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記憶喪失剣聖  作者: 融合


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63/107

62話 厄災の足音

「そうか・・・・・分かった。一先ずお前はバクラのグループと合流してくれ」

『ああ––––––––––––』

 通話先から聞こえるらしくなく元気のない返事。

 丈一郎は通話を切ると、一人険悪な表情を浮かべる。

「––––––––––––何を浮かない顔をしておる!」

 丈一郎の視界の数十メートル先、大勢のハンターたちを引き連れた大男の姿が見える。

 服の上からでもはっきりと分かる隆起した全身の筋肉。それでいて身長が2メートルを超えているため、歳に見合わない威圧感を漂わせている。

 彼の名前は「羅針剛(らしんごう)」。

 中国生まれ日本育ちの日本人ハンターである。

 そして、ジョブは1つでありながら日本のS級ハンターの中でも『神託者』に劣らない実力を有している人物。

「お久しぶりですね、師匠」

「その呼び方はよせ。今はお前の方がワシよりも強いんだからな」

「そうはいかねぇよ。まぁ、師匠の言う通りだけど、鍛えてもらった過去は消えないからな」

「ハッ、可愛げのある奴め」

 眉間に皺を寄せつつも、嬉しそうに口元へと笑みを浮かべる羅針剛。

「で、一体何があったか説明してみろ」

 羅針剛と軽い挨拶を交わしている間も、丈一郎の表情には険しさが宿っている。

 弟子の実力と性格をよく知っているからこそ、これが深刻な事態を表していることを感じ取る。

「––––––––––––沖縄にいるレオナのグループの約半数がダンジョンで命を落としたらしい」

 こんな結果を誰が予想できただろうか。

 丈一郎もレオナの実力をしっかりと認めているからこそ、迷いなく『青の洞窟ダンジョン』を任せることができた。

 一方の羅針剛も、レオナの実力をよく知る者の1人として、驚愕に震えていた。

「それはつまらない冗談か?」

 流れるのは「沈黙」。

「俄には信じられん話だが、お前が嘘をつく理由もない」

「あぁ。俺だって信じられねぇさ。あいつは『特魔級ダンジョン』を終始笑顔で単独攻略できるような奴だからな」

 そう言いながら丈一郎は手に持つ携帯へと視線を落とす。

「あいつが言うには、ダンジョンから現れた人型のモンスターが関係してるらしくてな。人の言葉を話し、俺たち人間に何か恨みのようなものを抱いてたんだと」

 羅針剛は興味深そうに下顎の髭を撫でる。

「ほぉ、意思疎通のできるモンスターか。つまりそいつは、あのレオナを足止めできるほどの強者ということか」

「フッ、笑っちまうけど、足止めなんてレベルじゃねぇ・・・・・むしろレオナの方が押されたらしいぜ」

「それはまた・・・・・」

 再び驚愕させられた羅針剛は、胸の内に芽生えた恐怖を押し殺すため、威嚇の表情を何もない空間へと向ける。

「血が沸るわい!」

「熱くなってるとこ申し訳ねぇが、レイド祭は一時中断させる。ダンジョンの異常発生とその人型モンスターは何かしら関係があるかも知れないが、今の状態での深入りはあまりにもリスクが大きいからな」

「そういうことなら仕方ないじゃろ。急ぎ魔塔連に知らせ––––––––––––」

 羅針剛の言葉を遮って大音量のアラートが丈一郎の手に持つ携帯から鳴り響く。

 周囲にいるハンターたちは驚いた様子で丈一郎たちへと視線を向ける。

「おい、マジかよ・・・・・」

 丈一郎の表情は一層険しくなる。

 それは羅針剛とて同様。

 周囲のアラートの意味を理解していないハンター数千人はただただ困惑しいく。

 

 『神託者』の携帯電話からアラートが発せられた時、それは、国内に『特魔級ダンジョン』が出現したことを意味する。

 

「師匠、ここは任せる!」

「安心して行ってこい!」

 こうして北海道に滞在しているハンターの指揮は羅針剛に任せ、丈一郎は1人『特魔級ダンジョン』の発生源と見られる「長野県の諏訪湖」へと向かうのだった。


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