第52話:【52日目】魔導フィットネスと、健康経営の推進
村の生活が豊かになり、インフラが整うことは素晴らしい。しかし、セシルの作る美味しいまかないが充実しすぎた結果、獣人や元傭兵たちの中に若干「運動不足(カロリー過多)」の影が見え隠れし始めた。
元々過酷な肉体労働を強いられていた彼らだが、トラクターや魔導建機による業務の自動化が極限まで進んだことで、純粋に体を動かす時間が激減しているのだ。最近では、鎧のベルトが少しキツくなったとこぼす魔族の姿まで目撃されている。
「今日のドロップは、健康維持のための設備が欲しいな。予防医療こそ最大のコスト削減だ」
俺は52日目の朝、「残り314日」の紙をめくった。
現れたのは、鏡張りの壁材と、最新鋭のマシンがずらりと並ぶ、おしゃれなフィットネスジムのセットだった。
『SSRアイテム【全自動・魔導フィットネスジム一式】を獲得しました』
『※個々の体力や心拍数に合わせて負荷を自動調整する魔法のトレーニング機器。どんなにハードな運動も、終了後に筋繊維の損傷を即座に癒やすケア機能付きです』
「よし! これぞ現代企業の福利厚生の頂点、ジムエリアの開設だ!」
ガルドは即座に広場の隣にジムの建屋を建設。
さっそく、ザンギュラ率いる防衛部隊の魔族たちや獣人たちが、興味津々でランニングマシンやウェイトマシンに乗り込んだ。
「おおおっ! この走る板、俺様の足の速さや息の上がり具合に合わせて、無限に速度と傾斜が変わりやがる! 怪我の心配なく限界まで追い込めるぜ!」
「村長ーっ! この重り(ウェイト)、持ち上げると関節には負担がかからないのに、すごく筋肉だけが喜んでる感じがします! 終わった後のマッサージ機能も最高ですぅ!」
ルナが尻尾を振りながら、自分の限界に合わせたバーベルで軽快にスクワットをこなしている。
さらに、ジムでしっかり汗を流した後は、すぐ隣の大浴場(温泉)で汚れを落とし、サウナと水風呂で自律神経を整えるという「黄金のルーティン」が完成した。
運動、栄養、休息。これらが完璧なサイクルで回るため、村人たちの健康状態は常に最高値を維持することになり、病気や生活習慣病、労災のリスクは極限までゼロに近づいた。
「健康的すぎて、もう過労死する隙間がどこにもないな。むしろ全員の寿命が延びてるんじゃないか?」
俺はプロテイン代わりに栄養素が最適化された特製ミルクを飲みながら、汗を流す社員たちを見て満足げに頷いた。
(残り313日。明日は何が出る?)




