが、誰も捕まったことがないってこと』
コメントを気まぐれで見ていた俺の鼓動が「トクンッ」と脈打ち、とある思考が頭を過ぎる。
『本当ですか?』
気が付くと、俺の指は無意識に文字を打っていた。
『まじまじ。何? 興味あるの?』
『少し』
『けど、もうそいつってネット界隈から消失したんじゃなかったっけ?』
『あっ、マジ?』
『一時期結構有名になってたけどな』
『うわっ、なんか思い出してきたわー』
『確か最後に見たのが1年前だっけか?』
『誰が依頼を受けてたとか分ります?』
せめて少しだけでも居場所の手がかりが掴めれば・・・・・
『いや、流石にそこまでは––––––––––––』
突然サーバーがダウンし、いきなりパソコンの電源が落ちた。かと思いきや、瞬時に電源が入れられる。
「何? どういうこと・・・・・」
『Are you my enemy?』
起動したかと思うと、飛んだのは、見たこともないサイトのチャット欄だった。
黒い画面に、ただただ白い文字のみが打ち込まれていく。
『Why are you looking for me?』
『英語じゃ分かんない? どうして私を探すの?』
まるで、さっきの俺の発言を見ていたかのようなセリフ。
もしかして・・・・・天才ハッカー本人?
『あなたに、お願いしたいことがあります』
『へぇ〜、つまり依頼がしたいってこと。ほんと、ハンターって連中はお金のことしか頭にないんだね』
発言の仕方からして、あまり乗り気ではなさそうだな。
『俺はハンターじゃないよ。そうなりたいとは思ってるけど』
『似たようなことはやってるじゃん』
含みを持たせた言い方に、多少の違和感を覚える。
似たようなこと・・・・・荷物持ちのことを言っているのか?
顔も知らない、会ったこともない相手のはずなのに、どうしてか見透かされている気分に陥る。
『もしかして、俺のことを知ってるの?』
『あの写真を投稿したのは、私だからね』
間髪入れずにメッセージが送信される
『どういうこと?』
『千葉の未登録ダンジョンの事件。その唯一の生存者––––––––––––八尺 流星。あんたでしょ』
確かニュースでは、俺の名前は伏せられた状態で報道されていたはず。
『どうして』
『いいよ』
会話が噛み合っていないのか、意味の分からない謎の了承。
『もう依頼は受けないつもりだったけど、あんたのなら受けてあげてもいいよ』
未登録ダンジョンの生存者が俺であること。俺の写真を意図的にアップしたことから、写真を撮られたのも偶然じゃなく、計画的なものだと考えることができる。
てことは、今この状況も見られている可能性すらあるのか・・・・・・。
俺は、静けさを纏う部屋を360°見渡す。
当然何もあるはずはないけど、この静けさが妙な恐怖感を醸し出している。
そして、あるはずもない視線が寒気を纏わせる。
『明日 13時––––––––––––』
送られてきたのは、東京の渋谷区にある『DARAS』というカフェの住所。
その後、一方的にチャットは閉じられ、先ほどのネット記事のサイトもシャットアウトされていた。
「ここからだと、だいたい3時間くらいか」




