表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミネルヴァの雄~冒険者を辞めた俺は何をするべきだろうか?~  作者: ごこち 一
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/1014

44.テーベ平原の戦い~一閃~

誤字修正 読みやすいように全体修正 内容変更なし

「アム。お前が何故(なぜ)ここにいるんだ」

「オルケインさん、御無事でなによりです。それと、僕がここにいるのは、ミネルヴァ様に連れてこられたからですよ。マルクのついでに」


 アムの言葉に、オルケインの顔が歪む。


「ミネルヴァ様が直々にお見えになって……」

「マルクしか目に入っていないと思いますが。お気をつけください」

「わ、わ、わ、分かった」


 そしてオルケインは、ぎこちない動きで他の学派員の元へと向かっていった。


「よう坊主。さっきは、手間省いてくれて助かったぜ」

「いいえ、マルクの頼みですので。初めましてバルザックさん。僕の名は、アムと申します」

「ハハッ。戦場で自己紹介はいらねぇよ」

「私、サラスっていうの。宜しくアム君」

「おいおい」


 呆れるバルザックを無視し、サラスはアムにしな垂れ掛りながら言葉を続けた。


「ねぇアム君。ちょっとお姉さんに、さっきの魔法の事、教えてくれなぁい?」


 アムは表情一つ変えず、端正な顔を保っている。


「魔法は各々が秘匿(ひとく)すべき……と言いたい所ですが、別に構いませよ」

「あら、話の分かる子ね。私そういう男の子好きよ」

「初歩魔法の応用です。魔力を増した竜巻の中で、複数の風の刃を制御しているだけの単純な魔法です」

「そんなの制御出来る訳ないじゃない。インチキ」


 損した! と言わんばかりにサラスは、アムから体を離す。

 それをアムは鼻で笑った。


「すまねぇな坊主。こいついつもなんだ。許してくれ」

「お構いなく。して、冒険者の皆様は、これからどうするおつもりですか?」

「ああ、マルクの助け――いや、違うな。一緒に暴れてくるぜ。坊主も来るか?」

「いえ。マルクにここを頼まれていますので」

「そうか。じゃあ後ろを頼んだぜ坊主。よし、お前ら行くぞ」

「「「おう」」」「はーい」


 言うや否や、バルザックパーティー五人は、砦から駆け出して行った。

 その後姿を、アムは見送る。


「援軍は送ったよマルク。君には必要ないかもしれないけどね」


 そしてアムも砦を出る。倒し損ねたホークマンが居ないかの確認に。




 かなりの数のオーガを倒せただろうか。

 振り返り――「≪火精霊(ひせいれい)球撃(きゅうげき)≫」――魔法を放つたびにオーガとオークの比率が変わり、オークが多くなっていく。

 そしてまた、砦へ向け駆ける。

 しばらく距離を稼ぎ、もう一度、振り返り、呪文を唱える。


「≪火精霊(ひせいれい)球撃(きゅうげき)≫」


 生み出した十の炎の球に、魔力を無理やりに込め、オーガへの致命打となるように放つ。ばら撒くように、適当に。

 命中の確認はしない。

 また砦へ全力で走る。爆発音だけが、背から響く。

 何度も繰り返す。

 いつだって、何をするにも地道に。

 するのは、面倒くさいんだよなぁ……。

 ドカンと吹き飛ばしたくもなるが、ジャイアントに魔力を残しておきたい。

 結構、走った気がするが、砦まではまだ距離がある。

 距離もまた、ジャイアントが暴れた時の安全圏を確保しておきたい、

 もう砦には、ホークマンの姿は見えない。

 戻れば、援護が受けられるだろう。

 だが、それは一歩間違えれば、避難した村人を巻き込みかねない事だ。

 砦から誰かがこちらに来ているのが見えたし、そろそろ――


「ここらで足止めとするか、≪火精霊(ひせいれい)球撃(きゅうげき)≫」


 振り返り、今度はオーガを狙って、放つ。

 オーガとオークでは、オーガの方が攻撃性が高く、近寄られると厄介だ。

 オーガの数を優先して減らす。

 魔法の直撃と共に、爆発が広がる。

 黒い影のようなオーガ達が、上半身を吹き飛ばされ、その存在が掻き消えていく。が、代わりにオークが最前列に出てくる。

 肉厚な黒い壁は、まだまだ開きそうにない。

 いつも見ているピンク肌のオークよりも、黒で覆われたオークは、端正で強靭に見える。見えるだけだろうから、戦う分には問題ないが。

 大群が揺らす地面の感覚が伝わるほどに、オーガとオークの作る黒い壁は近付いてきている。

 まずは、正面に穴を空ける。

 両翼のモンスターが砦へ抜けても、彼らが処理してくれるだろう。

 火精霊の球撃は、使いやすくて良い。

 イメージも簡単で、魔力の調整も容易い。が、別の魔法が使いたくなる。

 火精霊の球撃で一体一体倒した方が、魔力は節約できるのだが……。

 横に一列、吹き飛ばすには良い魔法が一つある。

 炎の力をただ、ただ高める。

 ただ真一文字に薙ぎ払う。払うのは敵ではない。

 己の中で溢れ出る炎を、魔法に転化する。それは炎竜の放つ一撃。

 右手を空に掲げ、呪文を唱える。


「≪炎竜(えんりゅう)一閃(いっせん)≫」


 右手から青い空に向かって、赤く、視認できる魔力の塊が飛んでいく。

 魔力の塊が、空中で停止すると同時に、俺は右手を振り下ろし――


「薙ぎ払え」


 魔力の塊から、一筋の赤い光が放たれた。

 それはモンスター達の下、その地面に突き刺さり、赤い光が、左から右へと地を撫でていく。

 瞬間、地面から、炎の柱が立ち昇った。光の描いた線の導きに沿って。

 黒い影が炎の柱に焼かれる。オーガもオークも関係なしに。

 咆哮が聞こえる。それは断末魔だろうか。

 炎の柱はあっという間に消えていった。炎に巻かれた者達を共に連れて。

 騒がしい戦場に、拍手の音が聞こえる。

 ミュール様だ。彼女は、今も優雅に砦側上空で浮かんでいる。

 俺を観察できる位置で、俺を演者とした劇でも見ているかのように。


「おう、派手にぶっとばしたじゃねぇか、マルクよぉ」


 到着が思ったより早かった。この渋い声には聞き覚えがある。

 俺は振り返らずに、彼に話しかけた。


「お久しぶりです、バルザックさん」

「ドム達も来てるぜ」

「はい。ミュール様に聞きました」

「ハハハ、で? どうする? もう近くまで来てっが?」

「あー、すみません、オークをお願いしていいですか」


 横を向き、バルザックさんを見ながら頼むことにした。

 二十台後半だっただろうか?

 彫りの深い顔には、若さが溢れていた。

 彼の、獲物を狙う鋭い目は、冒険者達をも震え上がらせることで有名だ。

 筋骨隆々な体付きと、鋼よりも堅そうに絞られた腕によって振るわれるべき大剣は、今、現在も、彼の大きな背に担がれている。

 バルザックさんは、鋭い目で俺をひと睨みし、笑い出した。


「お前もジャイアント狙いか。まぁいいぜぇ。俺達も、黒豚ぶっ潰したらすぐ行くからな。俺の分も取っとけよ」


 そして、バルザックさんは、オーガとオークの群れに飛び込んでいく。

 その後ろから、胸部甲冑を着こんだ戦士然とした二人が続く。

 ドムさんとテガーさんだ。

 他の二人は距離を取っているのだろう。魔術師だし。

 さてと、彼らが来てくれたなら、もう温存は必要ない。

 俺が狙うのは、奥に見えるジャイアントだ。

 たしか数は、十体だったか。

 遠距離から狙っても、効果は薄い。接近して、切り伏せるのみだ。

 でも、まずは。


「≪火精霊(ひせいれい)加護(かご)≫。そして――」


 自身を守る魔力の塊を。

 (まと)う炎。指先で炎が揺れる。

 想像の中で一つの形になり、その存在の名を呼ぶ。


「≪炎獄王(えんごくおう)(よろい)≫」


 全身から炎が溢れ出る。炎は一つだ。自身が炎の様だ。

 触れる地も燃える。

 変わらず視界が悪いが、ジャイアントを倒すまでは我慢だ。

 しかし、これは守りでしかない。

 あとは、ジャイアントに近付きながらで。

 足が前に進む。蹴った地が燃え上がる。

 炎竜の一閃で開いた道も、左右のオークらが押し寄せてきていた。

 振るわれる棍棒も、掴みかかろうとする手も無視して突き進む。

 棍棒は空を切り、オークの手が燃え、焼き切れた。

 もう、オークはどうでもいい。バルザックさん達が全て平らげてしまうだろう。

 俺が考えるのは、一本の剣。

 自身の持つ魔法の中でも、強力な一つ。森で、奴を斬り過ぎてしまった魔法。

 何度も練習した。繰り返し、繰り返し。

 イメージをより強固にするために、大きすぎる力を制御するために言葉を使う。


()原初(げんしょ)(ひかり)(たけ)(なんじ)()れるは(だれ)ぞ。(いま)ここに(ちり)()(もの)()を――」


 もうすぐ、ジャイアントの振るう大棍棒の届く範囲に入る。

 燃える炎を、全てを焼き切る力を。脅威を塵と化すただ一つの剣を。

 この手に。


「――(われ)に、(しめ)せ。≪炎帝竜(えんていりゅう)大剣(たいけん)≫」 


 振るわれた大棍棒の内側に潜り込み、回避する。

 巨大ゆえに、空く隙がある。

 燃える俺の両手には、さらに熱い、持つ手を溶かすような赤い炎の大剣が握られている。

 俺は大剣を振るい、目の前の黒いジャイアントの両足を、焼き切った。

 切断面から下の足は焼き消えていく。

 が、上は炎がくすぶり続けるだけで、ジャイアントが燃えることはなかった。

 回復力ゆえだろう。

 しかし、足を失ったジャイアントは、上体を倒しながら落下していた。

 届くなら、斬れる。

 落下するジャイアントの股から首の下までを、その場で斬り上げる。

 切り裂かれたジャイアントは、炎に浸食されるように、燃え、消えていった。


「まずは一体」


 これは、先が長そうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ